夢から覚めて…
新しく始めました
前のやつも頑張って進めたいです
終わらせてからにしろって?
無茶言わないで…
白い病室の中に窓から明るい光が差している。
部屋には1人の少年の家が眠っている。つい先ほど、長い眠りについたのだ。その顔からは一切の苦痛も苦しみも、安らぎも感じられなかった。
大切なものが抜け落ちてしまったような、無表情そのものだった。彼は旅立ったのだ。ここではない世界へ。
「…ん」
旅立ったのだ…
「……ふぁ」
ここではない世界…夢の世界へ…。
そして少年は目を開く。奇跡だ、奇跡が起きたのだ。二度と目覚めないと思われた少年は、この世界へと帰還したのだった。
「ん〜、よく寝たぁ。…あれ、知らない天井だ」
少年は体を起こし背筋を伸ばした。今度は窓の外を眺める。その少年の頬に一筋、熱いものが伝っていく。
「あれ…なんでだ、俺は寝てただけだぞ。…なんでこんな…」
光の粒が、ゆっくりと落ちていく。彼はただ外を見ているだけだった。その眼差しは故郷を見るように優しかった。しかし表情は一握りの悲しみを内包していた。
しばらくして彼は落ち着きを取り戻した。
「なんでだろうな、情緒不安定だ。ここで寝てることに関係があるのかな」
窓から目を離し、目を擦った。目は赤くにじんでいた。
「またな…」
ふっと言葉が漏れ出た。誰に向けたものだったかはわからない。きっと彼にも分かっていないだろう。ただその言葉のあと、彼の中の寂寥が少し増したようだった。
少年はベッドの背を起こし、虚空を見つめる。
何かを失ったような目だった。
一時の静寂が流れる。彼の他に誰もここにはいなかった。この静寂が永久に続くかと思うほど静かだった。
しかし、すぐに状況は一変した。廊下にカツカツという音が響いた。音はどんどん大きくなり、最後に最も大きな音が響く。部屋のドアが勢いよく開く。そこに立っていたのは1人の少女だった。歳は少年と同じくらいだろう。息を切らしてここにやってきた。よそ行きの綺麗な服装も乱している。少女は部屋の奥に目を向け、視界に少年を捉えると、顔まで歪ませた。その後ゆっくりと少年に近づいていく。
「えっ、あの、どうしたんだよ」
少年と少女は面識があった。しかし普段の彼女からは想像もつかない反応だったようだ。
「どうしたじゃないわよ!」
顔を歪めながら迫ってくる彼女はそれはそれは恐ろしかった。少年は完全に気圧され、何か話す余裕もなかった。
「あんた…なんで私が今ここにいると思ってんの!
たまたま近くにいたからよ!なんでこんないい格好してると思ってんの!デート中だったのよ!」
「は、はぁ」
「はぁ、じゃない!」
「はい!!」
彼女にどなられ、彼は完全にビビっていた。しかし彼女の目から涙が今にも溢れそうになっているのをみて、強張っていた顔から少し力が抜けた。
「なのに、あんな連絡来るから…来ちゃったじゃない…どうしてくれんのよ…。ていうか!全然ピンピンしてるじゃない!」
いつの間にか彼女の手が少年の肩を掴んでいた。そして彼女の目は真っ直ぐ彼を睨んでいた。何かをこらえたような目は真っ赤になっていた。
「どれだけ…どれだけ心配したと思ってんのよーーーーー!!!」
これが彼女の一番言いたかったことだったのだろう。それを吐き出すと、感情の制御が効かなくなったのか、彼に寄りかかりながら子供のように泣き始めた。彼がここにいるのにはそれほどの理由があったのだ。
しかし…まあ、さっきまで寝ていた程度の感覚しかない彼はというと…。
(え?どういうこと?なんでこいつこんなボロ泣きしてんの?ていうかこれまだ1…)
非常に現実的なところまで向き合いかけた結果、彼はようやく現状を把握する必要があると悟った。
「ちょっ、まって!落ち着いて!何があった!俺が寝てる間に何があった!!」
ある程度大きな声で語りかけたが、彼女はまだ泣き続けている。
(誰か…現状を説明して…)
彼が現状を知ったのは、この騒ぎを聞きつけた看護師が病室にやってきてからだった。
「ちょっと、病院では走らない!あと叫ばない!」
あんたもな。
「あんた、死んでたのよ」
「は?」
彼がそんなふざけた事実を聞くのは、もう少し先の話だ。
また今度




