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第四章 七耀の宣戦布告

私は、激しい揺れで、目を覚ました。


地震じゃない。誰かが、私のドアを、叩いてる。


「すみれちゃん!すみれちゃん!起きて!大変だ!」


ベルゼブブの声が、ドアの外から、聞こえる。ドンドンドン、って、叩く音も、一緒に。


ぼんやりと、起き上がる。窓の外の、空模様を、見る——紫色の空に、三つの月が、まだ、浮かんでる。明らかに、夜中だ。


「今、何時?」


「知らない!とにかく、大変なんだ!早く出て来い!」


ため息をついて、適当に、上着を、羽織る。ドアを、開ける。


外に、立ってたのは、ベルゼブブだけじゃなかった。アスモデウス、ベルフェゴール、それに、見たことのない、大勢の魔族たちも、いる。みんな、変な顔をしてる——興奮と、緊張が、混ざってて、緊張の中に、ちょっとした、面白いものを見る、期待も、混ざってる。


「どうしたの?」


「あれを、見ろ!」ベルゼブブが、空を、指さす。


指さす先を、見る。で、固まった。


魔界の、紫色の夜空に、巨大な光の幕が、現れてる。


その光幕は、空の半分を、覆い尽くしてて、聖なる白い光を、放ってる。この、闇色の、魔界では、すごく、場違いだ。光幕には、映像が、浮かんでる——そびえ立つ、神殿。七つの影が、神殿の一番高いところに、立ってる。後ろからは、ものすごい聖光が、降り注いでる。


で、一番、真ん中の、あの影は。間違えようがない。


一条煌だ。


光幕の中の、映像が、どんどん、はっきりしてくる。まるで、ライブ中継みたい。


一条煌は、真っ白な聖衣を、着てる。金色の髪が、聖光の中で、輝いてる。顔には、世の中のすべてを、哀れむような、表情を、浮かべてる。その後ろには、六つの影——前に、広場で、見た、あの六人の、女勇者たちだ。


火の勇者——あの、赤い髪の、女騎士。真っ赤な鎧を、着て、手には、炎をまとった、長剣を、持ってる。かっこいい。


水の勇者——あの、青い長い髪の、絶世の美人。水色の、ロングドレスを、着て、周りには、水が、流れてる。気品があって、クール。


風の勇者——あの、エルフの、少女。翠色の、短い髪。自分より、高そうな、長弓を、背負ってる。耳は、尖ってて、目つきが、鋭い。


土の勇者——あの、全身、マントに、包まれた、影。顔は、見えない。でも、どっしりした、重厚な、感じが、伝わってくる。


光の勇者——あの、大人っぽくて、妖艶な、お姉さん。金色の長い髪が、滝みたいに、垂れてる。露出の多い、白い祭衣を、着てて、口元には、かすかな笑み。


闇の勇者——あの、ちっちゃくて、かわいい、ロリ。紫色の、ツインテール。黒い、ゴスロリ服。抱いてる、不気味な、ぬいぐるみを、キョロキョロ、あたりを、見回してる。


七人。七人、みんな全然違う雰囲気。でも、みんな、息が、詰まるくらい、強い、オーラを、放ってる。


これが、七耀聖杯。


これが、一条煌の、ブレーン。


魔界中が、静まり返った。みんな、空の、光幕を、見てる。


で、一条煌が、口を開いた。


「魔界の、諸君。」


その声が、光幕を通じて、世界中に、響く。澄んでて、優しくて、思わず、耳を、傾けたくなるような、不思議な力が、ある。


「私は、聖王の生まれ変わり、七耀聖杯の主、一条煌だ。」


少し、間を、置く。表情が、もっと、哀れみ深く、なる。


「今日、私は、一言、ある人に、伝えたい。その人は、今、魔界に、いる。」


心臓が、どきんと、跳ねた。


「佐々木すみれ。」


彼は、私の名前を、呼んだ。


「君が、見てるのは、わかってる。」


その目が、まるで、光幕を、突き抜けて、魔界の空を、突き抜けて、まっすぐに、私を、見てるみたい。


「君が、私を、恨んでるのも、わかってる。」


その声に、かすかな、悲しみが、混じる。


「君は、私に、裏切られたと、思ってる。傷つけられたと、思ってる。地獄に、突き落とされたと、思ってる。」


「でも」


その目が、もっと、深くなる。


「すみれ、それは、全部、君を、愛してるからなんだ。」


魔界中が、どよめいた。


今、何て、言った?


