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河童

「源二、あれは何でしょう?」


 不意に時姫が、何かを見つけたように声を高めた。立ち止まり、源二は姫の視線を追う。

 かつては水の流れた川床であったろうか、うねうねと蛇行した窪みが見える。その真ん中に、何かが──いや何者かが仰向けに倒れていた。


 言葉を発した次の瞬間、すでに時姫は、そちらへ足を向けていた。


 おやめなされ──という言葉を源二は呑みこんだ。こういう場面に時姫に「待て、暫し」と制止することは無駄であると知り抜いている。


 時姫は意外と身軽に川床の斜面を降りていく。後を追う源二は、何かあっては一大事と、足を急がせた。


 倒れていたのは人……のように見える何かであった。


 細い手足、顔のようなものがついているから、辛うじて人のように見える。が、その顔は、断じて人間ではない。

 くちばしのように突き出た口。閉じた両目は大きく、顔の半分ほどを占めている。頭の天辺がやや窪み、その周りをぺたりとした黒髪が取り巻いていた。


「人……でしょうか?」


 尋ねる時姫に、源二は首を振った。

「人ではござらぬ。河童でござろう」

「河童?」

「左様、妖怪変化、魑魅魍魎の類でござる。おそらく、この日照りで頭の皿が乾いてしまったのでござろう。さ、このようなものに関わると、後生が悪うござる。先を急ぎますぞ!」


 が、姫は動かない。まじまじと倒れている河童を見つめている。時姫が覗き込んだために日影ができて、河童の顔を日差しから遮る格好になる。


 ぴくり、と河童の瞼が痙攣した。はっ、と時姫は口を開いた。

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