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脚本 少女たち  作者: 日尾昌之
11/18

昭和20年8月15日 終戦

映画またはドラマの脚本です。

47陸軍飛行場の柵の外(昭和20年8月15日 早朝)

   朝焼け空

   鶴子 心配そうに立っている

   テロップ 昭和20年 終戦の日


48陸軍飛行場の営門

   トキ ヒサエ ヨシコ 鶴子 一列に並んで入って来る

   飛行場内 ざわついている

   鶴子 歩哨に

  鶴子 「何んか あったんですか?」

  歩哨 「突然 今日の出撃が中止になったんや・・・」

  鶴子 「・・・・」

   幸夫 隊舎から出て来る

   鶴子 それを見る


〇(追加)陸軍飛行場の土手

   幸夫 空を見上げている

   鶴子 歩いて来る

   幸夫 鶴子を見る

   鶴子 うつむく

  幸夫 「ごめんなさい・・・」

  鶴子 「(背を向けて)謝らんといて下さい・・・」

  幸夫 「でも・・・」

   鶴子 黙っている

  幸夫 「今日 お兄様の後を追う事が出来なかっ

      た・・・ 次は 必ず・・・」

   鶴子 振り返る(目に涙を溜めている)

   幸夫 鶴子に首に付けていたお守りを差し出して

  幸夫 「これ・・・ これ神宮での学徒出陣の日 

      母がくれたんだ これ 持ってて」

  鶴子 「でも・・・」

  幸夫 「いいんだ もう僕には必要ない・・・

(お守りを鶴子の掌に乗せて)鶴子ちゃん

      どんな事があっても生きて行くんだよ!」

   鶴子 うなずく

  幸夫 「(気を付けして)岡田大尉殿の妹さんと結婚

      が出来て光栄です!(と 敬礼をする)」

   鶴子 微笑む

   自転車に乗って山田がやって来て

  山田 「従軍記者です! こんな ほのぼのとした写

     真が欲しかったんだなぁー 一枚撮っていいで

     すか?」

   幸夫 鶴子を見る

   鶴子 首を横に振る

  幸夫 「(鶴子に)撮ってもらおうよ 生きていた

      証に 結婚写真 撮っておきたいんだ」

   鶴子 少し考えてうなずく

   ×   ×

   鶴子と幸夫 草むらで並んで立っている

山田 二人の前でカメラを構えて立っている

  山田 「ちょっと離れ過ぎです もう 少し ひっつ

     いて もらえませんかなぁー(と 鶴子と幸

     夫 近寄る)もう ちょっと」

   鶴子 幸夫 恥ずかしそうに身を寄せる

  山田 「そうそう いい感じです(と カメラを構え

     る)」

  山田 「あー 顔が引きつってます 笑顔 笑顔 

     笑って 笑って!」

   鶴子 幸夫 作り笑いを浮かべる

  山田 「あー もう少し自然に笑ってもらえませんか

     なぁー!」

   と 強い風が吹き 山田の帽子が飛ぶ 

     ハゲている

   鶴子 幸夫 思わず 笑う

山田 「その笑顔!(と シャッターを押す)いい写

      真が撮れました ありがとうございます!

(笑顔で会釈する)」

  幸夫 「帽子 取って来ます!」

   幸夫 走って山田の帽子を取りに行く

  山田 「(帽子を取りに行く幸夫を見て鶴子に)

      あの人 ここの所属じゃないよね」

  鶴子 「はい この前 飛行機が故障して 降りて

     来はったんです」

  山田 「そう・・・(腕時計を見て)あっ! もう 

     こんな時間か ラジオ聴きに行かないと」

  鶴子 「ラジオ?」

  山田 「そう 昨日の大本営発表で 今日 大事な

      放送があるって言ってたけど 知らなかっ

      た?」

  鶴子 「(うなづいて)私達が住んでる部屋に ラジオ

      無いんです」

  山田 「君達 一緒に暮らしてるんだ」

  鶴子 「はい みんな 空襲で親兄弟 亡くして焼け

     出された子なんです」

  山田 「そうなんだ・・・」

   幸夫 山田の帽子を持って走って来て

  幸夫 「だいぶんと向こうの方まで飛ばされていまし

      た(と 山田に帽子を渡す)」

  山田 「これはこれは 御親切に ありがとうござい

     ます! でも少尉 もう ラジオ聴きに行か

     ないと!」

  幸夫 「(腕時計を見て)そうでしたね!」

  山田 「私 取材があるんで先に行ってますね!

