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この度、獣人世界に転移した普通の人間である私が、幻獣人を束ねる「鍵の聖女」に任命されました。  作者: 阿井りいあ
私だってちょっとは頑張ります! しつこいようですが聖女ではないです。

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どうやら報酬が貰えるらしいです


「はい、出来た。魔力いっぱいまで入れたよ」

「ありがとう、カノア」


 アンドリューから魔道具を二つ受け取ったカノアは、それを二つ片手に握り込むとあっという間に魔力を補充してしまった。

 シルヴィオも簡単にやってみせていたけど、疲れたりしないのかな? 魔力の使い過ぎで倒れる、なんてことはないのだろうか。


「それはない。この程度、爪の先をちょっと切ったくらいだよ。まぁでも、容量の大きな魔石とか、量がたくさんあったらさすがに疲れるけど」


 そっか、やっぱりたくさん使えばその分は疲れるんだ。そうなると、館に残ってひたすら魔力の補充をしてくれているシルヴィオが無理をしていないかが心配になってくるな。本当に急いで帰ってあげないと。


 カノアから受け取った魔道具は、ペンダントになっている。魔石は水色。うん、水の中で活動が出来そうな色だ。頭の悪い感想である。

 魔道具はこのように身に着けられる形を取ることが多いらしい。首からかければいいだけだから確かに楽かも。


「カノア。この部屋に補充してもらいたい魔道具や魔石を少しずつ運び入れておく。五日に一度ほどでいいから館に運んでもらえないか?」

「え、面倒臭い」

「わ、私も手伝いますから! ね?」


 そういえば倉庫二部屋分が埋まるくらい大量にあるって言っていたもんね。運ぶのだけでも大変そうだ。


「魔力を補充したものはどうしたらいいですか? またここに運びます……?」

「いや、館から各地に運び入れようと思っている。その時はまたカノアに協力を頼むことになるが」

「えー。僕を働かせすぎじゃない?」


 そっか。わざわざ一度城に運ぶ必要はないものね。場所によっては二度手間になってしまう。各地への禍獣討伐もあるし、確かにカノアの扉は大活躍だ。


「だが、カノアの力が必要だ。そうだな……何か欲しい物があれば、無理のない範囲で調達も考えるが」

「え、本当? やった。それじゃあケーキが食べたい。クリームがたくさん乗ったヤツ」


 カノア、甘党なんだなぁ。無表情なのに目だけがキラキラしてる。アンドリューは要求が予想出来ていたのだろう。クスッと笑ってわかったと快諾していた。


「定期的に食べたい」

「ああ、魔力の補充は立派な仕事だからな。当然報酬も出る。カノアには追加報酬としてケーキを用意しよう」

「追加報酬? それっていっぱい頑張らなきゃいけないじゃん。んー、お金はいいからその分ケーキに回してもらうのは?」

「可能だ」

「じゃーそれで」


 交渉が成立した。確かに、魔力の補充や禍獣の討伐はきちんとした仕事だよね。しかも幻獣人にだけやたら負担のかかる大事な仕事だ。

 報酬が出るって聞いて少し驚いたけど、考えてみれば当然のことだったね。働きからするに、結構もらえそう。


「エマは? 報酬について何か要望があれば可能な限り叶えるが」

「えっ、私にも報酬があるんですか?」


 突然、話が振られたものだから驚いた。けど、それ以上にアンドリューが驚いているようだ。え? あれ?


「当たり前だろう。そもそも、聖女様は唯一無二の存在。本来なら城に迎えて手厚く、何不自由なく過ごしてもらうのが普通なのだ」


 なんでも、朝露の館で暮らすようになったのは前聖女の時からなのだとか。それってたぶん、現国王の思想に問題あったからだよね。あの館が使われるようになったのは。最近だったんだ。


 だから多少のワガママくらい言ってくれ、とアンドリューは言うのだけど……。それって、税金から払うんだよね? 魔石の補充や禍獣討伐は報酬だろうけど。

 それはかなり心が痛むし、そもそも私がしていることと言えば幻獣人たちを解放していくだけだ。もうね、生活させてもらえるだけでありがたいよ。


「欲がないね、エマって」

「かといって勝手に贈り物をしたところで喜びそうもない。難しいな……」


 アンドリュー的には立場上、何かしら受け取ってもらいたいみたい。そ、それもそうか。でもなぁ……。あ、それなら。


「教会に寄付してください。私が受け取る分の報酬は全額でもいいです」

「いや、さすがに全部というわけにはいかないだろう。必要な時が来たらどうするんだ」

「えっと、それなら四分の一でいいです」


 いくらもらえるのかはわからないけど。だって、生活に困っていないんだもの。そう言ったらまた欲がなさすぎると呆れられてしまった。そ、そんなこと言われても……。


「エマは、もしかするとこれまで何かを望むことを許されていなかったのかもしれないな」

「え、そうなの?」

「え、そうなんですか?」


 アンドリューの予想にカノアと一緒に驚く。二人にはジト目で見られてしまった。いやぁ、だって覚えていないんだもの。

 けど、望むことを許されてない、か。それってどんな環境なんだろう。そんなに不幸な生い立ちなのかな、私。実感がないなぁ。


 私のこれまでの生活がどんなものであったにしろ、人から何かを貰うことに少し抵抗があるのは事実だ。私なんかが貰っちゃダメだよね、って思ってしまう。……うーん。私がそういう性格ってだけじゃないかな?


「まぁいい。報酬についてはまた考えておく。今はマティアスとギディオンの解放を頼む」

「あ、そうでした!」


 まずは目の前の任務をこなさないとね。報酬を受け取るに値する仕事くらいはこなさないと。


 とはいえ、これから水の中に行くんだよね……。魔道具があるとはいえ不安だなぁ。なぜって、当然のように泳げないからですよ!


 私は水中で絶対にカノアにしがみついていようと心に決めた。ごめんね! でも必死なの!


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