かわい子ぶりっ子でいきます!(ChatGPTお試し)
昼前の冒険者ギルド。
受付には今日も、依頼を探す冒険者たちが並んでいる。
「次の方、どうぞ♪」
私はいつもの笑顔で声をかけた。
「は、はい!」
やってきたのは、まだ冒険者になったばかりらしい少年だった。新しい革鎧に、手入れしたばかりの短剣。見るからに初々しい。
「あの……冒険者登録を……」
「冒険者登録ですね♪ それでは、こちらの用紙にお名前をお願いします」
「あ、はい」
少年は用紙を受け取った。
そして、ふと顔を上げる。
目が合った。
「…………」
「?」
少年が固まった。
「どうしました?」
「あ、いえ……その……」
少年は慌てて視線を逸らした。
耳まで赤くなっている。
(ほう)
私は内心でニヤリとする。
(そうかそうか。私が可愛すぎて固まったか。まあ、無理もない。こんな顔が目の前にあったら、そりゃ見惚れるよな)
私は自分の顔をよく知っている。
大きく澄んだ瞳に、長い睫毛。小さな顔に整った目鼻立ち。柔らかな頬に、年齢より幼く見える愛らしい顔立ち。華奢な身体つきも相まって、黙っていれば庇護欲を刺激するような可愛さがある。
街を歩けば振り返られる。
客から「可愛い」と言われることも珍しくない。
つまり――私は、めちゃくちゃ可愛い。
(どうだ。可愛いだろう。ほら、もっと見ろ。もっと褒めろ。心の中で『可愛い』とか言ってないで、ちゃんと口に出せ。私は聞きたいんだよ、コラ)
「緊張しなくても大丈夫ですよ♪ 初めての方には、私が説明しますから」
「は、はい……」
(おお、声まで上ずった。完全に効いてるじゃん。いいぞ。そのままもっと私を意識しろ)
少年は書類を書き始める。
私はその様子を眺めながら、にっこり笑った。
「字、お上手ですね♪」
「えっ?」
「読みやすいです」
「あ……ありがとうございます」
少年の顔がさらに赤くなる。
(よし。褒めたら喜んだ。単純でよろしい)
私は満足する。
(神様、本当にありがとうございます。この顔を授けてくださったことだけは、何度でも感謝します。おかげで今日も楽しいです)
冒険者ギルドは男性冒険者のほうが多い。
だから私は、ここで働くことにした。
私はちやほやされたい。そして可愛い女の子として生きるなら、男性からのほうがちやほやされる機会は多いだろう。
(せっかく世界一可愛いんだから、使えるものは全部使わないとな)
少年が書き終える。
「はい、できました」
「ありがとうございます♪」
私は書類を受け取る。
「では、冒険者登録について説明しますね♪」
「はい!」
妙に元気のいい返事が返ってきた。
(ふふっ。いい返事。もっとだ。もっと私に構え)
そのとき、少年の後ろから別の少年が顔を出した。
「お前、顔真っ赤だぞ」
「うるさい!」
「何だよ、受付のお姉さんに惚れたのか?」
「ち、違う!」
私はくすっと笑う。
「ふふっ♪ 仲良しなんですね」
「こいつとは幼馴染なんです」
「まあ、素敵ですね♪」
「素敵って……」
「ずっと一緒のお友達がいるって、いいことですよ♪」
私は少年二人に笑いかける。
二人とも照れたように笑った。
(そうそう。私の前では素直になれ。ほら、二人とも『可愛いなあ』って思ってる顔してるぞ。もっと露骨に褒めてもいいんだぞ?)
そこへ、三人目の少女が依頼書を持って口を挟んだ。
「すみません。この依頼って、初心者でも受けられるんですか?」
「はい♪ こちらなら大丈夫ですよ」
私は少女のほうを向く。
そして、ほんの少しだけ笑顔を薄めた。
「街の近くで薬草を採取するお仕事なので、初めての方にはおすすめです」
「魔物は出ないんですか?」
「可能性はありますけど、危険度は低いです」
「そうなんですね」
「ただ、油断はしないでくださいね」
「分かりました」
必要な説明を続ける。
私は女性相手には、基本的にこんな感じだ。
(女相手にまで全力で可愛くする必要ないだろ。どうせ『可愛い~!』とか言ってちやほやしてくれるわけじゃないんだし)
別に嫌っているわけではない。
ただ、サービス精神を発揮する理由がないだけだ。
説明を終える。
私は再び少年のほうを見る。
「あなたは剣士さんなんですよね?」
「はい!」
「すごいですね♪ 私、剣を使える人って格好いいと思います♪」
「…………!」
少年が固まった。
(ほら見ろ! また赤くなった!)
