傀儡
ばりばり、べきべきと音を立て、屋敷の木の扉が外からの攻撃に耐え切れず押し開かれる。源二は立ち止まり、物陰に隠れながら、じっと観察を続けた。
篝火に照らされ、ずんぐりとした人のような形のものが立っている。人よりは数倍も巨大である。
どっしりとした両足に、膝元まで達する長い両腕。身体は真四角で、幅広い。頭があるべきところには窪みがあり、馬の鞍のような座席がしつらえてあった。その窪みに、人が座っていた。
きゃつら傀儡を持ち出したのか!
扉を強引に押し開いたのは、傀儡のちからである。座っているのは傀儡師だ。傀儡師とは、傀儡を思いのままに動かす技能を代々伝えた一族であった。
つるりとした兜のようなものを被り、兜には眼鏡のようなものが付属している。傀儡師が顔を動かすと、眼鏡の雲母のような透明な板が火明かりを受け、煌めいた。
眼鏡は噂によると、夜の闇を昼間のように映し出すものらしい。
傀儡師の両腕が、傀儡の座席に突き出た何本かの棒をいそがしく前後左右に動かしていた。そのたびに傀儡は、ぎぎっ、ぎぎっと関節から音を立てて思いのままに動いていく。
傀儡が扉を押しひろげると、さっと数人の徒歩の者が屋敷内に飛び込んだ。暗闇を照らし出すためか、手早く篝火をそこかしこに設置し始める。
次に、槍を持った兵士たちが、鎧の音をがちゃがちゃ騒がしく立てながら侵入した。




