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この度、獣人世界に転移した普通の人間である私が、幻獣人を束ねる「鍵の聖女」に任命されました。  作者: 阿井りいあ
私だってちょっとは頑張ります! しつこいようですが聖女ではないです。
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不法侵入はやはりドキドキします


 とにかくこのままでは泉に潜れず、マティアスの解放も出来ないから、ということでカノアは一度アンドリューの下に行こうと提案してくれた。

 アンドリューなら水中でも動ける魔道具か何かを貸してくれるだろうとのことだ。なるほど。


「でも、城は敵が多いんだよね。聖女であるエマを潰そうとする人もいるんでしょ? アンドリューが言ってた」


 よく覚えていたね。あのゴタゴタの中で解放されて、よくわからないままなのかと。ご、ごめん。だって超絶マイペースだから、つい。正直、侮っていました。反省。


「というわけだから、アンドリューの私室に行く。そこなら少なくとも敵には会わないだろうし」

「し、私室!? それ、場合によっては不法侵入で捕まるやつじゃないですか!?」

「大丈夫、いつものことだから。それに人の気配がわからないわけないでしょ。あ、人間は気配とかもわからなかったり……?」

「わかる人とわからない人がいると思います。もちろん私はわからない人です」


 自分でも役立たずだって思っているから、かわいそうな子を見るような目を向けないで……。刺さる……。


 カノアの扉はどこにでも出せるわけじゃないけれど、一度登録した場所ならどこにでも出せるんだって。でも登録数には制限があるのだそう。

 それで、ハクの都市では城下町の入り口から少し離れた場所と、アンドリューの私室を登録しているとのこと。前聖女がいた時、遊びに行きたいという子どもの頃のアンドリューの願いを叶えてあげたんだって。優しいし、可愛いな?


「まぁいいや。エマのことは僕が守るって決めたし。禍獣が相手じゃなきゃ問題ないから、そこは安心してよ。ほら、行こう?」


 そう言いながらカノアは自然に手を差し出してくれた。私が弱い生き物だと認識したからか、やたら親切になったよね。シルヴィオほどじゃないけど。


 それにしても、禍獣が相手じゃなきゃ問題ないってことは、やっぱり幻獣人は他の獣人とは違うってことかな。アンドリューのような、えーっと竜人だっけ? すごく強そうな種族だけど、それさえ相手にはならないっていうのはよっぽどだよね。


 あれ? でも一応、獣人だって禍獣を倒せる人がいるんだよね? それなのにカノアには倒せない?

 うーん、どっちなんだろう。カノアが実は強いって可能性が浮上したな。自分では弱いって言っているけど。うん、よくわからない。


 考えていても仕方ないか。私は差し出されたカノアの手を取り、一緒にアンドリューの私室へと続く扉を通ることにした。


 一歩扉を越えると、そこは豪華な造りの部屋となっていた。さすがは王太子、部屋も豪華である。わかってはいたけどね。

 でも、広さだけで言えば朝露の館にある私が使っている部屋も似たようなものだ。先にあれを見ていたからか、そこまでの驚きはなかったよ。それはそれで、なんだか王族に対して失礼な気がするけれど。


「うん、誰もいないみたいだね。じゃ、その辺に座ってよう」

「えっ、勝手にいいの?」

「誰もいないんだからいいじゃない。変なところ気にするね?」


 いや、気にするよ! ただでさえ連絡も入れずに不法侵入しているんだから! その上寛ぐなんてこと出来ませんよ、小心者には。


 しかしそこはカノア。座ってようと言っていたくせにまさかのベッドにダイブを決めた。

 もう一度言いますね、ベッドにダイブしたんです。えええええ!?


「あ、あの、カノア?」

「んー……?」


 戸惑う私は当然、声をかけるよね? けど、すでに目を閉じて寝そうなんだけど! こ、これはどうしたらいいの!?


「あー、エマも、寝たかったら……寝て、もいい、よ……」


 眠りに入るの、早すぎでは? いや、眠れないでしょ。この状況で普通は寝るなんて出来ないよね?

 そのままカノアはアンドリューが来たら起こして、とだけ最後に告げてスゥスゥと寝息を立ててしまった。自由が過ぎる!!


「うぅ、どうしよう。アンドリューぅ……」


 いつ部屋に戻ってくるかなんてわからないし。というか、下手したら夜まで戻らないんじゃないかなって思うんだけど。だからこそ、館への扉を出してほしいって言った時間も早朝だったのだろうし。


 館に戻るの、かなり遅くなっちゃいそうだな。シルヴィオは心配するかもしれない。いや、怒るかも? あー、もうどうしたらいいのかわからなくて泣きそう。


「はぁ、どうしてこの状況で眠れちゃうんだろう。そりゃあ、待っている間は暇かもしれないけど……」


 シン、と静まり返った室内。勝手にウロウロするわけにもいかないし、だからと言って突っ立ったままでいたって仕方ないよね。

 私は諦めて小さくため息を吐くと、ベッド脇にあった椅子に座った。そしてそのまま気持ちよさそうに眠るカノアをぼんやりと眺める。


 睫毛が長い。肌も綺麗だし、髪もサラサラだ。モノクルはかけたままでいいのだろうか? と思わなくもないけど、人の物を勝手に触るのもよくないし、大事な物だったら余計にダメだろうからそのままにした。寝返りとかで危なかったら避けておこうかな?


「幻獣人って、みんなこんなに綺麗なのかなぁ……」


 シルヴィオはもちろん、リーアンだって綺麗な容姿をしていると思う。ただ、性格がそれぞれ強烈すぎるからそっちに気を取られてしまうだけで。


 世界を禍獣から守ってくれる幻獣人。しかも美形。これは彼らに憧れる人たちは多そうだなって思った。国民から好かれるのは今後の国のためにもいいだろうから、出来れば性格はバレないようにした方が良さそう。

 そんなことを考えながらぼんやりしていたら、私もなんだか眠たくなってきた。


 いやいや、ここで眠るわけにはいかない! 私まで眠ってしまったら、アンドリューが来た時にきっとビックリしてしまうもの。そう、私はちゃんと、起きていなきゃ……。


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