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この度、獣人世界に転移した普通の人間である私が、幻獣人を束ねる「鍵の聖女」に任命されました。  作者: 阿井りいあ
そろそろ腹を括って聖女を名乗らねばならないようです

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次に解放する幻獣人を決めました


「え、えーっと、もう決めちゃいますね。次に向かうのはコクの地区で、解放する幻獣人はジュニアスとジーノの二人。これで決定です!」


 いつまでたっても決まらなかったので、それぞれの主張を聞いた上で優先度が高そうなジュニアスの解放を選びました!

 同じ地区で一気に解放してしまいたいので、コクに封印されているもう一人のジーノも一緒に。


「もちろん、賛成よ。はぁ、やっと弟に会えるのね」


 なぜジュニアスを優先したか、というとまさしくこれこそが理由です。ジュニアスというのはマティアスの双子の弟なんだもの。チラッとそんな話を聞いたのを覚えてる。


 兄弟なら早く再会させてあげたいなっていう、ただそれだけの理由なんだよね。私もマリエちゃんに早く会いたいから、その気持ちはよくわかる。


「ちぇっ。ガウナと早く遊びたかったのにー」

「穏やかなエトワルは無害さでは上位ですのに……」


 リーアンとシルヴィオは希望通りにいかなかったようで不満そうだ。ご、ごめんなさい。後回しになってしまうけど、ちゃんと解放するから……!

 ちょっとだけ個人的な感情を優先させてしまったことを反省します。


 でもアンドリュー曰く、後の順番は誰からでもいいということだったし、私が決めないといつまでたっても時間だけが流れそうだったからね……。


 さて、今回は事前に解放する二人の情報をあらかじめ聞いておくことに成功しました。

 これまでは流されて解放して、ビックリすることが多かったからね。聞けても詳しくは知らないことが多かったので、次こそはちゃんと教えてもいます。


「ジュニアスはベヒモスの幻獣人なの。温厚で常識のある子よ。基本的には無害だから安心してちょうだい」


 マティアスの説明にホッと安心しつつ、ベヒモスってなんだろう? と頭の中を疑問符でいっぱいにする私。

 そんな中、リーアンがはいっと不服そうな顔で挙手をした。


「無害ってのは意義ありー。ジュニーはオレっちたち全員に敵意振りまくじゃーん」

「あら、そうかしら」

「マティーにだけだからねー? あんなに甲斐甲斐しいのはさー」


 なんだか、マティアスの言っていたことと違う様子に一気に不安が押し寄せる。全員に敵意を振りまくって……?

 顔を引きつらせていると、カノアも同意を示す様に数回頷いた。モノクルのチェーンがシャラシャラと鳴る。


「マティアス以外への態度が酷い。天と地ほどの差。思い込みも激しいし、ジュニアスはちょっと面倒臭い。うるさいし」


 ど、どうやらジュニアスへの印象は、マティアスとその他で大きく差があるみたいだね……? その他のみなさんも頷いているし、そういうことなんだと思う。うぅ、ちょっと安心したのにっ!


 けど、逆に言えばマティアスがいれば手綱を握れるから問題ないとアンドリューは言う。

 そ、そっか。ジュニアスにお願いしたいことがあった時はマティアスに相談させてもらおう。そうしよう。


 一方、ジーノはヘルハウンドっていう種類の幻獣人だそう。こちらの方が聞いたことのある種類だ。大きな犬のような幻獣、だよね……? その程度の知識しかないのが悔やまれる。


「ジーノは何考えているのかわからないヤツですよ。無口ですし。単独行動も多いですしね」

「ヒヒッ、彼をからかうのは楽しいよぉ? わかりやすく眉間にシワを寄せてくれる」

「だから毒野郎は口を噤んでください。蹴りますよ?」


 今度はシルヴィオが教えてくれた。ギディオンも教えてくれたけど……う、うん。ジーノはギディオンの被害者だってことはわかった。

 みんなからも厄介者扱いはされていないみたいだし、意外と常識人だったりして? い、いや。さっきの例もあるし、油断は出来ないけれど。


「人との接触を極力避けるタイプではあるが、ジーノは認めた相手には従順な面がある。そうなればかなり心強いぞ」


 アンドリューからもそんな風に言ってもらえるくらい信用は出来そうなジーノ。

 だ、だけどそれ……絶対に無理なやつでは? 認めた相手には、でしょう? 私に認められる要素がないもの。知らんぷりされる未来しか見えない。絶望的だぁ……!


 ……うん、いいの。別にそれでもいい。幻獣人たちとうまくやっていくことが大事なわけじゃないもの。そりゃあ、仲がいいに越したことはないと思う。禍獣の王を倒さなきゃいけないんだから。

 でも、すごく親しくなる必要はない。それなりに意思の疎通が出来て、協力し合えればそれでいいんだもの。そう、それだけでいいんだけど。


 それが、難しいんだよねぇ。今だってギディオンとはまだそれが出来るとは言えないし。

 リーアンやカノアだって仕方ないから協力してあげてる感がヒシヒシと漂っているしね。なんだかんだで協力してくれているのだから十分ありがたいんだけど。


「ではエマ。早速、明日の朝からコクに向かってもらえるか。誰を同行させる? 国王派の動きも気になるから二人くらい連れて行った方がいい」


 アンドリューに言われてハッとする。そ、それがあった……! 選ばなきゃいけないんだぁぁぁ。うぅ、どうしよう。

 頭を抱えていたらマティアスがすぐに名乗りを上げてくれた。


「アタシは行くわよ。ジュニアスの解放にはむしろいないと困るんじゃないかしら?」


 確かに! 他の人だったら敵意がむき出しで大変なんだものね! 助かるよぉ!

 そうなるとあと一人なんだけど……。シルヴィオが、連れて行ってほしそうにこちらを見ている……!


「シルヴィオ、ダメよ。連れて行くもう一人はギディオンに決定だから」


 だけど、私が何かを言う前にマティアスがそんなことを言った。

 え……。ええっ!? い、今、ギディオンって言った!? な、なんでぇ!?


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