目覚めた後に見た夢は
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「あんた、死んでたのよ」
「はっ?」
年配の看護師が幼馴染をなだめたあと、事情を説明してもらうことになったのだが、彼に向けられた最初の言葉がそれだった。
ことの始まりは今日の昼間、彼が街を歩いている時だった。突然彼は倒れた。人の多い街中だったので然倒れ、早々に救急車を呼ばれた。にも関わらず救急車がたどり着いた時にはすでに彼は死んでいた。
それから大会で遠くに行っていた兄弟と両親に連絡が行き、たどり着くまでに時間がかかるがいてもたってもいられなくなった母が、仲のいいお隣さんに電話をした。それを聞いたそこの家の奥さんが今度は幼馴染で今は疎遠の少女、にも連絡。で、その子がデート中にも関わらず相手をほったらかしてここに来た。その彼女が今ここで力なくいきさつを語る少女である。この病院はこのあたりで唯一まともにデートスポットがある市街地にある。病院に一番近かったのが彼女だったのだ。
「で、到着寸前に俺が目を覚ましたわけですね」
「そういうことになるね」
医師が来る前に看護師のおばちゃんと幼馴染にここまでのいきさつを説明してもらった。
彼は今までの人々の反応や、やけに落ち着かない精神状態になっていたことからそう言われて妙に納得した。しかしそれは一瞬のこと。
「そんな馬鹿な」
それが彼の正直な感想である。
「本当、馬鹿みたいな話ねぇ。笑っちゃうわ、生き返ったからだけど」
看護師はそう言った。彼女もソワソワした感じだ。突然死んだ少年が突然生き返ったとなると珍しい事例なのだろう。
「おれ的にはあんまり笑えないすけどね」
あはは、と愛想笑いをしながら彼は看護師と話していた。そんな軽い感じの彼を少女が睨みつける。彼は視線をうけて再び表情がこわばった。
「さて、じゃあ先生を呼んでくるわね。生き返ったからって調子に乗っちゃダメよ。安静にしてなさい。あとそこの女の子も、あまり彼を興奮させないでようにね」
それはセクハラでしょうか。違いますね、すみません。
「そんな元気はないですよ。これでも元死人ですから」
そんな事をぽろっと言ってしまった彼を、少女は再び睨む。彼は額から汗が垂れるのを感じただろう。
(そんな睨むなよ、死んだ実感ないんだよ、つい言っちゃうじゃん、そういうの)
周りがどれだけ心配しようとも、死んだ実感のない少年だった。
「原因不明の不審死です」
それが医師から彼に告げられた言葉だ。
「いや、おれ生きてるんですけど」
そう言った彼の頭がピシャッと叩かれた。彼は頭を押さえながら叩いた相手を見たが、叩いた相手もついやっちゃった的な表情でオロオロしているところをみて、毒気を抜かれた。
「そうですね、心肺停止からの蘇生は稀に起こることですが、1時間も心肺停止していたのにこれだけ元気とは…」
医師の驚愕の表情に、ははは、と少年が笑って返す。どうやら余計なことは言わないようにしたらしい。
「なんにしろ一度精密検査を受けてもらいます。後遺症の心配もありますし、しばらくは検査入院をしてください。そしてくれぐれも安静にしているように」
そう言って医師は病室から出ていった。彼の両親はといえばなんだかよくわからないけど医師にお礼を言いまくっていた。彼をはたいた彼の弟は呆れ顔をしている。心配して損したと言いたげな表情だ。しかし目はしっかり赤い。病室に入ってして彼の平気そうな顔を見るなりどこかへ飛び出していったのは、まあそういうことなのだろう。
彼の妹はまだ心配そうに見つめている。さっきまで死んでいたとか言われたら心配にもなるだろう。
「なんかよくわかんないけど、心配かけたみたいだね」
ようやく少年は言葉を発した。家族は皆少年を見る。
「心配したわ、でもよかったわ!」
「うんうん、そうだ。向こうで連絡受けた時は青ざめたよ」
父と母は安心した笑顔でそう語る。
対する兄弟たちは…
「あーあ、せっかく優勝目前だったのによ!