「でも、無理はしちゃ駄目ですよ?」
「はい!」
「怪我したら大変ですからね♪」
「気をつけます!」
(よしよし。『この子、俺のこと心配してくれてる』って思っただろ。そうだよ。私は優しいんだよ。可愛くて優しい。最強じゃん、私)
私は冒険者証を差し出す。
「これで登録は完了です♪」
「ありがとうございます!」
「これから冒険者として頑張ってくださいね」
「はい!」
「でも……」
私は少しだけ声を落とす。
「ちゃんと無事に帰ってきてくださいね?」
「……!」
「約束ですよ♪」
「……はい!」
少年の顔が真っ赤になる。
(いただきました。今日の初恋、一個ゲット。私、可愛いだろう? そうだろう? もっと褒めてもいいんだぞ?)
私は満足して、三人を送り出す。
――と思ったのだが。
三人はギルドを出ず、少し離れたところで話し始めた。
「なあ」
「何?」
「あの受付の子、めちゃくちゃかわいくなかった?」
「うん。すごくかわいかった」
私は書類を整理しながら、耳だけそちらへ向ける。
(そう! それだよ! もっと言え!)
少女が二人の少年を見る。
「二人とも気に入ったの?」
「いや、俺は……」
「顔、真っ赤よ?」
「これは暑いだけ!」
「ふふっ。もしかして、あんた惚れたんじゃない?」
「惚れてない!」
「じゃあ、なんでそんなに嬉しそうなの?」
「それは……」
「ほら」
「……かわいいとは思ったけど」
「やっぱり!」
「声が大きい!」
(よし! 本人の口から出た!でも『可愛いとは思った』じゃなくて、『可愛いです』って言え! 私は世界一可愛いんだぞ! もっと自信を持って断言しろ!)
私は口元を押さえて笑いをこらえる。
(いやあ、今日も順調だな)
しばらくすると、先ほどの少女が受付へ戻ってきた。
「すみません」
「はい?どうされましたか?」
「さっきの依頼なんですけど、採取した薬草ってどこに持っていけばいいんですか?」
「……依頼書の下に書いてあるよ」
「え?」
「ほら。納品場所」
「あ……本当だ」
「ちゃんと読んでから聞いてよ」
「…………」
少女が私を見る。
「……あれ?」
「何?」
「さっきと口調が違わない?」
「そう?」
「ええ。さっきはもっと可愛らしかったというか……」
「男と女で同じ話し方する必要ないじゃん」
「え?」
私は頬杖をつく。
「男にはかわいくする。女には普通にする」
「ずいぶんはっきりしてるわね」
「だって、女ってあんまりちやほやしてくれないし」
「そういう理由なの?」
「そういう理由」
(だってそうだろ。私の可愛さを見て『きゃー、可愛い!』って言ってくれるのは男のほうが多いんだよ。なら、男にサービスするのは当然じゃん)
少女が呆れたように笑う。
「でも、仕事中なんだから、もう少し愛想よくしてもいいんじゃない?」
「愛想よくする必要があるのは客相手だろ」
「私たちも客なんだけど」
「冒険者としてはな。でも今は質問に答えてるだけ」
「そういうところが雑なのよ」
「よく言われる」
「もう少しこう……」
「で、他に質問は?」
「ええと……じゃあ、薬草を採るときに――」
「それも依頼書に書いてある」
「……」
「ほら、ここ」
「本当だわ」
「ちゃんと読めって」
少女は苦笑する。
「あなた、思ったより雑なのね」
「よく言われるって言っただろ」
私はガハハと笑った。
「ガハハハ!」
その瞬間、少し離れたところにいた少年が振り返った。
「…………」
目が合う。
少年がぽかんとしている。
(お? 何だその顔)
私は気にせず、少年へ必殺のキュートスマイルを向ける。
「どうしました?♪」
「え?」
「何か質問がありますか?♪」
「……いや……」
「遠慮しなくていいですよ♪」
(ほら。さっきと同じ可愛い受付嬢に戻ったぞ。安心しろ)
私は満面の笑顔を作る。
少年は困惑したまま、また顔を赤くする。
「……大丈夫です」
「そうですか♪」
(ふふん。どうだ。私の切り替えは完璧だろう)
