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番外 あまのはし家の食卓

本編にしようと思ったけど

読み返して本編じゃねぇってなったので今回は番外編です

「ただいま〜」

「おかえりにいちゃん、遅かったね」

うちに帰ると妹、サキが出迎えてくれた。ピンクのエプロン姿で居間の方から顔を出した。

「おう、ちょっと色々あってな。ところでなんでエプロン?料理してんの?」

「うん、ママ帰りが遅くなるって言ってたからね。」

「おお、偉いなサキ。先の料理はうまいから楽しみだ」

そう言ってカケルが妹の頭をなでてやると、サキは嬉しそうに笑う。

「今日のメニューはハンバーグだよ。あと焼くだけだから、手洗って待ってて!」

そう言って妹は居間の方へ戻っていく。キッチンは居間とつながっている。カケルは二階の自室へ入った。そしてカバンからベースの運指表を取り出す。どこをどう押さえればどんな音が出るかをイメージしているのだ。

「やっぱ持って帰ってこれば良かったな」

カケルは家族にいきなり部活に入ったことを知られると気恥ずかしいのでベースを持って帰ってこなかった。しかし帰り際にツボミに言われたことを思い出すと、ふつふつとやる気が湧いてくるのだ。そして今はベースを握りたくて仕方がない。

カケルは練習曲やそれ以外の譜面を見ながら曲をイメージしようとした。しかし満足に楽譜が読めるわけでもないのでまだ難しい。そこでカケルは中学の時使っていたリコーダーを引っ張り出してきた。頑張って楽譜を読みながらドレミを書き込んでいく。ヘ音記号には慣れていないので読むのは大変だった。なんとか短い練習曲に音階を書き込み、リコーダーで吹きはじめる。曲のだいたいのイメージを固めたら次はどんなふうに指を動かすかを運指表を見ながらイメージする。そんなことを繰り返していた。すると部屋に誰かが飛び込んできて…

「おいクソ兄貴!さっきから呼んでんだろ!さっさと降りてこいよ!」

この生意気なのはカケルの弟、ハヤテだ。中学2年生でサキとは双子だ。そのため顔は似ている、しかし性格は全然似ていない。

「おっと悪いな、すぐ行くよ」

「ん?何やってんだ?リコーダーなんか出して」

カケルは反射的に楽譜を隠す。

「いや、別になんでもない。ちょっと音楽の授業で使うからさ」

「まあいいけどよ。早くこねぇーとサキが拗ねるぞ」

そう言ってハヤテは部屋から出ていく。ふぅ、と一息ついてカケルは落ち着きを取り戻す。

「あー、なんで隠しちゃったかな」

どうも部活を始めると言うのを躊躇ってしまうカケルだった。サッカー部とかだっだらまあ隠さないかもしれない。しかし全くやったことのない音楽を突然やるなんて言い出したら、何を言われるか分かったものではない。だからしばらく黙っていようかと思ったのだ。しかし実際隠すと居心地が悪かったのだ。

「ふー、飯にするか」

カケルは色々考えながら一階へと降りていった。


兄弟水入らず、3人で団欒しながら食事をしている。

「このハンバーグうま!一体牛挽肉に何が起こったんだ!」

「にいちゃん、ちょっとオーバーよ。でもありがとう」

「まあ普通だな、本気出せば俺の方が100倍うまい」

「ハヤテはもう食べなくていいからね、そう言うと思ってお肉残しといたよ」

「ごめんなさい」

夕飯時になると妹サキはうちの兄弟の中で最強の地位になる。両親が忙しいので彼女が夕飯を担当しているのだ。昔は母が作り置きして言ったものを温めて食べていたから今ではとてもありがたい。

「2人とも最近部活の調子はどうだ?」

不意に2人に部活のことが聞きたくなった。カケル自信が部活を始めたからだろう。

「あー、まあまあ」

「ハヤテはいつもまあまあよね」

「まあまあでも十分つえーからいいじゃん」

「うちの部活の中ではでしょ」

「そう言うお前はどうなんだよ」

「そりゃまあ絶好調」

彼らは中学の剣道部に入っている。もともと道場に通っていた2人は中々の実力者だ。特にサキはと言えばこの間の大会で地方大会にコマを進めるている。多分ハヤテよりサキの方が強い。というかパワーバランス的に圧倒的にサキが強い。ハヤテは中学2年生だが未だ声変わりもしておらず身長も伸びていない。強いと言っても体格差やパワーをどうにかできるほどではないのだ。対するサキはテクニックや駆け引きが群を抜いてるらしい。

