WATCHING HOUR
シロウトなのでクオリティは低いですが許してください
・・・おい、来たぞ!早くカメラを回せ!二人組のスーツの男だ。家の玄関のインターホンを鳴らしたぞ。何言ってるかマイクで拾えるか?無理?無理かっ・・・!
・・・家の人が出てきたぞ。何を話しているかも拾えない?っつ・・・!
都内の住宅街で住民の失踪事件が続発しているとのタレコミが大日本帝国テレビに届いたのは1月前、既に10人が町から消え、警察も密かにこの事件に本腰を入れ始めていた時だった。警察よりも先に現場を抑える--撮影クルーは本気だった。
この事件の前に謎の宗教団体がこの町に教会を建てていたという事を掴み、彼らが常に二人組で布教している事まで抑え、後は撮影のチャンスを探るだけだった。
・・・スーツの男と家の人が一緒に出て行ったぞ。ドライバー、後ろをつけてくれ!
・・・建物の中に入ったか?”WATCHING HOUR”?何かの洒落たバーか?マイク、一緒に付いてきてくれ!
閑静な住宅街にある錆びたトタン板で固められた建物の中に入るとそこからは上への階段、その階段を上ったはいいがいつまで経っても先が見えない。建物自体は二階建てのオンボロなものだが、この階段は建物と割に合わない。やっと階段を登りきった先にはこれも建物からは想像も出来ないほど大きな廊下、しかも赤いカーペットにヨーロッパ風の柱と結婚式場のような豪勢な作りだった。廊下の先の扉を開けると、部屋に先程後を付けたスーツの男二人、そして連れられてきた家の人、他にもかなりの人数、建物に対してあまりにも大きさの合わない真っ白な部屋に何百、何千という人間が取材班の回りに座っていた。そして彼らは取材班を声や物音をたてず唯々じっと見つめているだけだった。
・・・彼らはこの辺の住民なのか?
「すみません!貴方達はここの住民でしょうか?」
彼らからは何も返答はない。ただただ取材班を見ているだけ。二、三度同じ質問したが声は虚しく響くだけ。付いてきたマイクの女は遂に泣き始めてしまった。もう一人の男はまわりの視線に圧倒され、彼女を落ち着かせる事も出来なかった。
・・・胃が痛くなってきた。視線がこんなにも苦しめるなんて・・・
視線の威圧からバランスを失っていた精神はやっと元に戻り初めなぜ彼らはただ自分たちを見てるだけなのかを考えようとしていた。だが考え始めたとき後ろにいたマイクの泣き声が止んでるのに気がつき、後ろを振り返ると、彼女もまた自分を自分を見つめていた。
・・・しっかりしろ!どうした?
体を揺さぶっても何も返事は無い。体を棒のように硬直させ、カメラの男の顔を見つめていた。彼は不覚にも無表情な顔で見つめるマイクの女の顔を見てしまい、再びパニックになった。彼は錯乱状態の中、それなりに何故こういう状況かを飲み込もうとした。そして現在の彼なりの答えを見出し、大きく震える手でメモに殴り書きをした後、彼はすべてを考えるのを止めた。
"WATCHING HOUR"のモデルは"WATCH TOWER"、いわゆる「ものみの塔」「エホバの証人」をモデルとしてます。不快な思いをさせてしまうかもしれませんが誠に申し訳ありませんでした。"WATCHING HOUR"に登場する団体はすべて関係がありません。