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この度、獣人世界に転移した普通の人間である私が、幻獣人を束ねる「鍵の聖女」に任命されました。  作者: 阿井りいあ
だいぶ慣れてきましたが慣れてしまったら終わりな気もします

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少しだけ身の危険を感じました


 そんなに嫌なのだろうか。マティアスもカノアも顔を歪めた状態で固まっちゃったんだけど……?


「なんだ? そんなに嬉しいか?」

「家主として、追い出してもいいかな?」

「あら、それはいい考えね」


 けど、ギディオンの嬉しそうな問いかけに再起動を果たし、即座にバッサリと切り捨てる二人。見ていてヒヤヒヤしないのは、これだけ言われてもギディオンが平気そうにしているからかもしれない。


 いや、むしろちょっと嬉しそうなんだけど? 嫌われて嬉しい、というよりも二人が気分を害していることを喜んでいる、みたいな。そんな性格の悪さをそこはかとなく感じる。たぶん、気のせいではない。


「ヒヒヒッ、僕もずいぶん嫌われたなぁ。だからこそ、少しは歩み寄ろうとしているんじゃあないか。冷たいねぇ?」


 肩を竦め、両手をやれやれと広げるその様子はショックを受けているというよりも煽っているように見えるし……。

 わざと、だよねぇ。なるほど、他の幻獣人たちに嫌がられるわけだ。


「胡散臭いことこの上ないわね」

「絶対に余計なことするよね」


 ほら、信用がない……。ギディオンも気にした様子はないし、いつものやり取りなんだろうなぁ。


 それにしても、単独行動が好きそうなのに、本当にどうして館に来る気になったのだろう。私が何かをしたからってわけでもないだろうに。

 だって何もしてないどころか、ネガティブな面を見せてしまうという失態を犯したくらいだ。どう考えても彼にとってプラスになるようなことはなかったはずなのに。


 とはいえ、来てくれるというのならこちらとしては助かる話だ。もしかしたら禍獣の討伐くらいは手伝ってくれるかもしれないもの。


「あの、ギディオンが館に来てくれるのは、こちらの事情としては助かること、ですよね?」

「……招集がかかった時に探す手間が省けるのは確かだけどー。でもそれだけだよ? それだけのメリットしかないなら、館にいない方が僕としてはメリット大きいんだけど」


 本当にずいぶん嫌われているなぁ……。探す方が手間じゃないんだろうか。緊急事態で探す時間を取られる方が危なくない?

 ま、まぁ価値観はそれぞれだから何もいえないけれど。彼らにとってはギディオンの捜索なんて簡単なのかもしれないし。


「そうだわ、ダメ聖女。アンタが命令しなさいよ。館では余計な揉めごとを起こさないようにって」

「そうだね。聖女の命令なら僕たちは誰も逆らえないし」

「えっ! 命令、ですか?」


 確かに、聖女の命令は幻獣人にとっては絶対だって聞いたけど……。それが有効なのもわかるし言いたいこともわかるよ。

 で、でもさ? 揉めごとを起こす前から命令するだなんて、余計に気が引けるっていうか。そもそも、誰かに命令だなんて出来ないよぉ。


「ヒヒッ、僕は構わないぞ。そもそも揉めごとなんて面倒なことを起こす気なんて最初からないんだから。僕は平和主義だからなぁ? それにぃ」


 ギディオンがニヤッと笑う。前髪の奥にある瞳が緑の光を放ったような錯覚を覚えた。


「君になら、命令されてみたいくらいだなぁ。エマサン?」


 スッと細くて白い指が私の顔に伸びてくる。爪が少し長くて、黒く塗られているのが印象的だった。妙に目を引くその手に、私の視線は釘付けとなる。

 ぼんやりと、ギディオンの手が私の頬に触れるその瞬間をただ待っていると、パシッと白い手がマティアスによって払われた。


 あ、あれ? なんだか今、おかしかった? うたた寝していたのを起こされたような、そんな感覚がある。


「はい、ストップ。もういいわ。カノア、さっさと扉を出してくれない? これ以上コイツの戯れに付き合う方が面倒よ」

「そうみたいだねー。ま、エマのことは頼まれなくてもシルヴィオが目を光らせてくれるでしょ」


 えーっと、今何が起きたんだろうか。何かされかけた? あと、命令はもういいのかな? わからないことだらけだ。


「ざぁんねん。もう少しだったのに。お楽しみはお預けだねぇ、エマサン」


 ただ、相変わらず嬉しそうにニヤニヤと笑うギディオンに不安を抱いたことだけは確かだった。




「エマ様っ!! お帰りなさい、ご無事でしたか!? 野郎どもに変なことされませんでしたかぁ!?」

「た、ただいま、シルヴィオ……」

「ええい、邪魔よ! 中に入れないじゃない!!」


 カノアが館への扉を出した瞬間、こちらが開けるよりも先に向こう側から扉が開かれた。飛び出すように出てきたのはもちろんシルヴィオだ。まさか扉の出現をずっと待っていたのだろうか。


「あ、マティアス、解放されたんですか。ささっ、エマ様! お疲れでしょう? 早く中へ!」

「アンタがそこに立ち塞がってなかったらとっくに中に入ってるわよっ!」


 マティアスのツッコミがキレキレですね……! 苦労性だよねぇ。申し訳ないけど私としてはちょっとだけ助かるかも。

 しかし、そんなマティアスを無視して私を真っ先に室内へとエスコートするシルヴィオには効果がないみたいだけれど。お、お願いだからもう少しだけ気にしてっ! こっちがヒヤヒヤするよぉ!


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