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幸せな朝

作者: 310

何気ない日常の一場面 その1

目が覚めると、見慣れた顔の見慣れない寝顔がそこにあった。寝起きのぼんやりとした頭は思考を拒否して、半分だけ開いた瞼をまた閉じた。わずかに感じた違和感に気づかないまま、目の前の体温に身を寄せる。脇のあたりに顔を埋めて深呼吸をする。ぐりぐりと顔を押しつけて何度も深呼吸を繰り返す。



「なに…くさい?」



頭の上にいつもより舌足らずな声がかけられて、脇から顔を上げると、半分開いた目が私を見ていた。



「くさかったら、こんなに何度も匂いを嗅がないよ」


「いや、物好きだからさ」


「くさい自覚でもあるの?」


「自分の匂いはわからん」


「じゃあくさくないから大丈夫」


「本当かな」



貴方は笑うと、仰向けから横向きに体を動かして、私を抱きしめた。匂いと温かさに包まれ、そっと目を閉じる。ただ、幸せだと、思う。



「二度寝できそうな時間?」


「…全然…むしろダッシュで準備しないと遅刻だね」


「ちょ、まじか…え、やばっ」



枕元のスマホを覗き込んで貴方はベッドを飛び起きる。離れた貴方の背中をぼんやりと目で追いかける。ドアに手をかけて、振り返った貴方は呆れたように笑った。



「そっちも遅刻するぞ」


「んー…」


「まったく…」



与えられたのは、目覚めのキス…ではなく…



「っさっむ、やば、布団っ、背中に足入れないでぇぇぇ」


「ちょうどいい目覚ましになったろ」


「オニー」



笑いながら部屋を出て行く背中を、ただ、愛しいと思う、そんな幸せな朝。


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