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ルクスヒストリア読み切り版

作者: トウミ

○イルズシリーズが好きで、それっぽく書いたハイファンタジー。

読み切りですので、これで完結です。

 この世界、ルスデ・ラス・エストレースは、広大な自然・海が存在しているが、どこまで続くのかまだ誰も知らない。

これは、そんな世界の中にある、一つの国、ウィクトリア王国に所属する辺境の村の、少年・少女の物語。





 夕方前。

10歳くらいだろうか。癖っ毛の黒髪の少年が一人、脇に小さな猪を抱え、村へと帰ってきた。


「おールクス、今日はどうだった?」


「あ、親方。うん、今日はまぁまぁかな」


村の入口で出迎えてくれた40代くらいで白髪交じりの大男に、少年ルクスは、狩ってきたばかりの獲物を渡す。


「お、今日は猪か。ルクスもだいぶ狩りが上達してきたな! やっぱりルクスには剣の才能があるんじゃないか?」


「そうかな? まぁ、自分ではよくわかんないや」


と、ルクスが親方に答えていると、村の奥の方から騒がしい足音が迫ってきた。


「ルクスー!」


一人の少女が手を振りながら、ルクスの方へと走ってくる。


「ステラ、ただいま」


「おかえり、ルクス。おつかれさまー!」


きれいな金色のボブカットの髪をしたルクスと同い年の少女、ステラは、満面の笑みでルクスに労いの言葉をかけた。


「ルクス、今日はもういいぞ。ステラと遊んでおいで」


「ありがとう、親方」


ルクスは親方にお礼を言うと、ステラと一緒に、仲良く駆け出して行った。






 村の広場。ここは普段から、ルクスとステラが遊んでいる場所だった。

遊び場といっても小さな村だ。普段は、鬼ごっこやかくれんぼをするくらいだった。


「ねぇ、ルクス。今日は何を捕ってきたの?」


ステラは、興味津々にルクスに尋ねる。


「ん? 今日は猪だよ」


ルクスは少し自慢げにステラに報告した。


「わぁー! やっぱりルクスはすごいんだね! ねぇねぇ、どんな感じで捕ったの?」


「そうだな、こんな感じだよ」


ルクスは親方に作ってもらったお手製の小さな剣を、横に縦に振って見せた。

パチパチパチと大きく拍手をして、ステラは大喜びだ。


「すごいすごい! やっぱりルクスは剣の才能があるのよ! そうだ! 将来は騎士団になったらどう?」


「え、騎士団? さすがにそれは難しいんじゃないかな?」


ステラの思いがけない提案に、ルクスは少し困惑した。

騎士団というのは、ウィクトリア王国の王室直属の戦闘集団だ。定期的に王国内を巡回し、モンスターを退治するなど治安活動を行っている。毎年試験を実施し、王国中の猛者が集まっていると、ルクスは親方から聞いていた。


「う~ん、そうかな? ルクスなら騎士団に入れると思うんだけどな。あ、そうだ!」


ステラは何かを思いついたのか、ポンッと手をたたき、ルクスに考えついたことを話した。


「それじゃあ、村の外の森に行ってみようよ! そこで何か捕ってきたら、ルクスもきっと騎士団に入れると思うな!」


しかしルクスは、ステラの考えを、首を大きく横に振って否定した。


「ダメだよステラ。あそこはモンスターが出て危険だから近づくなって、村長さんが言ってただろ? というか、本当はステラがただ行きたいだけなんじゃない?」


「ちぇっ、ばれたか~」


ステラはわざとらしく、大げさに残念がった。


「おーい、ルクス! そろそろ夕飯を食べよう! 戻っておいで!」


とここで、ルクスを呼ぶ親方の声が聴こえた。

二人は辺りを見回すと、すっかり日も暮れていた。


「もうこんな時間か」


「ルクスと一緒だとあっと言う間だね」


「今日は狩りからの帰りも遅かったからね。ステラ、また明日!」


「うん、また明日!」


二人は別れの挨拶を交わし、それぞれ家路についた。






 夜、親方の家。

ルクスが親方と一緒に夕飯を食べていると、ドンドンドンと扉を叩かれた。


「こんな時間に誰だ?」


親方はそう言いながら、扉を開けた。

扉の前に立っていたのは、ステラの両親だった。


「親方さん、こんな時間に申し訳ない! そ、その、ステラ、ステラは見ませんでしたか!?」


「ステラ? いや、見なかったというか、今までルクスと一緒に夕飯を食べてたからな。夕方にルクスと一緒に遊んでたのを知ってるくらいで。一体どうしたって言うんだ?」


「ステラが、ステラが帰ってこないんです!」


ステラの両親は、泣きながらそう叫んだ。


「なんだって! 村の中にはおらんのか!?」


親方が尋ねるが、ステラの両親は首を横に振った。


ステラが帰っていない。その事実に、ルクスは胸の鼓動が速くなった。


(まさか、ステラのやつ!)


