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目指せリリカル島!
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大学では宇宙人と俺は専攻が違う。
そして宇宙人は大学でとても有名人だったりする。
無駄に顔がよくて無駄に頭がいいのだから有名人で当然なのかもしれないが、
俺にしたらあそこまで頭がいいのは可哀想に思う。
人間知らないほうが幸せなことのほうが案外多い。
まぁ、宇宙人が何を考えているのか俺には理解できないが。
そして宇宙人は今日学校に来ていない、何故なら風邪を引いて寝込んでいるからだ。
宇宙人でも風邪を引くものらしく、昨日からでた熱は下がる様子も見せずバリバリ熱を出し続けている。思わず実家に電話して、どうしたらよいか聞いたら同居がばれてしまい、来月から生活費が減らされるという事態に陥ったのも絶対宇宙人のせいだ。しかし俺のせいで宇宙人が死んでしまい、地球を占領されても困るので看病している。
どうしても受けなければいけない授業を受け、帰ろうとしているところへ同じゼミの奴が俺を呼び止めた。
「森井」
「なんだ」
「急にゼミの飲み会が決まったんだけど、お前も来いよ〜」
「悪い、今、ウチで宇宙人、じゃなくて水谷が寝込んでいるからムリだ」
俺は宇宙人のために夕飯を作り、看病しに帰らないといけない。
「本人が病院へ行きたがらないから風邪なのか分からないが、多分風邪だろう」
今頃は、宇宙人だからもう風邪も治っているかもしれないが
「水谷でも風邪を引くんだな。つかなんでお前の家に水谷が居るの?」
「俺も同じことを思った」
「おいおい…。まぁお前も風邪うつされないように気をつけろよ。後、女の子たちには黙っていた方がいいぞ。家の中が大変な事になるだろうからな」
「…気をつける」
スーパーで熱の時に必要なものを買って帰る。
この年になって高い熱を出すのはかなり厳しいらしく関節が痛むらしい。
まぁこれであの宇宙人の脳みそが少し馬鹿になればアイツも少しは地球で生きやすくなるものだ、なんて思いながら家路を急いだ。
「ただいま」
「お帰りぃ~ごッホっ」
掠れた声ではあったが確かに声が聞こえる。
この様子だと少し熱が下がったのかも知れない。そう思いながら障子を開ければ、余りの熱に泣いている宇宙人が居た。ギョッとする。
「クサキぃ」
「キヨ…、死んだか」
「まだ、生きてるよぉ…」
「ほれほれ、悪かったよ」
氷まくらを変えて、熱を測るが下がっては居なかった。
俺はしゃがみこんで宇宙人の額に手を当てた。あとで冷却シートを張ってやろう。
「飯は食べられるか?」
「ムリぃ、喉痛い」
かすかすの声はいつものイケメンボイスとはほど遠くなっている。
うん、宇宙人が弱っていた。
「よし、ちょっと待ってろ」
大学に行く前に仕込でおいた蜂蜜大根のシロップを冷蔵庫から取り出すとキヨのマグカップに多めに入れて、少ないお湯で溶いた。
「ほら、飲め舐めろ」
キヨが小さく口を開けるので無理矢理スプーンで流し込む。
「美味いかは分からんが、どうせ味覚も熱でボケてるんだからとりあえず舐めとけ」
「うん…、でも柔らかくて美味しいよぉ」
「そうか」
一通り大根は緻密を与え、買ってきたものを冷蔵庫に入れようと立ち上がったら、思いっきり手首を引っ張られた。
「なんだ」
キヨはヒョロリとしてスタイルが良い割に力が強い。
だからけっこう簡単にキヨに振り回されている。
「クサキ、今日だけは、今だけは側に居て…」
今日だけじゃなくて、いつも側に居るだろうが…じゃなくてと思わず突っ込む。
掴まれた手首が熱い。それにいつもより手に力も入らないらしい。
「分かった。心配するな、泣くな、側に居てやるし熱は下がる」
熱が出れば宇宙人でも心細くなるのだろう。
布団の上をとんとん、と叩きながら宇宙人に話しかけ眠るまでずっと側に居た。
結局、深夜になっても熱は下がらず病院に連絡をして救急車を呼ぶことになった。
まったく人騒がせな宇宙人だがしょうがない。何度も言うようだが宇宙人が何を考えているのか俺には分からないのだから。
(しかし、無駄にデカイから何をするのも大変だった…。
着替えさせたり身体を拭いたり…。
2日入院する事になったのでとりあえず着替え一式を揃えて持って行き、家は換気と掃除して布団も干して洗濯機もガンガンまわしたって俺は主婦か!)
クサキはオカン属性と見た。