     (と 自転車にまたがって走って行く)」

   幸夫 「(自転車にまたがって 鶴子に)僕たちも

       行こう?」

   鶴子 不思議そうな顔をする

  幸夫 「後ろに乗って!」

  鶴子 「えっ?」

  幸夫 「早く!」

   鶴子 うなづいて自転車の後ろにまたがる

  幸夫 「僕の背中にしっかり掴まって!」

   鶴子 幸夫の腰に両手を回す

   ×   ×

   二人乗りをした鶴子と幸夫 滑走路を風を受けて

   走って 突然 自転車がパンクする

  幸夫 「こんな時にかぎって!」

   二人 降りる

  幸夫 「(タイヤを見て)ペチャンコ・・・仕方がな

      い 走ろう!」

  幸子 「(微笑んで)はい!」

   二人 滑走路を走る


49隊舎の食堂

   数人の特攻隊員と少女達 立ってシクシクと泣いて

   いる

   扉が開いて 慌てて鶴子と幸夫が入って来る

  軍人達口々に「ちくしょう! ちくしょう!」と悔

  しがっている

   鶴子と幸夫 その光景を見て啞然とする

   鶴子 泣いているトキに

  鶴子 「(トキに小声で)どないしたん? 何があっ

      たん?」

  トキ 「天皇陛下の声 初めて聴いた・・・」

  ヨシコ「負けた・・・」

  鶴子 「えっ?」

  ヒサエ「日本・・・ 戦争に・・・ 

      負けたん・・・」

   鶴子 室内を見渡すと数名の特攻隊員達が悔しが

      っている

   山田 後ろでメモを取っている

  幸夫 「負けた?」

  幸夫 「(隣の特攻隊員Aに)日本が負けたって 

      本当ですか!?」

  特攻隊員A「そうだ 今 天皇陛下 御自ら ラジ

        オを通して仰った」

  幸夫 「そ そんな・・・」

   幸夫 茫然と ひざまずく

  特攻隊員B「(気が狂った様に)そんな馬鹿な事が

        あって いいのか! 日本は神国だ

        ぞ! 神の国が負けるはずはない!」

  特攻隊員達が口々に「そうだ! そうだ! 徹底抗

            戦あるのみだ! 本土決戦

            だ!」

   と 後ろにいた隊長が

  隊長 「貴様ら! 天皇陛下の大御心に背くつもり

     か! 逆賊になるぞ!」

  特攻隊員A「でも 隊長! これまで 私達は 天

        皇陛下の為に敵と戦って死ぬ事だけを

        叩き込まれで来ました 今更 それ

        を・・・ それを・・・」

  特攻隊員B「これでは 死んで行った連中に申し訳が

        立たんのです!」

  隊長 「しかし・・・ もう 貴様らに 出撃命令を

     出す訳ににはいかんのだ・・・こらえてく

     れ!」

  特攻隊員A「隊長! どんな思いで 私達が死ぬ覚

        悟をしたと思われるんですか!帝国軍人

        として 今更 それを変える訳にはい

        けません!」

  特攻隊員B「(こらえきれずに気が狂った様に)

        回せー! 回せー!(と 飛び出す)」

   それに続いて数人の軍人が後に続く

  特攻隊員A「(幸夫に)行くぞ!」

  幸夫 「(立ち上がって)俺は行けない・・・」

   隣に立っていた 鶴子が幸夫を見る

  特攻隊員A「何だと 貴様!」

  幸夫 「私は 行く訳ににはいきません・・・」

  特攻隊員A「貴様! 死ぬのが怖くなったのか!」

  幸夫 「いいえ」

  特攻隊員A「では なぜだ!?」

  幸夫 「私には・・・ 私には! 命を賭けて守るも

     のがあるからです!」

   鶴子 幸夫を見つめている

  幸夫 「もう戦争は終わったんです・・・ 今は 残

     された日本人を守るべきです!」

  特攻隊員A「貴様らの様な甘ちょろいボンボンの学

        徒がいるから 日本が負けたんだ! 

        勝手にしろ!(と 飛び出して行く)」

  隊長 「(少女達に)ちょっと お前達 隊長室へ 

      来なさい(と 出て行く)」

   少女達 顔を見合わせて恐る恐る出ようと

      て 鶴子 ドアの前で振り返って幸夫を

      見る

   幸夫 うつむいて泣いている


   つづく


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