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強行軍

 京を出て、もう十日になる。


 二人の衣服は旅を続けるうち旅塵にまみれ、まあまあ、この界隈の百姓の身に着けるもの、と言っても通るくらいにはなっていた。

 源二の背負ったおいには充分な食料の蓄えがあったが、それでもこの旅を続けるうち、乏しくなってきている。


 そろそろ食料も補給しなければ、と源二は思っていたが、その当てが皆無だった。なにしろ旅籠はたごが存在しないのだ。


 他人目につかぬように、との配慮で旅路を選択したのが、裏目に出た。人の往来が多い街道なら気の利いた旅籠くらい幾らでもあるだろうが、源二はそういった街道を避けてきた。

 日照りが見舞っていなければ、百姓家に泊まるという選択肢もありえた。そうすれば、宿泊した先の好意をあてにして食料も補給できたはずである。が、すべて思惑違いであった。


 源二はちらり、と背後を歩く時姫を確認する。


 見るからにか細い身体つきのどこにこのような体力が隠されていたのか、姫は源二のいささか強行軍ともいえる歩きに文句も言わず従いてきている。


 内心、源二は舌を巻いていた。

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