プロローグ ~独りよがりな言葉は、嘘~
独りよがりだ、と僕は囁いた。彼女は僕の前で告白を終えると、すぐに微笑んで、小さくうなずいてみせた。
「これが独りよがりだとは私もわかっているわよ。でも、私は君にこの想いを伝えなくちゃいけないの」
彼女はそう言って僕の腕を骨が軋むほどに強く握った。僕は拳を握って唇を噛み、何か叫び出したいのを必死に堪えながら、彼女の宣告を聞いた。
「今の言葉はすべて私のエゴによるものなの。でもね――」
君にとってもそれは××なことよね?
彼女はその言葉を僕の胸に突きつけると、唇の端を吊り上げて大きな笑い声を零した。その心を切り裂く高い声が響き続けるうちに、僕の感情は激しく揺さぶられて膝をついてしまう。
「僕が本当に……××になればいいの?」
僕が震えながらそう言葉を絞り出すと、彼女は「そうよ」と確かにつぶやいた。
そうして僕らの間には血塗られた罪の鎖が繋がって、幾重にも巻き付いて心臓を突き刺した。それは僕らがその関係を断った時、心臓を破裂させる凶悪な刃だった。
それでも僕は彼女の言葉に従うことしかできなかった。それが僕にできることの全てで、彼女はそれを見越して僕を奈落の底へと突き落としたのだろう。
闇の中に僕らは落ち、最後には破滅が待っていた。でも、“彼”がその運命を変えてみせたのだ。