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事故物件 1.5 榊 ユウイチの心境

 鬼村ルミ子。 オカルト雑誌『ノノメセタ』人気No1ライター。


 彼女のことは『ノノメセタ』のファンである僕はこの会社に就職する前から当然知っていた。読者から寄せられた心霊スポットを全国各地飛び回り、心霊現象の考察、検証を行うその記事は、心霊現象に興味がない(怖いから)僕でさえ引き付けられる。

 彼女は基本的に、科学を使って心霊スポットを検証する。多くの心霊現象は彼女の推理で自然現象であったり、人為的なトリックがあったと解明されてしまう。霊の存在を認めながらも実際に彼女が本物と認めた心霊スポットはごく僅かで、なんでもかんでも幽霊の仕業にする霊能力者とはその辺が違う。まさに本物が書いた記事なのだ。

 僕が入社して(そして人材不足の為、なかば無理やり心霊部門に配属されて)今日で三日目になるのだが、鬼村ルミ子は出張中だったため一度も合っていない。出張先の仕事も終えて昨日帰宅したそうだが、早速次の仕事とは、売れっ子は大変である。

 そんな本来なら『憧れ』のような存在の人と一緒に仕事ができるわけなのだから、両手を掲げて大喜びして飛び回るべきなのだろうが、この三日間、鬼村ルミ子に関する噂をいくつか耳にしており、その内容が僕の心を底なし沼に引きずり込んでしまったのだ。


 曰く


「去年ルミ子の下についた新人は一週間後に行方不明になった」

「ルミ子と口論した同僚は次の日、尿路結石になった」

「ルミ子が怒ると国会で解散選挙が始まる」

「熊を素手で殺した」

「フリーメイソン13人評議会のメンバーだ」

「イスラエルの失われた10支族だ」

「アルファ・ケンタウリ出身だ」

「ネッシーは彼女が殺した」

「1000年生きている」

「ペットは人面犬」

「50mを4秒で走る」

「私、きれい? と聞いてくる。否定すると殺される」

「空を飛べる」

「アトランティスはルミ子が沈めた」

「いつもシャツの襟を立てている」

「日本の国防は彼女が担っている」

「ルミ子>>>>>米軍」

「背後に立つと殺される」

「ルミ子>>>>>銀河」


 などと、もはや歩く都市伝説である。ここまでくると本当に鬼村ルミ子が存在するのかさえ疑わしくなってくる。


 そんな人間と今日、初対面する上に、一緒に仕事をするのである。噂の真偽はどうあれ、この『心霊部門』が人気とは裏腹に人材不足なのは、この鬼村ルミ子が原因であることは想像に容易い。


 出張の同伴が雨宮さんだったらなぁ。


 雨宮 ナナセ 心霊部門のもうひとりのライターだ。僕より歳は2つ下だが、高卒で入社した彼女は僕の二年先輩だ。彼女はとても美しい。黒く艷やかな髪は光を浴びると乱反射して青く輝く。いつもシュシュで束ねたその黒髪は天の川の様だ。手足がスラリと長く、大きな目には不相応なクールな表情もまた魅力的だ。近くを通ると広がる柔軟剤の匂いも上品でどこか遠い国の貴族じゃないかと思わせる。胸は服の上からなので想像であるが、Bカップくらいだろうか。彼女は少し小さいくらいが丁度いい。


「おい、榊、こっちに来い」


 後藤田編集長の声だ。いよいよ出張か。鬼村ルミ子はまだ来ていないのか。やれやれ、いやだなぁ。ナナセさんと一緒がよかったなぁ。


 僕は渋々、後藤田編集長のデスクに向かっていった。


 



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