お前のせいで棄権してきちゃったじゃん」
「あんたそうそうに負けてたでしょ。兄ちゃん?大丈夫?悪いところないの?」
この兄妹は双子だ。よく似た顔を並べて語りかけてくる。大会に4人で行っていた。それを途中で抜けてきたのだった。
「ああ、大丈夫だ。心配かけた。悪かったな」
「別に心配なんてしてねーし」
「嘘、誰よりも慌てて他でしょ?」
「お前が言うな!」
声変わりもまだな弟とその双子の妹の声だけ聞いているとなんだか一人芝居しているようでほほえましい。少年も優しく見つめる。こうしてこの2人はいつも喧嘩を始めるのだ。
「今日こそどっちが上か教えてやる!」
「上等、部活も頭脳も喧嘩も私に敵わないって思い知らせてあげる」
「おーい、2人とも、病室では静かに。怖い看護師のおばちゃんが来ちゃうぞ」
少年は不思議な感覚を覚えた。いつもならうるさいとしか思わないこの2人の喧嘩も、今ではとても愛おしい。昨日、いや今日の朝も見たはずの光景だった。それでも彼にはとても懐かしいことのように感じた。
(やっぱ、気づかないうちに死んだショックみたいなものを受けていたのかな?起きた時も変な感覚だったし)
今の彼はそんな風に受け止めていたのだった。
夜、俺は今1人だ。騒いでいた家族も1番に駆けつけて最終的になんか怒っていた幼馴染も帰っていき、夜の病室に1人取り残された。
「無事と分かったらこれだぜ、まあいいけど、ちやほやされたいわけじゃないし」
少年は愚痴をこぼす。昼間賑やかだっただけあって病院で1人とはなんとも心細い。
(とはいえ、あんまりちやほやされても気持ち悪いよな。俺からしてみればちやほやされる理由なんてないようなもんだ)
普段家族は高校生となった彼のことは放置しがちだ。手のかかる兄妹たちがいるし、だから急に家族に目を掛けられてもくすぐったいというかなんとも言えない感じを味わっているのだ。
しかし彼の中には今日くらい、という感情もあるのだ。
(1人ってこんな気持ちだったっけ…)
遠い昔、いや、それほど遠くもない過去の話。一人の孤独な少年がいた。周りの全てが煩わしくて自分から寄ってくるものをはねつけた。持っている感情が善か悪かも関係なく。そんな風に思い通りに生きていたのに、すっかり心にモヤモヤしたものが張り付いていた時期があったのだ。
(もう5年も前か…)
少年が孤独だったのはもはやそれほど前のこと。
中学に上がったばかりの頃だった。
(あれ?おれ今高1だから…3年だわ、3年前だ)
少年はやはり疲れているのかもしれない。小学生も間違えなさそうな計算ミスをした。
(もう夜も遅いし、寝るか)
少年はベッドを倒す。そしてゆっくりと目を閉じた。
闇の中に広がっていたのは見事な星空だった。その下で火を灯し、4人の少年少女が語り合う。彼らは実に生き生きとしていた。もう夜遅いというのに中々騒ぐのをやめない。明日も早いぞ、少年はそう語りかけるも4人とも中々寝付こうとしない。逆に1人の少女は彼に手を差し伸べた。暖かな光に照らされた彼女の髪と目は夜の闇と星よりも綺麗だった。呆れるようにため息をつくも、少年はその手を取り、他の3人の元へ向かう。
これは彼の夢だ。なぜこんな夢を見たのかは分からない。ただ彼は心の底から幸せな時間を過ごしていたに違いない。
「ショウ…大好き」
朝起きても手を差し伸べてきた少女の笑顔はしっかり覚えていた。
少しずつ書きたいです
短く話をまとめる練習も兼ねて
本当は短編が読み切りが書きたいけど
話をつくる技量がない