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永楽銭

 年が変わり、春になって、源二は里へ降りて行った。背中に薪炭を背負っている。冬の間、源二は山で炭焼きをして過ごしていた。この炭を村で売るつもりである。

 金子は京を脱出する際に笈に用意してあったが、うっかり更の永楽銭を詰めてきたのが間違いであった。


 この辺りでは縁の欠けたり、表面が罅割れた、いわゆるびた銭をやりとりするのが普通で、新鋳の銭など見たことのない人間が圧倒的大多数である。そんなところで水を求めるため新品の永楽銭を使ったのが裏目に出て、あの山狩りとなった。


 源二は炭焼きで生計たつきの道を立てるつもりであった。それに、炭焼きの親爺となれば、他人の詮索の目を引きにくい。

 月代はわざと剃らず、髭も伸び放題に伸ばしている。背中に負った薪炭の重みが、自然と背中を曲げ、北面の武士としての堂々とした振る舞いも隠してくれる。まさに、むさ苦しい炭焼きの親爺の姿であった。


 村に入って最初の驚きは、関所がないことであった。普通、関所は様々な所に設けられており、通過するたび関所役人に何がしの礼金を献上しなくてはならないのだが、領主の緒方上総ノ介は総ての関所を全廃させたと聞く。


 理由は、関所があるために商人が集まりにくく、上総ノ介は自国を富ませるため関所を全廃させたのだそうだ。


 村に入ると、市が立っていた。それも、相当に大規模なもので、京の都でもこれほどの人出は、源二は目にした記憶がなかった。


 これは〝楽〟というものに違いない……。

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