一話 「一人の少年」
※大幅に改訂しました。
聞こえる。周りから様々な音が。
人々の悲鳴や、狂気の声。
僕はその中に立っていた。
逃げ惑う人、響き渡る色とりどりの音。
これがアクセントとなり、僕のゲームを彩る。
「…」
この世界は「虚無」という存在に支配された。
虚無は強い、それもとてつもなく。
だがそれと同時に、人間にも特別な力が与えられた。
それは[能力]と呼ばれる力だ。
選ばれし者に与えられた、特別な力。
それを使い、人々は戦った。
「…来た」
奇襲しようとしてきた敵を手に持つ長剣で切り裂く。
最も弱い部類の虚無だったようで、その一撃で散った。
僕は無言で剣をしまい、また歩く。周辺にいる敵を切り裂くため。
約束を、果たすため。
「ちっ! おい天野、こっちだ!」
建物の中から、武装した兵士らしき人間が窓を突き破ってきた。
その中から、仲間が出てくる。
「ちょっ、有馬さん! 死ぬ死ぬ!」
焦った声を出しながら、二人目の兵士が転がり出てきた。
その後ろから大型の虚無が建物を破壊し、現れる。
「捕捉!」
足をばねのように使い、虚無に向かって跳ぶ。
勢いのついた体を捻り背中の剣を抜き、振りかぶる。
「…ふっ!」
カキンッ、と軽快な音がなり、剣が弾かれる。
この剣では、このクラスの虚無には効かないようだ。
衝撃を感じたのか、虚無がこちらを向く。先程の兵士はもう逃げたようだ。
この剣が効かないとなると、「アレ」を使うしかない。
「……」
ゆっくり深呼吸する。集中力を研ぎ澄ませ、目の前の敵を見る。
「顕現せよ、我が身に宿りし[能力]よ」
右手が黒く妖しい闇に纏われ、力が宿る。
それと同時に虚無が巨体を奮わせ、襲いかかってくる。
「肉を裂き、血を啜れ。――[死神]」
右手に纏われた闇が、虚無を包んでいく。
虚無は必死に纏わりつく闇を振り払うが、その抵抗も虚しく、飲み込まれた。
そして闇が晴れると、跡形もなくなっていた。
これが僕の第一の能力、[死神]だ。
この世界で生きていくための、大切な能力。
僕は、こんな世界でもゲームを続けなければならない。
それが、たった一つの約束を叶えられるのならば。
少し設定も充実してきたかな、と。
次回は兵士さんが…?