魔王が討伐されたとか初耳なのだが?
朝ごはん、いつも私は最後に呼ばれる。
他の家族は既に席に着いている、私は軽く「おはようございます」とだけ言うと席につき、母と次女の返しに笑みを見せてから食事を始める。
「いただきます」
そう小さな声は父と三女の笑い声に消えていった。
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食事を終えた後、何時もなら文字の読み書き等を行い暇を潰すが今日はやることが出来た、勿論魔王について調べるのだ。
旅に出るにしろ何にしろ早めに敵の事は知っておかないといけない。いや早すぎるけど…
ということでシグレ姉さんに聞いてみようと思う。
彼女は普段、食事を終えて少しすると家から少しでたところにある練習場…弓道場と剣道場が合わさったような場所にいる。
なんでも家族を助ける力が欲しいと、アカツキさんに剣技を教わっているらしい。
という事でシグレ姉さんを探して約5分、玄関に向かう彼女を発見し私は彼女に駆け寄った。
「シグレねえさん!」
「あら、ユキノちゃん。どうしたの?」
シグレ姉さんは私の頭を撫でてくれる。シグレ姉さんは美人で、特に濡鴉の髪はどの人間が見ても綺麗の一言に尽きる、大和美人と言う言葉が似合うであろう。
「あのね、おほんにマオーってひとがでてきたの。マオーはほんとうにいるって…」
「ふふっ、ユキノちゃんは怖がりね。でも大丈夫、魔王はもう
勇者様が倒したのよ」
……は?
いやいやまてまて、落ち着け今は5歳児だ、演技演技……
「マオーたおしたの?ゆーしゃさまってすごいんだね!」
「そうよ、ただ…勇者御一行様や一部の人間、
……ユキノちゃんのお母さまも同時に姿を消してしまったわ」
え、それってつまりは勇者は 記憶を持った人と元の世界に生き返る 選択をしたの?てことは
勇者が魔王を倒した時点で記憶が無い人は帰れない…?
「そんな……」
「……、ごめんなさい。あなたの気持ちも考えずに」
「いえ、わたしはだいじょうぶ。シグレねえさんにこんなこと話させてごめんね…?」
「優しいわね、あなたは」
ふふっ、と安心させるように柔らかい笑顔を見せてくれる。シグレ姉さんの方が人の為を考えて動けるいい人だ。
「シグレねえさん、おけーこがんばってね!」
「うん、行ってきます」
「いってらっしゃーい!」
ひらひらと手を振り見送った後、すぐさま部屋へと戻る。
部屋の中にはどうしても聞かれたくないことがあるときのために防音結界を貼る 魔法道具 と結界を貫通する呼び出し用のベルがある。そのベルを外の花瓶の傍に起き、中に入り結界を貼る。
「魔法道具 防音結界」
よし、これで叫べる
「あんのクソ神めぇぇぇぇええええ!!!」
「帰れなくなるなら帰れなくなるって言えって!てかまず魔王が討伐されたとか初耳なのだが!?決意揺らぐよ!?RTAワールドレコード取れないよ!?てか倒す敵いないからゲームとしてすら成立してない!乙女ゲーはしたくない!RPGが好きなのだ私は!!」
ここまでで子供の肺活量では限界を迎えむせてしまう、少し落ち着こう……
「いや、元の世界に未練はないけど…こうなった場合私のこの、振り上げた拳は何処へ……ん?」
そういえばこの現象、下手すれば私だけじゃないということでは?向こうに未練がある人がいてその人も事実に直面してしまえば絶望する?なんか可哀想な気もするなぁ……
「……決めた!」
私の進路!前世の高校は自由に選べなかったんだ、このくらい許されるでしょう!