「くっ、もう少ししたらお前なんか敵じゃなくなるっての!」

「はいはい、去年から聞いてる」

「本当にもう少しだからな!」

この2人のやりとりは見ていると非常に愉快だ。声も背格好も顔もそっくりなので鏡と喧嘩している人を見ているようだ。しかしあまり長いこと見物しているとヒートアップしてくるので適当に止める。

「まあまあ落ち着け、ほら俺も背伸びたし、そのうち伸びるから安心しな」

「ソウネ、ノビルノビル」

「サキ!テメー!アニキも!誰も身長のこと言ってないだろ!」

残念ながらカケルはうまくなだめられず、逆に油を投下したようだった。その後多少時間はかかったもののハヤテを落ち着かせる。

「そういえば兄ちゃん、昨日も帰り遅かったけど何してたの?」

「ん、まあ友達付き合いでいろいろ…」

すると2人が揃って立ち上がる。

「バカな、アニキに友達だって…」

「まさか、本当に…本当なの!」

ハヤテは信じられないといった表情。サキはなんだかすごく嬉しそうな表情だ。カケルからしてみれば中々失礼な話だろう。

「ちょっと待て、俺はいつの間に友達いないポジになってたんだ」

「えっ、だって中学入ってから友達って言葉を一言も聞いたことなかったし」

「一匹狼だったってすごい噂あったし」

確かにあの時期のカケルはそうだったがそれ以前は結構友達はいた。というかそんなことはかなり昔のことで高校入ってからは結構頑張っている気がしていたが…

(友達友達、やばい、三上しか出てこないんだけど、俺の友達あれだけ?嫌だわ〜、いっそまた

一匹狼になりたい)

「兄ちゃん、私嬉しいよ。今度うちに連れてきてねその友達、私おもてなしするから」

「おい、なんで泣いてんだお前」

「だってぇ〜」

いつの間にかサキはカケルの保護者気分になっていたようだ。2つ下の娘にここまで心配かけるとは情けない。

「うーん、それって本当に友達?」

「なんだ、なんでそんなこと?」

「アニキの部屋行った時なんか隠したじゃん」

「えっ?いやそれは」

カケルが言葉に詰まったとき、ハヤテは頭を高速回転させていた。カケルも言い訳を必死に考えていた。弟が入ってきたら隠す、言いづらいもの。その答えは…

「あっ、まさか!え…」

「待てハヤテ、それ以上は言うな。お前の想像してるようなものじゃない!」

「またまた〜、そんなに慌ててると余計怪しいぜ?」

2人はほぼ同時に同じ答えにたどり着いた。しかし自分で言い訳に使うわけにはいかないし、ハヤテにも妹の前で言われたくはない。あらぬ誤解を招く。だからこそ弟を止めた。

「二人ともなんの話してるの?」

「いや、なんでもない。ハヤテの勘違いだ」

「勘違いじゃないと思うぜ、多分兄貴の部屋にはエ…」

「ちげーって言ってんだろうがぁ!」

カケルは急いでテーブルの反対に座っていたハヤテの口を手で塞ぐ。

「ちょっ、悪かったって分かったから!違うんだな!」

「ああ、違う、あれじゃない」

しばらくして2人は落ちいた。それまでの間にサキは夕飯を食べ終わり考えていた。そしてちょうど2人が落ち着いたとき何かを思いあたったようだ。

そして急に冷たい声を兄に浴びせる。

「お兄ちゃん…」

「ん?どうしたサキ?」

「今度お母さんにお兄ちゃんのベッドの下に埃が溜まってるみたいだから掃除しといてって言っておくから…」

これは完全に誤解されてしまった。このままではまずいとカケルはあせる。かわいい妹に変態扱いされてしまう。

「いや、埃なんか溜まってないからな、何か誤解してないか?落ち着けよ」

「…落ち着いてるよ、私は。ごちそうさま。部屋で宿題やってくるから洗い物お願いね…」

そう言って兄を一瞥しながらサキはゆっくりと居間を出ていく。カケルは必死に誤解を解こうと呼び止める。

「まて、待ってくれ!誤解だから!お願いだからそんな目で俺を見ないでくれー!」

しかしその訴えは届かず無情にもドアは閉まる。

「あー、ドンマイ兄貴」

(この弟絶対ゆるさねぇ!)


この後しばらくサキはカケルと口を聞いてくれなかった。この誤解が解けカケルが部活のことを打ち明けるのはしばらく先のことだ。







放置していた兄妹、ハヤテとサキ登場です

本編にはどう絡ませるかと試行中です

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