「元の世界で、初めて、君に、会った時から、わかってたんだ。」一条煌は、続ける。その声は、恋人への、ささやきみたいに、優しい。「君は、選ばれた、聖処女だ。君の魂だけが、混沌魔竜を、目覚めさせる、鍵なんだ。そして、混沌魔竜は、この世界で、一番の、脅威だ。」


「私は、あいつを、目覚めさせて、完全に、倒さなければ、ならなかった。でも、そのためには、生贄が、必要だった——私が、一番、愛する人を、生贄に、するしか、なかったんだ。」


彼の目が、潤んだ。


「私が、選んだのは、君だった。なぜなら、君だけが、私が、そんな犠牲を、払う価値のある、人間だったからだ。」


「君を、竜に、捧げた、あの日は、私の人生で、一番、苦しい日だった。君が、竜の口に、消えるのを、見て、私の心は、血を、流してた。でも、わかってたんだ。これが、必要なことなんだって。こうして、初めて、君は、生まれ変われるんだって。本当の、完璧な、存在に、なれるんだって。」


「やっぱり、君は、生き延びた。魔竜を、喰らって、不死者に、なった。君は、私が、思ってたより、ずっと、強くて、ずっと、美しい。」


口元に、笑みが、浮かぶ。


「だから、すみれ、私は、自分の手で、君を、浄化したい。」


「君を、倒すためじゃない。君を、怪物的な、肉体から、解放して、元の、君に、戻すためだ。私は、最も聖なる愛で、最も汚れた魔王を、浄化するんだ。そうすれば、君は、本当の、聖処女に、なれる。そして、私と、一緒に、この世界の、頂点に、立つんだ。」


両腕を、広げる。その表情は、ほとんど、狂気じみてる。


「待っててくれ、すみれ。すぐに、迎えに行く。私が、自分の手で、君を、魔界から、連れ戻す。私の愛で、君のすべてを、浄化する。」


光幕が、ゆっくりと、消えた。空は、元の、紫色に、戻った。


——その頃、人間界、聖光神殿の、奥深く。


一条煌は、一人、がらんとした、大殿に、立ってた。


後ろの、六人の勇者は、もう、退がってる。残されたのは、彼だけ。


彼の顔から、さっきまでの、哀れみ深い、神聖な表情が、まるで、色の褪せた、仮面みたいに、剥がれ落ちる。


うつむいて、自分の手を、見る。

さっきまで、魔界中に向かって、「愛」を、叫んでた、その手。


「すみれ。」


彼は、その名前を、そっと、つぶやく。

声には、さっきまでの、熱狂は、ない。ただ、壊れそうな、疲れだけが、残ってる。


「もし、俺が……七歳の時から、一度も、ちゃんと、眠れてないって、言ったら……」

「もし、俺が……毎晩、もう一人の『俺』が、頭の中で、喋ってて、使命を、果たせって、言うんだって、言ったら……」

「もし、俺が……俺が、お前を、選んだのは、お前が、生贄だったからじゃないって、言ったら……」


顔を上げる。天井の、聖光の、壁画を、見る。


「みんなが、『お前は、聖王に、ならなければならない』って、言う中で……」

「ただ一人、俺を見て、俺の名前を、呼んでくれたのは、お前だけだったからだ。」


目を、閉じる。

一粒の涙が、目尻から、こぼれ落ちる。


でも、目を、もう一度、開いた時、その涙は、蒸発してた。


代わりに、そこにあったのは、純粋な、金色の、聖光。


「でも、無駄だ。」

声は、静かさを、取り戻してた。いや、冷酷さ、とでも、言うべきか。

「俺の中の『彼』は、止まることを、許してくれない。」


振り返って、神殿の、奥深くに、歩いていく。

その後ろ姿は、まるで、世界に、見捨てられたみたいに、孤独だった。


「だから……恨んでくれ、すみれ。」

「恨んで、強くなれ。」

「俺を……殺せるくらい、強く。」


ドアが、後ろで、閉まった。

神殿は、再び、死の静けさに、包まれた。

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