魔界の朝
次の日の朝、目を覚ましたらベッドの脇に誰かが座ってた。
ルシファーだ。
彼はただ肘掛け椅子に座って、目を閉じて、まるで眠ってるみたい。
銀色の長い髪が垂れて、朝の光の中でかすかに光ってる。普段はいつもからかうような危険な表情を浮かべてる顔が、今は静かで、まるで子供みたい。
彼を見る。急に昨日のことを思い出した。
彼の手は暖かかった。
彼の耳は赤くなった。
私に包帯を巻く時、彼の手は震えてた。
この魔王、私が思ってたほど怖くないのかも。
そう考えてたその時、彼の目が突然開いた。
ばっちり目が合った。
「何、見てる?」
その声は起きたばかりの低い声。
「別に。」
「また別にか?」
「うん。」
数秒、じっと私を見る。そして立ち上がって、ベッドのところまで歩いてくる。
「傷はどうだ?」
「だいぶ良くなった。」
「見せろ。」
手を伸ばす。私の襟元を解こうとする。
「ちょっと待って待って!」
慌てて胸元を押さえる。
「何する気?」
「傷を見る。」
「自分で見るから!」
「背中は見えないだろ。」
「でも、あんたに……」
「俺は魔王だ。」
「だから?」
「だから、俺の言うことが正しい。」
堂々と言い放つ。そしてまた手を伸ばす。
逃げる。追う。逃げる。追う。
最後にはベッドに押さえつけられた。動けない。
「動くな。」
その声が耳元にする。
固まった。
彼はそっと襟元をめくる。背中の傷を見る。
「順調に治ってるな。」彼が言う。「あと何回か薬を塗り替えれば完治だ。」
手を離す。立ち上がる。
ベッドに横たわったまま、ぜいぜい息をする。
この魔王、絶対にわざとだ。
「そうだ。」ドアのところまで行って振り返る。「今日、客が来る。」
「客?誰?」
「クラウディアだ。」
「え!?」
「さっき使者が来た。直接お礼を言いたい、ってな。」彼の表情が微妙に歪む。「あの女公爵、お前に心を奪われたらしい。」
「でも……」
戻ってきて身をかがめる。耳元に顔を寄せる。
「もし、お前があの女に心を奪われたりしたら……」
その声は低くて危険だ。
「あの女を殺す。で、お前も……」
言いかけて止めた。でも意味はわかった。
「わ、私、そんなことしない!」
「なら、いい。」
体を起こす。満足そうにうなずく。部屋を出て行った。
ベッドに横たわったまま天井を見る。
クラウディアが来る?
この前私を殺しかけたあの光の陣営の女公爵が、お礼に来る?
この世界、どんどんぶっ飛んでる。
でも、なぜかちょっと楽しみだった。




