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05 最初の事件

 うおおおおおおおおお!恥ずかしい。昨日の私は恥ずかしい。

 もう、埋まりたい。衛生兵ー!衛生兵ー!私の入る穴はどこですかー?

 昨夜の痴態はあれはなんだ貴様。


 いや、あれは確かに異常体験で。そりゃ怖かろう。目に焼きついて離れないだろう。

 だけどだ。あれは無い。無いよ私。


 怖いからお風呂について来て。ついて来て?何様だ貴様。

 シャワーを浴びる時の背後が一番怖くて、ドアの向こうの桃樹に「そこにいるよね?桃樹いるよね?」って何度も呼んでしまった。

 トイレは三回。三回だ。普通の生理現象で二回行って、深夜に起きて一人で行くのが怖いからって念のため一回。乙女の恥じらいどこ行った?

 あああああ。昨日の自分を消去したい。


 極め付けがあれだ!いや、これだ。

 怖いから一緒に寝てとかガキか自分。

 そんで、桃樹に寝かしつけてもらうとか。ぬおお。あり得ない。

 でもって、今もこうして腕の中とかって姉弟として。姉としてどうよ?

 無い!無い!ああ。でも今日の夜とかどうしよう?そんで、桃樹が起きたらどんな顔をしたらいいんだ。




 目が覚めたら、いつも鏡で見ている自分の顔とちょっと似た、でも全然違う弟の顔が目の前にあった。目と鼻の先、超至近距離。

 わ~。まつげ長ーい。鼻高ーい。唇つやつやだな、おい。肌きれいだな。コノヤロウ。やっぱ桃樹も男の子だな~、私とは顔つきが変わったわーなんて。

 散々、セクハラかまして。昨日の事を思い出して。居た堪れなくなった。


 なにをやっておるのだ自分よ。恥ずかしい。もう、埋まりたい。


 だがしかし、妙に寝つきのいい桃樹さん。いつの間にやらがっつりホールドで身動きがとれぬ。ぐぬぬ。しかもこの御仁、腰をがっちりホールドなのです。よりによって腰!腰ですよ奥様。弟の将来がとっても不安です。アタクシ。

 なんだよもうさっきから。自分だけが馬鹿みたいだ。畜生。


「……ん。あれ?なんだ?桃花?」


 のおぉ。桃樹さん目が覚めたー。しかも寝ぼてるー。うぜえ。おや?って事はこのまま逃げ切れるだろうか。お姉さん、昨日のはちょっと恥ずかしい。よし!しれっと抜け出して全力で誤魔化そう。


「あー。そうか昨日、俺、こっちで寝たのか」

「ソウミタイデス。タイヘンアリガトウゴザイマシタ。ソンデ、ハナシテクダサイ」

「んー」


 って寝るなぁ!寝るなら、桃樹のベッドにしろ。しなさい。

 あ、ちなみに私と桃樹は二段ベッドに寝てます。下が私で上が桃樹。今日は二人で下にいます。一つのベッドで私と桃樹。

 …ああ、そうだった。いやあ。開放してっ。


「桃樹。桃樹。お腹すいたよ。私、朝ごはん作るから。ねぇ」

「んー」


 あー。聞いてねぇ。実は桃樹は朝に弱い。

 両親が共働きかつ、不在がちな我が家では、主に私がご飯係で、桃樹がお茶系担当。不公平なので洗い物は桃樹だ。

 仕方ないので、鼻を摘んでやった。ケケ。姉なめんな。






 朝はご飯派ですか?パン派ですか?

