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回想2 新しい1年

更新遅れました

今週なんだか忙しいです

頑張って毎日更新を目指していたんですが…

ということで更新頻度を2日に一回くらいを目標に頑張っていきたいと思います

あれから2度目の春が訪れた。今日は入学式だ。私たちは中学生になる。

「おかあさん、早くして」

「はいはい待って、そんなに急がなくても大丈夫よ」

「いやいや、結構ギリギリだから!」

相変わらず能天気な母を急かしつつ私、土御門 蕾は家を出る。わざわざ早く起きたというのにまさかの母が寝坊。本当に困ったものだ。新しい制服に身を包み家の外に出る。澄んだ空気が気持ちいい。

「カケル!早くしなさい。入学式遅れるわよ!」

「そんなに焦らなくても大丈夫だって!走れば余裕だし」

「走らないから言ってるんでしょう!」

なにこれ、さっき見た。隣の家では私たちの行動と同じことが行われていた、役割が逆だけど。

私は隣の家に目を向けた。その時に彼の母と、ちょうど彼が出てきた。学ランを着ている。サイズは少し大きめだ。彼の身長はこの一年ちょっとで結構伸びた。私も伸びたが、それより伸びた。

身長に差ができ始めた。私の目線が、彼の肩くらいの位置にある。まだ伸びそうという理由で、学ランは少し大きめのものにしたらしい。

(学ランってもうちょっとかっこいいものかと思った)

私は残念に思いながらも、安心していた。もう少し服のサイズが小さかったら、かなり似合っていたのではないか。そうしたら多分普通に話せない。

「おはようございます〜、今日から改めてよろしくお願いしますね〜」

「あ、土御門さん。こちらこそよろしくお願いします」

母たちはお互いの存在に気がつき、挨拶をする。実は示し合わせて一緒に行くことにしていたのではない。偶然時間があったのだ。おかげで中学最初の登校は彼と一緒にできることになった。

「おはよ」

「ん、おはよう」

「制服、大きいね」

「だろう、成長期だからな」

「もう結構伸びたじゃん、本当に伸びるの?」

「いやいや、まだ伸びるよ」

話が終わる。何かを期待して制服の話題を出したが、そんなことを彼に期待してもダメだった。

それから登校中それとなくアピールしたが、結局何の反応もなかった。

(制服、褒めて欲しかった…)


中学にたどり着いた。小学校よりも遠い、距離が倍くらいある。母達と別れ、私たちは自分のクラスを確認する。校庭で係の先生が立っていてクラスわけのプリントを配っていた。そのプリントをもらい、自分のクラスの人が並んでいる場所に向かうのだ。

私たちのクラスは

「あ、クラス違うじゃん」

「本当だ…」

私たちは初めてクラスが分かれた。幼、小と9年離れたことなかったのに。小学校から中学に上がるときは仲のいい人は一緒のクラスになる確率が高いと聞いたのに。

「残念だったな、まあしゃあない。じゃあ行くわ」

「うん、また後で」

私は落ち込みながら列に向かう。するとそこには私の友人がいた。小1のとき出席番号が近く仲良くなった英子だ。今回も連番だった。なんだかニヤニヤしている。何か言いたげだ。

