録音媒体を作るつもりなのだが?
言ってしまうとシグレ姉さんとアカツキさんを逃しても捕まってしまう。確実なのは父、マーティンの殺害だ。でも人を殺すなんて少し抵抗がある。もしくは何か証拠を王国に提示してマーティンから爵位の剥奪をするしかないのだが……
いや、もしこのやり取りを馬鹿みたいに何回も行っているのなら、音声証拠さえ残せればいい。映像であればもっと。
丁度いい、楽器練習の後実験をしよう。
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まずは媒体と言うべきか、音を閉じこめる物を用意する。普段みにつけていておかしくないもの……ヘアピンだろうか。コレに魔法をかけよう。
まずは実験として使えなくなったペンに。
「処理付与開始、ユキノ・クレーヴェルによる録音の宣言で周囲の音楽を録音し、録音停止の宣言と同時に録音終了。ユキノ・クレーヴェルによる再生の宣言で再生開始、ループ再生は無し。処理付与終了」
よし、これでいいだろう。にしてもこの魔法、終了までの時間が長いほど魔力を使うからな、次は早口でやってみるか。
「録音、……………あーめーんーぼーあーかーいーなーあーいーうーえーお、録音停止。再生」
『、…………あーめーんーぼーあーかーいーなーあーいーうーえーお、録音停止』
あ、録音停止まで残るのか。
「処理付与開始、録音停止宣言時、録音停止という音声は削除。処理付与終了」
これで改変されたかな。
「録音、…かーきーのーきーくーりーのーきーかーきーくーけーこ、録音停止。再生」
『、…かーきあのめきんくぼりあのかきいかなきあくいけうこえーおー、録音停止』
……うん、2回目の録音の録音停止は消えてるのはわかった。実験はまだまだ続きそう。
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約5日かけてしまったがなんとか完成させた、録音ヘアピン。雪の結晶を模したヘアピンだ、私がよくつけているので普段から持ち歩いていてもおかしくは無い。魔力切れを起こさぬよう時間を空け、実験を繰り返した。遠くの音が聞き取れないとか、男性の声が女性の声に負けるとか、音割れするとか。
完成系は男性の声だけを録音してくれる、マーティンさんの計画を知っているのは全て父の専用執事の面々ということも考えられる、父に信頼をおける女性なんてそうそういない。
使用人が確実に廊下に来ない時間に、部屋よりも録音される可能性の低い廊下で話すと言うのまでは頭がいいと思った。
だが、私がたまたまその話を聞いてしまったのは父の私に対しての興味のなさなのだろう。
まぁいい、これで地盤も固められる、録音してやろうではないか。