表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dual Moon Side Story  作者: ヴィセ
4/9

~ 魔剣ムーンライト ~



「うわっ……。お、重い……」


 立てかけてあったムーンライトが弾みで倒れたのを、マージュは必死になって起こそうとしていた。


「そんな事はないと思うが……」


 見かねたラドゥがヒョイと手助けして剣を元に戻す。




「やっぱりラドゥさんは力があるなあ。その点僕はだめですね」と、頭を掻きながらマージュは苦笑いをしていた。


「そうかな。普通の剣と同じぐらいの重さだと思うよ?」


 持ち主であるヴィーザが不思議そうにムーンライトを鞘から抜くと手にとり、軽く振った。


 そうやって居るのを見ると、極普通の剣並みの重さに見える。




「でも持ち上がらなかったぐらい重かったんですよ?」


 マージュは納得がいかない顔である。


「ではこの剣はどうだい?」


 側にあったムーンライト以外の剣をヴィーザは手に取り、マージュに持ってみるよう勧めてみる。




「うーん。ちょっと僕には重いけど、普通に扱えそうです」


 マージュは剣もって構えて見せた。


「マージュ、私にはその剣よりムーンライトの方が軽く感じているんだよ」


「えっ!僕と逆なんですか?」


 ヴィーザの意外な言葉にマージュは驚いていた。


 ラドゥも、「私も剣はあまり扱わないが、ムーンライトは大きさのわりに扱いやすいぞ」とヴィーザと同じ答えだ。


「なぜなんでしょうか……」


 ヴィーザの手にあるムーンライトを眺め考えるマージュ。




「ねえ、マージュ。私にも持たせて」


 傍らで見ていたテュリはマージュの持っていた剣を手渡してもらう。




「何~?これ重いよー!みんなこんなの振り回して平気なの?」


 テュリは剣を持っているのもやっとのようだった。 腰が引けて足元がふら付いている。


「そうだテュリ、ムーンライトを持ってみてよ」


 マージュは何か思ったらしく、テュリにムーンライトを持ってみるよう頼んだ。




「え~、普通の剣であの重さなんでしょ?マージュが持てない剣、私が持てる訳……」


 そう言いながら今度はヴィーザから手渡されたムーンライトを手にしたテュリは、声にならないほど驚いた。




「!?……か……軽いわ……!」




「やっぱり……」


 その言葉を聞いてマージュは何か納得がいったようだった。


「まるで羽で出来た剣を持っているみたい♪」


 テュリは手にした剣を軽々と振って見せた。 本当に重さなど感じさせないみたいだ。


「見て!指一本でも持てちゃうよ~」


 無邪気にはしゃぐテュリ。




「ムーンライトは持つ者の能力に合わせて変化する剣。テュリの身軽なところが反映されて、テュリに剣の重さを感じさせないのかな……」


 ヴィーザは嬉しそうにしているテュリを見てこう判断したようだ。




「やはりそうみたいですね。ムーンライトは“魔剣”だから、人間の僕が持つと重くて持てないんでしょうね」


 マージュも同意する。




「ねえ、こんなに軽い剣でだったら剣技の練習してみようかな?」


 自分で扱える事が嬉しいようでテュリはこんな事を言い出した。


「ヴィーザ、教えて!」


「テュリには弓の方が合っていると思うんだが……?」


 ヴィーザはあまり乗り気ではなさそうだ。




「それにムーンライトがいつも手元にあるとは限らないぞ」


 ラドゥがやんわりと指摘する。


「あっ、そうか。ヴィーザの剣を貰うわけにいかないものね」


 テュリは持っていたムーンライトをヴィーザに返した。


「でも面白そうなんだけどな……?」


 ちらりと上目遣いにヴィーザを見るテュリ。




「………」


 ヴィーザは何も言わず、受け取った剣を鞘に収めている。


「ねえ、ちょっとだけ……!」


「……」


 ヴィーザの答えはなかった。


「……どうしてもダメ?」


「……遊びでやるものじゃないんだよ?」


 そう言うとヴィーザは少し厳しい目でテュリを見やる。


「ちゃんと練習するから……」


 両手を顔の前で合わせ、テュリは必死にお願い、と繰り返していた。




「ふぅ……まあ、覚えておいて損はないからね。今度少しだけ、だよ」


 とうとう根負けしてヴィーザは約束させられた。




「やったー!」


 テュリは喜び、飛び跳ねると勢いよくヴィーザに抱きついた。




 首に思いっきり抱きつかれたヴィーザは「テュリ!く、苦しいよ!」と苦笑いしている。


「だって嬉しいんだもん♪」



「ヴィーザさんはテュリに甘いですね」


「本当だ」


 マージュとラドゥはそんな2人見て、クスクスと笑い出した。




~ 魔剣ムーンライト ~

 ― Fin ―

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