少年が戻っていく。
少女が呆れたようにこちらを見る。
「本当に切り替えが早いのね……」
「当たり前だろ」
「さっきまでガハハって笑ってたのに」
「だって今のは男と話してたし」
「そこまで堂々と言われると何も言えないわ」
(当然だ。私は可愛いと思われたいんだから。男相手に可愛くする。何が悪い)
そこへ、後ろから声がした。
「先輩」
「ん?」
振り返ると、女性の後輩が立っていた。
「また新人さんの前で素を出してましたね」
「いいだろ、別に」
「よくないですよ」
「なんで?」
「先輩、受付嬢なんですから」
「受付嬢だよ」
「もっとこう……可憐に……」
「無理」
「即答ですか」
「私、不器用だから」
「それを自分で言わないでくださいよ!」
私は男性後輩を見る。
「ね?」
「え?」
そして、にっこり。
「私、そんなに変ですか?♪」
「…………」
男性後輩の顔が赤くなる。
(後輩くんも私の可愛さにやられたか)
「いや……その……」
「ふふっ♪」
(もっとちゃんと言っていいんだぞ? 『可愛いです』って。ほら、今なら聞いてやる)
女性後輩が頭を抱える。
「先輩、後輩にまでそれやるんですか」
「男だから」
「理由がそれなんですね」
「当然」
「もう……」
私は女性後輩を見る。
「で、何か用?」
「さっきの書類について確認したいんですけど」
「そこに書いてある」
「……」
「読んで」
「先輩!」
「ガハハ!」
「笑ってごまかさないでください!」
(うるさいなあ。女相手なんだから、これくらいでいいだろ)
新人三人は、そのやり取りを黙って見ている。
少女は苦笑。
二人の少年は呆然。
少女が小さく呟いた。
「……なるほど。これが噂の『初恋ハンター』なのね」
女性後輩がため息をつく。
「そして、そのあと『初恋クラッシャー』になるんですよ」
「誰がそんな名前つけたんだよ」
「先輩のせいですよ」
「私?」
「『女にバレても別にいい』って男の前でも普通に言うじゃないですか」
「だって本当だし」
男性後輩が苦笑する。
「今日も一人、初恋が終わりそうですね」
「失礼だな」
私は少年を見る。
少年はまだ私を見ている。
「……でも」
私はまた、にっこり笑う。
「……!」
少年の顔が真っ赤になる。
(ほら。まだ落ちてるじゃん)
(やっぱり私、最強だな。あんなガハハを見た程度じゃ、私の可愛さは揺るがないらしい)
私は満足げに笑った。
少し離れた酒場から、こちらを眺めていたベテラン冒険者たちが笑っている。
「おい、またやってるぞ」
「ああ」
「新人の少年、完全に振り回されてるな」
「まあ、あの受付嬢はいつもああだ」
「男には天使」
「女には豪快」
「そして両方を同じ日のうちに見せられた新人は混乱する」
「初めて見たときは俺も驚いたよ」
「俺なんて、あの子に『お兄さん、今日も素敵ですね♪』って言われて舞い上がった翌日に、女冒険者と下ネタで盛り上がってるところを見たぞ」
「落差がすごいな、受付嬢がする話じゃねえだろ」
「本人は楽しそうだからいいんじゃないか?」
「いや、よくないだろ」
ベテランたちが笑う。
「それにしても三年目か」
「ああ」
「仕事はちゃんとできるんだよな」
「そこはな」
「ただし、調子に乗る」
「そして余計なことをする」
「この前も掲示板を勝手に改造してただろ」
「ああ。初心者向けの注意書きに、ものすごく怖いゴブリンの絵を描いてた」
「子供が泣いたやつか」
「本人は『わかりやすくした』って自信満々だったぞ」
「ははは!」
私はそんな会話を知らず、次の客を見る。
今度は男性冒険者だ。
「こんにちは♪」
私は最高の笑顔を作る。
「今日はどうされましたか?」
(よし。次の獲物……じゃなかった、次のお客様だ)
(さあ、私を見ろ。可愛いだろう? ほら、褒めろ。遠慮するな)
私は満面の笑顔で、次の冒険者を迎えた。
(今日もいっぱい、ちやほやしてもらおうっと)
それが、私にとって何より幸せな日常だった。