「親方、ごめん! 俺、ステラを探してくる!」


親方の、「おい、どこへ行くんだ!」という声を背中に聞きながら、ルクスは走って向かっていった。






 同時刻。村近くの森の中。

ステラは一人、森の中を歩いていた。


「なんだー、モンスターなんていないじゃない。これなら私でも探検できそう! そうだ、この森で野草か何か採っていって、ルクスを驚かせようっと」


ステラは、良いことを思いついたと、笑顔で森の中を進んでいく。


ガサガサガサ


「えっ? な、なに?」


しばらく歩いていくと、目の前の茂みがガサガサと音を立てはじめた。

その茂みから、突然、三匹の狼のような黒い獣、モンスターが姿を現した。


グルルルルル!


「モ、モンスター!? いや! 来ないで! だ、だれか!!」


(ルクス、助けて!)


三匹のうち、一匹がステラに襲い掛かろうとする。

もうダメだ、ステラがそう思ったその時だった。


「このー! ステラから離れろ!」


ステラの前にルクスが現れ、持っていた剣で襲い掛かってきたモンスターに斬りつける。

モンスターは短い鳴き声をあげ、遠くへ飛ばされる。

しかし、キズは浅かったのか、まだ生きていた。


「ルクスー!」


ステラは泣きべそをかきながら、ルクスの名前を呼んだ。


「ステラ、ここに来ちゃダメだって言っただろ?」


「ごめんね、ごめんね」


ステラは涙と鼻水を流しながらルクスに謝る。


「もういいよ。俺も来ちゃったしね」


ルクスがそう言うと、ステラは少し笑顔になった。


グルルルル!


先ほどのモンスターとは別の個体が、近づいてくる。


(これが、モンスターか。三匹もいるけど、剣が当たったから、いけるかな?)


そう思い、ルクスは剣を構えた。


ガウッ!


急に走り出したモンスターが、前足を上げてルクスに襲い掛かる。

ルクスはそれに応戦しようと、剣でその攻撃を受けた。


キーンッ!


軽い金属音が辺りに響く。ルクスの持っていた剣の刀身が横真っ二つに割れ、切っ先が遠くへと飛んでいってしまった。


「そんな! 俺の剣が!」


絶体絶命の状況に陥る二人。三匹のモンスターが、その状況を知ってか知らずか、徐々に二人へと近づいていく。そして、二人の目の前までやって来た。


ガウッ!


三匹が前足を上げて、二人を攻撃しようとした、まさにその時、


轟雷剣(ごうらいけん)!」


一人の男が、手にした剣で三匹のモンスターを同時に突き刺し、遠くへと吹き飛ばす。

三匹は断末魔もあげ、絶命した。

二人は、何が起きたのかわからず、男の方を見る。

短く切り揃えた茶髪の男は、鎧を身に着けた騎士のようだった。よく見ると、王国の紋章が書かれている。

ルクスは男の持つ剣を見た。ビリビリと、どうやら電気を纏っているようだった。


「大丈夫だったか、二人とも? どこか怪我はないか?」


男は剣をしまいながら、優しく二人に尋ねる。


「あ、ありがとうございます!」


ルクスとステラは二人でお礼を述べた。


「ふむ、元気そうだな。怪我もなさそうだ。よかったよかった!」


と、周りからカシャンカシャンと軽い金属音の足音が響いてくる。


「団長、なにやら断末魔が聞こえましたが? って、子供!?」


別の騎士がやって来て、最初にいた騎士、どうやら団長に何があったか尋ねようとし、ルクスとステラに気付いた。


「わたしもびっくりしたが、おそらく近くの村の子供だろう。もうモンスターはいないとは思うが、辺りの巡回を頼む。わたしは、二人を村まで送ってこよう」


「ハッ! 了解しました!」


騎士は、団長に敬礼すると、再び森の奥へと入っていった。


「さて、ここまで来てしまった君たちは、わたしが責任を持って送り届けよう。さぁ、こっちだ」


ルクスとステラは、団長に連れられて、無事に村へと帰った。

二人は、村長や親方、両親にこっぴどく叱られたのだが、叱られながらルクスはこう思っていた。


(あれが、騎士団か。かっこいいな、俺もいつかなりたいな)






8年後。

ウィクトリア王国、王都。騎士団入団式。


「これより、見事試験に合格した、新騎士団員の入団式を行う! 呼ばれたものから前に出るように!」


厳しい試験に合格した、騎士団の新団員達。今年は10人だった。

多くの人々が注目する入団式に、ステラも村から外出して、王都まで見に来ていた。

それはなぜかと言うと……。


「7番、ルクス!」


「はい!」


一人の青年が、名前を呼ばれ前に出る。


「あ、いた! ルクスー!!」


ステラは、見学者の中から、一際大きな声で青年の名前を呼ぶ。

青年はその声に気付き、入団式の最中にも関わらず、その声のした方へ向く。

そして、剣を抜き、ステラへと向けた。


「ステラー! 俺、騎士なったぞ!!」


青年、ルクスは、ステラに負けないほど大きな声で、そうステラに伝えた。

ルクスは、王国の紋章が入った鎧を着ていた。





ルクスヒストリア読み切り版 終わり。

ハイファンタジーが書きたくて、書いてみた作品です。

今回は読み切りです。

いつか連載するかもしれませんが、今のところ未定です。

連載中の「Fランク」と全く世界観が違いますが、こういうのも書ける人なんだなと思ってもらえたら嬉しいです。

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