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脚本 少女たち  作者: 日尾昌之
3/18

昭和21年12月 京都先斗町

映画またはドラマの脚本です。


ここでの登場人物


岡田鶴子(小鶴) 京都先斗町の芸妓 幸子の母親  18歳

もみ春      京都先斗町の芸妓        21歳

松本好江     京都先斗町 置屋「松本」の女将 55歳




19木屋町通り(昭和21年 12月 朝)

   町家が並び昭和の風景で人気が無くひっそりと

   している

   空からは粉雪が降っている

   と 小さく鶴子の歌声が聞こえて来る

   高瀬川沿い路上では数羽の雀が おからを 

   ついばんでいる

   小鶴(岡田鶴子)寒そうにしゃがみ込ん

   で 雀達を見ながら細い小さな声で「ダンチョ

   ネ節」を唄っている 

   テロップ 昭和21年 師走

  小鶴 「沖のカモメと 飛行機乗りはよ どこで

      散るやらね 果てるやら ダンチョ

      ネ・・・」 

   小鶴 唄いながら裾からタバコの箱を取り出し

      タバコを一本出し口に咥えてマッチをす

      りタバコに火をつけて溜息を付くかの様

      に煙を吐いて激しく咳をする

   もみ春 路地から顔を出して叫ぶ 

  もみ春「小鶴はーん! お母さん 呼んだはるえ

      ー」

  小鶴 「(溜息をついて呟く様に)もぉー 今 

      火ーつけたとこやし!(と タバコを吹

      かして咳をする)」 

  もみ春「今度は 何しはったん? また喧嘩どっ

      かー?」

  小鶴 「(咳をしながら)いややわぁー そんな

      大きい声で言わんでも・・・(振り返っ

      て大きな声で)今 すぐ行きますぅー

     (と 咳をする)」 

   小鶴 手に持っていたタバコを河原の石で揉み

      消して

  小鶴 「あー もったいなぁー」

   小鶴 吸殻を袖に入れて立ち上がり ふてくさ

      れて小さな声でダンチョネ節を唄って歩

      き出すと雀が一斉に飛び立つ  

  小鶴 「俺が 死んだら三途の川で鬼を集めてね

      相撲をとるダンチョネ・・・」

   小鶴 ふらふらとした足取りで路地に入って行

      く


20先斗町通り

    歩く小鶴の後姿

    小鶴 置屋 松本へと入る

         

21置屋 松本の好江の部屋の前の廊下

   部屋の中から 小鶴の大きな声がする

  小鶴(声)「いやや! 絶対に いやです!」


22好江の部屋の中 

   好江 小鶴 火鉢を挟んで座っている

  好江 「そないゆても あんた これからどない

      するつもろやの? このまま ここにい

      るんやったら その方がええと思うんや

      先方さんは 何処の何方かは あんたに

      は ゆえへんけど 手びろーお商売やっ

      たはるようやし ポンチャンの幸せ思う

      んやったらその方がええんとちゃいます

      か」

  小鶴 「う うち どんな事をしても あの子を

      一人で育てます(と 立って咳をる)」

  好江 「それは あんたの気持ちは よーわかる

      けど このご時世 芸妓しながら子供 

      育えられると思てんのんか? 先方さん

      も子供が出来ひんし困ったるんや おな

      ごでもええって ゆうてくれはってんに

      ゃから こんなええ お話ないやないか

      ポンチャンも もう一つや 物心つかん

      うちにした方がええんとちゃいまっか!」

   小鶴 無言で襖を開けて 激しく咳をする

  好江 「大丈夫? あんた 一回 お医者さんに

      見てもろたら どないえ?」

   小鶴 無言のまま出て行く

  好江 「これ 小鶴!」


23二階の座敷

   襖が開いて小鶴が入って来る

   赤ん坊(幸子)が布団に寝ている

   小鶴 その横に座って赤ん坊の顔を覗き込む

   赤ん坊の顔に小鶴の涙が落ちる



   つづく







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