「なによ…」

「残念だったね、分かれちゃって」

「…」

「イタイ!」

私は無言で友人を小突く。私は彼女が謝るまで小突き続けたのだった。


入学からしばらくたった。何人か新しい友人もできたそんな頃。

「ねえ、部活決めた?」

みんなの最近の話題はそれだ。先日から体験入部が始まり、皆自分の青春の賭けどころを探している。

「うーん、まだ考えてないな」

私はというとまだ決めていない、というか入るかどうかすら決めていない。小学校でも帰宅部だったし、特にやりたいことがあるかと言われるとそうでもない。

「はあ、ツボミ、あなたはそうやって枯れた青春を過ごすつもり?」

「別にそういうわけじゃないけど」

「ふっふっふっ、あなたにオススメの部活があるわよ」

「なによ」

英子が不敵な笑みを浮かべながら話しかけてきた。

「サッカー部の、マネージャーなんていかがかしら?」

「興味ない」

「本当に?」

「汗臭い奴らの世話なんてしたくないわ」

「カケルくんがいても?」

「ちょっ!」

「えっ!誰?それもしかしてツボミの…」

「土御門さんまさか」

「ちがうから!なに考えてるか知らないけど、多分そういうのじゃないから!」

私は慌てて否定する。また小学校の時みたいなのは勘弁してほしい。まあ、別にそんなに悪い気もしないけど…いや、やっぱりない。しかし英子は止まらない。

「カケルくんっていうのはうちらと同じ小学校の男子なんだけどね。ツボミの隣の家に住んでて、すごい仲がいいの。入学式の時も一緒にき…」

「英子!もうやめて、勘弁して!」

「まさかツボミ、早くもそんな…」

「土御門さん、うらやましい」

「間に受けないで!違うから、本当になんでもないんだって!」

「小学校の時のこの子ら、なんて呼ばれたと思う?夫婦漫才だの、公認カップルだのそんなかんじよ」

「英子!お願いだから本当に止めて!!」

必死の説得の末、この話はあまり広がらなくて済んだ。せいぜい私の内輪だ。ちなみに後から知ったことだが、うちの中学では特殊な場合を除いて運動部にマネージャーは存在しない。調べたわけじゃない。たまたま知っただけだ。本当にたまたまだから。


風の噂で聞いたことだが、カケルはすでにクラスで中心的な人物になったようだ。さすがに人とのまともな付き合い方を覚えたようで、小学校の時のように強引なやり方ではなく、かなり自然にそうなっていたらしい。運動ができ明るい性格、すでに別の小学校から上がってきた女子の間で話題になり始めているらしい。と、英子に聞かされた。さすがは自称情報通だ。

「だからツボミ、逃さないように気をつけなさいよ」

「逃すって、そもそもそういうんじゃないし」

「で、サッカー部入ったって。小学校の時からだからまあ普通の流れね。でも部内でも話題みたいよ。すごい1年が入ってきたって」

「ふーん」

「うっわー、興味なさげ」

興味がないわけではない。私にとって彼が部活に入るということは色々私には不都合だ。

「サッカー部は朝練があるから一緒に登校できなくなって残念ね、あと暗くなるまで部活やるから文化部だと下校も会わなくなるし、クラスは離れたから本格的に会えなくなるじゃない。どうすんの?」

「ど、どうもしない」

「はあ、どうしてこの2人はここまで進展しないのかしら。私もう何年頭を悩ませていることやら」

大袈裟にため息をつきながら英子は呆れたという視線を向けてくる。

「はいはい、悩まなくていいから。あといちいち私の話を広げないで」

英子は情報通である。逆に言えばそれだけ情報のリーク先を持っているということだ。それを悪用し、私と彼の関係が校内に広がりつつある。

「だってさ、私が何年も見守ってきたあんたらの関係がぽっと出の誰かのせいでめちゃめちゃになったら悲しいでしょ?だからあんたの存在を忘れ知らしめておこうと思ったの」

「思ったのじゃない、そのせいで最近一部女子からの視線がきついのよ」

ごっめーんと、全く反省の色のない英子の謝罪を聞き、ムカついたので頭を軽く小突いた。

英子が私に抗議してきたその時だ。

「姉ちゃーん!」

後方から元気よく私を姉ちゃんと呼ぶ声がする。なぜ私かとわかったかというと聞きなれた声だからだ。

「サキちゃん!」

私は振り返ってサキちゃんに手を振る。サキちゃんは道着を着て、長い袋を持っている。そしてサキちゃんは私に抱きついてきた。こうしてみると2つしか違わないのにずいぶん年下のように見える。