 麺派の人は献立教えて下さい。よろしく。


 うちはご飯派が多いのだが、私が楽なのでパンが多い。

 トースト、サラダ、果物。これが基本メニュー。うん普通だな。

 桃樹のやつは成長期を迎えて足りなさそうなので卵料理とかソーセージとか付けたりする。


 父と桃樹はそうだな……ザ・旅館の朝ごはんみたいなのを好む。

 焼鮭とか干物の焼いたのとか、目玉焼き、おひたし、お味噌汁。私だってただ食べるなら、こっちがいい。自動で出てくるならな。

 や~朝早く起きたり、前の晩に下ごしらえしておけばパンと同じくらいの手軽さで出せるけども。嫁にやってもらってください。可哀相なんで週に二回は頑張ってあげる。


 母は食べる事にあまり関心を持たない人だ。

 だからパン派にしておく。ちなみに彼女の朝食は食パンと牛乳をそのまま食卓へドーンだ。和食をねだったら米の袋と味噌が置かれるに違いない。


 今はまだ学校始まってないから、のんびりしてもいいよねぇ。

 昨日のお礼も兼ねて、ちょっと頑張った方が良いのか。冷蔵庫を覗きつつ私は悩んだ。8時半か。今から米は炊けぬ。パンで豪華、豪華、豪華……


 く、クロックマダムとポテトサラダ、ボイルソーセージに葉っぱメインのサラダになりました。

 えっとクロックマダムって要はハムとチーズのトーストに目玉焼きののったものだ。クロックマダムって名前も素敵よね。マダムいいよマダム。

 ラ○ュタパン好きな人は好きなはず……

 簡単じゃんとか言わない。フライパンと鍋とレンジ使うんだぞ!ボウルだって使う。洗い物満載だ。

 豪華ですか?とか聞かない。オサレなメニューで野郎が満足するとは限らない。加減が難しいのだ。

 ちなみに今日の食器は自分が洗う。感謝の気持ちだからね。




「桃樹さん。桃樹さん。今日は昨日の巡査さんにお礼に行きたいのですが」


 朝ごはんしながら、桃樹に話しかける。お願いをする時は丁寧な言葉使いが基本。キリッ。

 私にしては頑張った朝食も、愚弟はちょっと頬を緩めただけだ。やっぱ男子って面白くない。たまには大げさなくらい褒めてくれないものか。褒めれ。


「そーだな。お世話になったもんな。危ないし俺も付き合うけど。でも大丈夫なん?」


 言外に、事件現場に近づく事を心配してくれる桃樹。駐在所はコンビニの丁字路を通らないと行けないのだ。


「うん。あれね。多分、あやかしの最初の事件なんだ。ちょっと巡査さんに探りを入れたい。」

「……あやかしの事件って学校始まってからじゃねーのかよ?」

「私もそう考えてたんだけど。良く考えたら主人公達って事件の噂を聞いてから首突っ込んでいくんだよね~」

「げ。じゃあ、ゲーム開始までに殺人事件が何件か起こるってことか?」


 そうなのだ。あやかしの噂って写真部の狐先輩が主人公に教えるのだけど。

 狐先輩の話は女の人にあやかしがエロい悪さをしているってマイルドな表現だった。それを主人公と一緒に聞いたミコちゃんが正義感を爆発させて首を突っ込む。主人公はミコちゃんに引きづられる形で事件に関わり始めるのだ。


 ゲームだとその噂を聞いて初めてモブお姉さんのエログロ殺人事件が起こる。短いホラーチックなムービーとエロスチル。殺人はぼかされていて決してグロいモノではない。せいぜい血痕の描写ぐらいだ。しかも使いまわしスチル。

 昨日のあれを見てしまった私には血溜まりとか、まじ勘弁ですけども。ゲームだったらぬるいぬるい。前世の私はポテチ片手にマウス連打しておりました。反省。


 しかし、私はモブお姉さんが最初の犠牲者だと思っていたが。入学式まで後一週間ほど。昨日の足のお姉さんだけで噂ってたつのだろうか?エロい悪さが、エログロ殺人だったとして、噂になるまでに一体どれだけ犠牲者が出ていたのか……

 あやかし幻想奇譚は基本、お馬鹿テキストのコメディタッチの作品だっだ。こんな恐ろしい事件が起こっていたなんて。知らない。まんまと騙されちまったなぁ。


「思ったより近所であやかしの事件が起きた。ニュースで知って皆も注意はすると思うけど、友達が心配。なんでもいいから情報が欲しい」

「そうだな……」


 桃樹がなにか考え込んでいる。


「それから。もう一度、鷲谷も一緒に打ち合わせがしたい。事件の話も聞いてもらいたいし」

「うん。なんつーかさ。高校生の一般人には手に余る話だよな」


 そうだね。桃樹。まったくだ。


「そう言えば。昨日の話って父さんと母さんにした?」


 私が聞くと、桃樹は苦笑した。昨日、巡査さんは自宅の電話に連絡入れてくれて、出たのが桃樹なんだよね。てか今、うちには私と桃樹しかいない。

 ちなみに父は国立大の大学教授。母は助手。なんか学会とかでアメリカに飛んでいる。2週間くらい家を空けると聞いている。


「わるい。無駄に心配かけたくなかったんで、なにも話してない」

「その方がいいよ。ありがとう桃樹」

「事件の進み方によっては親父には報告しようと思ってる。向こうで事件を知ったら心配すると思うし」

「ん。父さんがニュース見るとは思えないけど、大学の人とかが知らせるかもしれないしねー」


 ふぅ。と思わず二人で溜息を吐いた。

 なんだろね。まだ学校始まっても無いのに疲れたね。

 桃花さんはご乱心。焦ったり、怖かったり、凹んだり。なにかあると本心を隠すためにはっちゃけて後で反省会をする、少しめんどくさい子です。双子で生まれてこなければ桃樹みたいなポジジョンの子はいませんでした。人間関係苦手っ子。

 ちなみに前半、てんぱっているのは桃樹さんの腕の中で照れていたわけではありません。姉弟ですから。もう取り繕うのに必死。

ここまでお読みくださりありがとうございました。


6/19誤字を修正しました。いつもすみません。

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