表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/46

出口

 蓋が閉まって、あたりは真っ暗になった。


 手さぐりで縄梯子を降りていく時姫は、ただ機械的に手足を動かすことだけに専念する。

 やがて、足先が底に着いた。ほっと溜息をつき、時姫は手をのばして、そっと井戸の内側を探る。


 源二の言っていた抜け穴がある。


 時姫が腰を屈め、四つん這いになってやっと通れるほどの高さである。頭を低くし、手を地面について、姫は這い進んだ。

 空井戸とはいえ、湿気があるのか、妙な匂いが籠もっている。地面はじっとりと湿っていた。


 やがて行く手がぼんやりと明るくなった。抜け穴の出口だ。


 ぽかりと時姫の頭が穴の出口から突き出される。穴は斜面に開いていた。まわりは、一面の茂みである。背の高いススキの穂先がかすかな空気の動きにそよいでいるのが、月明かりに見てとれる。


 ここで待つようにと源二は命じていた。


 その言葉を守り、時姫は膝を折り、その場に座り込んだ。静かな月夜に、かすかに虫の音が聞こえている。


 ここは、どの辺かしら?


 時姫はぼんやりと周りを見わたした。

 茂みの向こうに一筋、川面が見えている。どうやら鴨川の川原のようだ。


 その川越しに、月夜に照らされ、御所の建物が遠く見えている。巨大な【大極殿】の大屋根があたりを圧するようにそびえ、その背後に一つの塔が天を突き刺すように高々と立っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