「ツボミ姉ちゃん、久しぶりだね」

「中学入ってからあんまり会えてなかったから」

「おお、カケルくんの妹ちゃんか」

「あ、英子さんだ。久しぶりですね」

「私には敬語か、可愛くお姉ちゃんって呼ばれたい!」

「あんた、たまに変態になるわね」

英子とサキちゃんは面識があった。以前英子が私の家に遊びに来ていた時にサキちゃんがうちに来て、そのまま3人で遊んだのだ。

「私が姉ちゃんって呼ぶのはツボミ姉ちゃんだけです」

「おっ、その心は?」

「いつかちゃんと義姉になってもらおうと思って」

「サキちゃん!この人にそういうこと言わないで!」

「ほっほう、まさか妹公認。これはいいニュースが書けそうだ!」

「あんたまさか新聞部入る気!やめてよ!私のプライバシーを保護してよ!」

何としても英子が新聞部に入るのだけは阻止しなければと思った。

その後英子と別れ、サキちゃんと2人で歩いていた。サキちゃんは道場の帰りだったらしい。一緒に行ったハヤテくんは居残りさせられているらしい。

「サキちゃん偉いね。もう料理とかやってるんだ」

「お母さんもお父さんも、お兄ちゃんも忙しそうだから、私が頑張らないとね」

しっかりした子だ。そして健気だ。本当に愛おしい。小学校高学年になり、ようやくちょっとした料理をさせてもらえるようになったらしく、日々練習中だという。

「なんなら毎日うちに来てくれてもいいのよ。お母さん喜ぶだろうし」

うちの母は能天気な人だ。おそらく本当に毎日でも喜んで夕食くらい出すだろう。実際たまに母がうちに天橋兄弟達を夕食に呼んでいる。というか毎日今日は呼ぼうかしら、とか言っている。両親共働きの彼らのことを気にしているようだ。

「さすがに毎日は悪いよ」

「ふふっ、普通はそういうよね」

母は気にしないだろうが呼ばれる方は気を使う。実際たまにカケルの母がうちにお礼を言いに来る。バリバリのキャリアウーマンの彼女とほんわかとしたうちの専業主婦の母があれだけ仲がいいのが不思議でたまらない。

「…姉ちゃんさ、部活とか入るの?」

サキちゃんはなんでもないように聞いてきた。しかし表情が硬い。たぶん何か気を使っているのだろう。

「私は、うーん、たぶん入る」

サキちゃんには正直に言っておこう。適当に誤魔化しても後々言わなきゃいけない。サキちゃんはよくうちに遊びにきていた。しかし私が部活に入るとそうはいかなくなる。だから部活に入るか気にしたのだろう。

「何部に入るの?」

「うーん、いくつか候補はあるんだけど」

サキちゃんと家の前にたどり着いてもしばらく立ち話を続けた。サキちゃんにやたらと剣道部を押されたが、私にはちょっと無理だ。

「それじゃあツボミ姉ちゃん!またね」

「うん、またね!」

そう言って各々自分の家に入っていく。

「姉ちゃん!」

しかし入る前にサキちゃんは私を呼び止めた。

そして一瞬迷った様子を見せたが、一言告げた。

「軽音部がカッコいいと思うよ」

そう言って優しく微笑んで、手を振って自宅の玄関へ入っていった。その笑顔の中に、少し寂しさを感じたのは気のせいだろうか。真意はどうあれ、私は少し寂しくなった。しかし私は決断した。


そして正式入部の日

「ようこそみなさん、軽音楽部へ!」

部長の挨拶が始まる。決起私は軽音楽部へ入ることにした。テレビで観たガールズバンドがカッコよかったからだ。カッコいいものは真似する、小学生の時がまだ抜けきっていないようだ。結構な人数の新入部員がいた。軽音部は文化部の中でも花形だ。1番大きいのが吹奏楽部があり、その次に大きいのがここだ。男女比は半々くらい、文化部にしては珍しいかもしれない。

