表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この度、獣人世界に転移した普通の人間である私が、幻獣人を束ねる「鍵の聖女」に任命されました。  作者: 阿井りいあ
聖女(仮)として出来ることをやってみます!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/130

なんだか過激な言葉を聞いた気がします


 ジュニアスが私を抱えたまま音もなく前へと進んでいく。私の目には見えないけれど、きっと周囲にはうじゃうじゃとコウモリの禍獣が……あ、ダメダメ。想像もしないようにしよ。


 それから数十秒後、ピタリと立ち止まる。もしかして石碑の前に辿り着いたのかな? それすらもわからない私は困惑気味に着きましたか? と小声で訊ねた。頷いた気配がした、かもしれない。


 縦抱きにされているから顔が近いんだよね。とても綺麗な顔立ちが目の前にあると思うとすごく恥ずかしいけれど、暗闇で見えないから問題ありません!

 大きな音も立てられないし、ちょうど良かった。真っ暗で困るかと思ったけど、意外と助かっているなぁ。


「で、では、ジュニアス。お願いします。手は石碑にくっついたまま身体が吹き飛んでしまうので……押さえていてもらえると助かります」

「……承知」

「あと、私にはどこに石碑があるのかわからないので……私の手を掴んで石碑に触れさせてもらえます?」

「……」


 小さくため息を吐かれた。そういうのも、距離が近いからこそ気付いてしまう。ごめんなさい、手のかかる大人で。


 それにしても、見えない物に触れるなんてすごく怖い。箱の中に手を突っ込んで何が入っているか当てるゲームに似ているかも。

 あれ、私は絶対に出来ないって思っていたけどまさかこんなところで疑似体験するとは。


 スッと右手首が取られる。ジュニアスがきっと石碑に触れさせようとしてくれているんだ。

 ひぃ、ちょっと怖い。けど、私一人だったら永遠に触れられなかっただろう。つくづくジュニアスがいてよかった!


 そして指先がひんやりとした石碑に触れたのを感じた次の瞬間、ブワッと風が巻き起こる。そのあまりの勢いにジュニアスも飛ばされてしまったのか、抱っこされていた腕が一瞬で私の身体から離れた。

 そう、おかげでこいのぼりである。あああああっ! せっかく事前に伝えられたのにっ!


 でも、正直無理もないかも。だって、これまでよりもずっと風の勢いが強いから。な、なんで? と疑問に思っている場合じゃない! 腕! もげるっ!


「っ!」

「!」


 苦痛に目をギュッと閉じていたら、ガシッと身体を抱き締められるのを感じた。

 たぶんだけど、ジュニアスがすぐに支えてくれたんだと思う。ありがとう! 助かるよ! 本当にありがとう! でもこの風の勢いに負けず立っていられるなんてすごい。てっきり、飛ばされちゃったのかと思ったから。


 きっと、ここが洞窟内だからだ。狭い空間であの突風。勢いが強くなったのはそのせいなんじゃないかな。


「……ごめん」

「えっ!?」


 耳元でポツリと謝罪の言葉。声的に間違いなくジュニアスだ。

 あ、謝られてしまった。きっと、手を離したことに、だよね? え、ジュニアスって実は優しいのでは? ここ最近、冷たい対応しかされていなかったからビックリしたけど、これは感動する。


 すぐに大丈夫って返事をしようとしたんだけど、その時いつものように幻獣人の光が飛び出したものだから眩しすぎてまた目を閉じる。真っ暗だったから余計に目にくるぅっ!


 でも、一瞬だけ見えたその光が黒と赤紫が混ざり合った色なのがはハッキリとわかった。なんだか不思議な色合いだったな。


 なんて考えている場合じゃない! 耳元でバサバサッという羽音が一斉に聞こえてきた全身にブワッと鳥肌が立った。

 コウモリ型の禍獣!? い、いやぁぁぁぁ!!


「逃げる」

「っ!」


 私が身震いしたのを察知したのだろう、ジュニアスがポンポンと背中を叩きながら走り出した。

 そ、そうだった。解放後はすぐに洞窟の外に行くって言っていたよね。私に出来ることは、ジュニアスにしがみつくことっ!

 あ、あとはお願いしますぅぅぅ!!


 遠くの方が明るくなっているのが確認出来た。きっと出口だ。パチパチと瞬きを繰り返して目を少しずつ慣らしていく。

 でも、慣れるより前に外へと飛び出した。は、速い。


「あっ、あれは……!?」


 洞窟を出た先で見たのは真っ黒で大きな狼のような獣の姿だった。一瞬、禍獣かと思って身体が強張ってしまったけど、赤紫の瞳がとても綺麗だったからすぐにあれがジーノなんだってわかった。


 私の予想通り、その大きな黒い狼はみるみる内に姿を変えていく。

 それは人型になっていき、あっという間にオールバックの燕尾服のような恰好をした男性が姿を現した。


「久しぶりね、ジーノ。でも、再会を喜んでいる場合ではないの。まずは急いで朝露の館へ行くわよ」


 洞窟外で待機していたマティアスが言葉少なにジーノに説明をしてくれた。すごく助かります……!


 ちなみに、マティアスはここで洞窟から飛び出してきたコウモリ型の禍獣を一掃してくれていたらしい。

 えっ、一掃!? 姿は見てないけど、かなりの数がいたんじゃ……いや、まぁ、もう驚くのはやめよう。マティアスだもんね。うん。


 一方のジーノは一言も発さず、綺麗な姿勢で礼をした。たぶん、了承の意味だよね? それにしても綺麗な姿勢……。

 毛先が赤紫の黒髪は綺麗にオールバックでまとまっているし、モデル体型だし、なんというか執事っぽい。


 もう少しどんな人なのかを観察したかったのだけれど、次の瞬間にマティアスが発した言葉に一気に意識をもっていかれる。


「さぁ、これから国王軍とやり合うわよ!」

「……ええっ!? な、なんでそんな話になるんですかっ!?」


 聞き間違いじゃなければ、国王軍とやり合うって言ったよね? 言ったね!? 確かにこちらの人数は増えたけど……ど、どうしてそうなるのーっ!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