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5.
宇宙人の風邪は無事に完治した(と思う…。)
そろそろ夏も近くなり、汗ばむようになってきた。
学食に向かって歩いていたら、図書館近くで宇宙人を見かけた。
その傍らには、薔薇が似合いそうな女子がいた。
気が強そうというか、綺麗女の子ではある。
彼女と宇宙人は腕を組んでいる。美男美女の組み合わせは目立っていたが
宇宙人の方は嬉しそうではないとうか…。
「あれ、水谷じゃね。おぉ!隣りに居るのはミスキャンパスじゃん」
隣りにいる山田はミーハーだった。
色の抜けた金髪に、なんとも言えないTシャツを着ている。
ちょっとした視覚の暴力というか、視覚のテロリスト的ではあるが
専攻が同じなため、割とつるんでいる事が多い。
「へぇ、ミスキャンパスね。」
確かに綺麗な子だとおもうが、宇宙人の顔がなぁ…。
「やっぱ美男美女はそろうと迫力あるな〜あ〜羨ましい!俺もかわいい子と何かしたい!」
「何をだよ…」
「何ってやっぱ、ナ」
俺は山田の口、というか顔を片手で潰した。
「がふっヘッとッ」
変な声がしたけど気にしない。
「それ以上は言うな」
あ、手がなんかぬめった…。うげ…。
「それより、お前レポート終わったのかよ。ちゃんと終わらせないと必須の単位落とすぞ。落としたら来年の前期にならないと取れないし、お前アンマリ本能だけで生きてると、アホの子になるぞ。ってもうなってるか。」
俺がうんうん、と頷くが返答が無い。
「おい、山田」
ってあぁ俺が山田の顔を押さえつけているんだった。
ちなみに山田は必死にギブギブと降参のポーズ、謎の踊りを繰り広げていた。
「わりぃ」
「苦しいわボケッ!」
(大げさな奴だな…。)
「ハイハイ。ほら学食でお前の好きなの300円以内で奢ってやるから行くぞ」
「流石、森井様〜」
はいはい。と言いながら山田のTシャツに手をのじる。
汚ねぇ。食堂の前に先に手を洗おう。
うん。ちなみに俺がのじった事はアホの子山田は気が付いてない。
「なぁ、それよりさ、さっきの課題の件なんだけどなんかうまく行かなくてさ、ちょっと見てくんねぇ?もぅ俺一人じゃ限界さんよ」
「はいはい。アホの子だからな」
「否定はしねぇ!」
そんな訳で、昼飯を食堂ですました後、図書館へと向かった。
(ちなみに今日の午後の講義は休講だった。おそらく、教授の優しさだと俺は信じている)
モバイルPCを立ち上げて、レポートの中身をチェックし、関連する資料を手当たり次第捜す。ひたすら捜す。コピーを取ったりと忙しく過ごし、夕方を迎えた。
「ねぇ〜草木やん」
「何だどうした知恵熱か、アホの子よ」
山田は図書館の机の上で潰れて瀕死になっている。
「なんか、俺こんなに真面目な学生やってる自分を想像してなかったわぁ」
山田は顔をつっぷしているので表情は見えない。
「そうか」
山田の頭だけが動く。
「だってさ、俺こんなだからさ、レポートも先輩のとか貰って適当に映して、テストも適当に受けてさ、授業も代弁してもらってさ、その為にサークルに入ったのにさ〜なんか気が付けば、かなり真面目にやってて、親にも驚かれたわょ」
「そうか」
「でも、悪く無いよな」
「そうだな」
(あ…。山田の髪の毛に白髪発見。やっぱ慣れない事すると頭白くなんのかな…。俺も気をつけよ)
「山田、あんまり無理すんなよ」
(頭はげそうだもんお前…)