音楽初心者の私はパートの説明を受けてもよくわからなかった。しばらくは先輩たちの練習を観たり、教えてもらったりしながらパートを決めていくことになる。パートが決まればあとは勝手にバンドを結成してそれぞれ練習という流れだ。

私は今先輩のボーカル講座にでている。ここでボーカルの何とやらを学びながら、実際に発声練習したり、歌ってみたりするのだ。

「へー、あなた綺麗な声してるわね」

私は先輩にそう言われた。

「そんな、えっと、ありがとうございます」

「何か歌とかやってたの?」

「いや、特に何も」

「へー、ということは才能かな。あなた、ボーカルにしなさい。それが向いているわ」

「えっ!」

こうして私はボーカルになった。そしてバンドは去年の卒業生が抜けてボーカル不在になった、ボーカル講座をしていた先輩のバンドにスカウトされた。


しばらく経って中間試験が終わった頃。新聞部に入った英子が色々と記事を書こうとしている。

「今回は特集記事、各部で話題の新入部員よ!」

「で、なんで私のところに来たの?」

「あんたすっかり軽音部では話題よ。天性の声の質で部内最強のガールズバンドのボーカルにスカウトされた1年生って」

いつの間にそんなことになっていたのだろう。確かに先輩たちはすごくうまいと思っていたが。

「ちょっと、取材なんて受けないわよ。だいたい何よその企画。悪目立ちしちゃうじゃない」

「まあ元々私のための企画だからね、新聞部の話題の新入部員の特集記事だから」

「あんたもそういう位置付けなのね」

話を聞くに新聞部に入部した英子は早々に頭角を現し、特集記事を任されたらしい。そこで同じように部活動で話題になっている新入部員の取材を行うことにしたらしい。

「カケルくんにも取材してきたよ。1年で早くもレギュラー入りしたって。しかもイケメンで女子生徒の中で話題になり、中間の成績も上位。今回のメインに決まりね」

彼もいつの間にやら凄いことになっていたらしい。中学に上がってから入学式と、うちに食事に来るとき以外ろくに話していないからあんまり色々聞けてない。

「異性に話題といえばあんたもよ」

「え!」

「あんたはニブチンだから知らないかもしれないけど、男子に人気あるのよ、ってカケルくんにも言っといた」

「何余計なこと言ってるの!」

私の追求を英子は大笑いしながらかわす。

「だからぜひね、私の特集記事にツボミも載ってほしいの。私たちは親友でしょ?」

私の親友はなぜこんなのなのだろうと思ってしまう。なんだかんだ文句を言いながら、私はインタビューに応じた。


「ツボミ、前より声量が上がったな」

「うん、音程も前より聴けてるじゃないか」

「ありがとうございます」

先輩たちの練習をしていた。季節は6月中旬。雨が降り続けるこのジメジメした時期。最近歌を歌っているとジメジメした気持ちも吹き飛ぶようになった。最初はカッコよさそうってだけで始めた部活だったけれど、最近はすっかりハマっている。今は夏休みに行われるスーパーでの学生による演奏という企画のための練習中だ。

「しかしツボミの声は本当に綺麗だな。先輩が居なくなってどうしようかと思っていたが、これでしばらく安心だな」

「そんな、大したことないですよ」

私はここまで直球で褒められると恥ずかしくなってしまった。昔から何かに打ち込んだことのなかった私は、褒められることに耐性がない。

「あとはその少し照れ性なところをなんとかすれば立派なボーカルになるぞ」

そんなとりとめもないことを話している時に、事件は起こる。ドタドタと廊下を誰かが廊下を走る音がする。

そして私たちの使っている教室のドアが開き…

「ツボミ!大変!」

入ってきたのは英子だった。今までになく慌てている。額に汗をかき、大スクープでもつかんだのかと思った。しかし事件は事件のようだが、面白がる様子がない。

「何、どうしたの?」

「カケルくんが!」

その他とすぐ私は部室を飛び出した。

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