彼は勇者さん。
短編を書きたくなりました。
私の名前は青葉紅葉といいます。
名前のせいか、どっちつかずの優柔不断者で友人は少なくどちらかといえば孤立しています。
そんな私の友人の中村くんは変わっています。
何が変っているかと言われると何とも言いがたいのですが、彼は定期的に異世界に呼び出され、勇者として世界を守っているらしいのです。
らしいというのは私は彼のその姿を見たことはないからです。
そんな彼は何故か私にその話をしてくるのです。
彼は比較的に人付き合いも良く、人気者…とまではいきませんが、友人が居ないわけではありません。
それに、私と彼はクラスが違うのです
でも、何故か私にそれを随一報告するのです。
わざわざ私の教室に足を運び、私の隣の席の田端くんの椅子をもぎ取り、私の机の前に腰を落ち着けて。
彼は何がしたいのかわかりませんが、彼は決まって話の最後にこういうのです。
「ねぇ、どう?一緒に行ってみない?」
それをわたしは
「遠慮します」
もちろん断ります。普段はどっちつかずの私ですが流石に命は大事です
だって中村くんの話にはドラゴンが出てきたり、ゾンビが出てきたりと危険がつきまといます。
そんなところに私が行ったところで無駄死するだけです。
はっ!
もしかしたら中村くんは私がそうなることを臨んでいるのではないかと、この頃はそればかり考えています
そして、今日。
私は彼に呼び出されました。
放課後、屋上に一人で来るように。
珍しく彼は私に会いに来たにも関わらず、文面でそう伝えてきました。
「えっと、中村くん?」
屋上に行くと、中村くんはいたのですがその周りに色とりどりの頭をした美しい女性がいました
「あら、アナタが……フーン」
「嫌ですわ!こんな子に!?」
女性は私の姿を視界に入れると、中村くんの腕にしがみつきました
自分達の豊満な胸をおしつけるように。
あぁ、立派な胸ですね。
私はそれをジーっと見ています。
そんな中、私を呼び出した中村くんは女性達を振り切って私の元に走ってきました。
「だから、言ってるだろ!俺には最愛がいるからお前達とは付き合えない!」
中村くんはそう言って、私の肩に腕を回します完全ホールド状態です。
すんごく、女性たちに睨まれます
怖いです
「なっ!?な、な、な、な、なんてすかこれは、中村くん!」
「紅葉カミカミすぎだろ。可愛いやつだな!」
「な、」
な、何を言っているんだ。中村くん!
彼は普段はぶっきらぼうで、どちらかといえば真面目な方です
それが今、私の目の前で目尻をさげ、普段呼ぶ苗字ではなく名前を呼んで居らっしゃいます。
まっ、まさか彼は私を女性達に始末させようと呼んだのではないのでしょうか!
それならば納得です
何故か、凄く動きにくそうなドレスやごってごての宝石を身にまとっていますが。
「では、カエデ様!貴方様はそこの方と添い遂げるつもりでいらっしゃいますの!?」
女性の一人が中村くんの名前を呼び、指をコチラにさした。
ちなみに中村くんは中村楓といいます。その名の通り、赤い髪に真っ赤な瞳をしています。
そういえば、彼も変な髪色でしたね。
思わず、クスリと笑いが出てしまった
「まぁ!?笑いましたわね!わたくしを笑いましたわね!許しませんわ!カエデ様の心を掴んで、貴族であるわたくしを蔑むなど!!」
えぇ!?私、あなたを笑ったわけじゃないんですけど!?というか、これは中村くんのトラップで私のことは中村くんは全くすきじゃないから!
というか、貴族って何?
「仕方ないだろ?紅葉は俺と一緒になる運命なんだからさ。それに、お前達が俺の最愛を見せれば身を引くって言ったんじゃないか。それに、おまえたちは勇者の嫁っていう肩書が欲しいだけだろうが。」
中村くんがそう言うと女性は静かになり、そのままスゥっと消えてしまいました。
あれ?私の殺人計画じゃなかったの!?
困惑する私に、中村くんは笑いかけて来ました。
「なあ?一緒にいくだろ?」
「遠慮します」
「っ、またかよー!」
1回でも来てくれれば、俺がこんなとこに来ることもなくなるんだけどな~
ハァーと溜息を吐きながら頭を
抱える中村くん。何故か、不吉な声も聞こえましたがそこはあえてスルーで。
しかし、その数年後、中村くんの威圧感に負け異世界に行ってしまったが最後。
私は見事中村くんの嫁のポストに入ってしまいました。
ちなみに後から聞いた話なのですが、彼は元から私とは異なった世界の住人で偶々私の世界を助けに来た時に私に会い、何故か私を気に入って、私を自分の世界に連れ帰ろうとしていたそうです。
勇者さん。マジ怖い。
かるーい設定
青葉紅葉
本作の主人公
優柔不断で、かなり抜けてる。
小さい頃に、中村くんに会っているが忘れている。
中村くんとは良き友人。でも、押しに負けてだんだんと。
中村楓
本作のヒーロー、勇者。
真っ赤な髪に真っ赤な瞳。
容姿も整っていて、かなり人気。だが、紅葉と一緒に居たいが為に、周りを牽制し友人と呼べる友人はいない。
紅葉と幼い頃に出会い、一目惚れ、それから定期的に自分の世界に帰っては居るが基本紅葉のところにいる。
紅葉を、数年におよび口説き落とし、今がかなり幸せ。実は、王子様だったりする。