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城内探索と幽霊たちとのおしゃべり

朝食を終えて、ルシファーが用事があるから、城内を自由に見て回っていいよ、って。


「城から出るなよ。」出て行く前に念を押された。「外にはまだお前には危ない場所があるからな。」


「わかった。」


彼が行ってしまってから、城内探索を始めた。


この城、ありえないくらい広い。廊下だけでも何本あるかわかんない。くねくね曲がりくねって、まるで迷路。壁にはいろんな不気味な絵が掛かってる——動く肖像画、まばたきする風景画、それから雪が降ってる絵があって、その雪がひらひら絵の枠を飛び出して、床に落ちて本物の雪になってる。


しばらく歩いてて、気づいた。迷子になった。


「こっち……さっきも通ったっけ?」


目の前の三叉路を見て、考える。


その時、横から声がした。


「左に行くといいですよ。」


振り向くと、幽霊が隣に浮いてた。


おじいさんの幽霊だ。半透明で執事の服を着てる。態度は穏やかそう。


「左の道は中庭に通じてます。右の道は厨房です。真ん中の道は行き止まりで、突き当たりは物置ですね。」詳しく説明してくれる。「もし中庭で日向ぼっこをお望みなら、左が一番です。」


「あ、ありがとう……ございます?」


「どういたしまして。」おじいさん幽霊はお辞儀をした。「私はこの城の前の執事です。死んでもう三百年になります。普段は誰にも見えないんですが、あなたには見えるんですね。特別な能力をお持ちのようだ。」


「私、死霊術士なんで。」


「なるほど。」うなずく。「死霊術士は死者が見えて、死者と話せますからね。それは魔界でも珍しい能力ですよ。」


そう言って、彼はふわっと消えた。


しばらくぼんやりして、また左に歩き出した。


少し行くと、また幽霊に出会った。


今度は小さな女の子。ぬいぐるみの人形を抱えて、隅っこにしゃがんで泣いてる。


「どうしたの?」しゃがんで訊く。


顔を上げる。涙でぐしょぐしょの目で私を見る。「あのね、あのね……お人形さんが壁の中に落ちちゃったの……」


壁を見る。頑丈な石の壁だ。


「あの……確かに落ちたの?」


「うん!壁の中にすーって入っていっちゃったの!」


私はしばらく黙った。


幽霊のおもちゃが頑丈な壁の中に落ちた。


これ、どういう物理法則?


「見てあげる。」


手を壁に当てる。目を閉じて体の中の死霊の力を呼び起こす。


壁に穴が現れた——本当の穴じゃない。私だけに見える、幽霊世界に通じる穴だ。中には半透明のお人形が横たわってる。


手を入れて、それを取り出した。


「はい、どうぞ。」


女の子はぱっと笑顔になった。人形をぎゅっと抱きしめる。


「お姉ちゃん、ありがとう!」


人形を抱いて走り去ろうとして、数歩行って、振り返った。


「お姉ちゃんはいい人!今度、幽霊飴ごちそうするね!」


そう言って消えた。


立ち上がって、また歩き出す。


その後の道中で、また何十人もの幽霊に出会った。


道を尋ねる幽霊。伝言を頼む幽霊。城が寒すぎるから毛布を追加してほしいと愚痴る幽霊。家族に手紙を書いてほしいと頼む幽霊——彼らは死んで何百年も経ってるのに、家族はとっくにいないのに、それでも毎年手紙を書くのをやめない。


一人また一人と手伝っていった。


やっと中庭にたどり着いた時には、もう腰も背中も痛くて、クタクタだった。


中庭のベンチに座る。空を見上げる——魔界の空は紫色で、三つの月が浮かんでる。大きいの一つと小さいの二つ。不気味な光を放ってる。


「へえ、死霊術士ってこんな仕事なんだ……」


ぽつりとつぶやく。


幽霊の落とし物を探してあげて。幽霊の伝言を届けてあげて。幽霊の手紙を書いてあげて。幽霊の愚痴を聞いてあげて……

これ、どこが暗黒の禁忌の職業だよ。どう見たって幽霊界のご近所付き合い、そのものじゃん。


「何やってるの?」


突然、声がした。


振り向くと、ベルゼブブがいつの間にか隣に座ってた。手にはアイスクリームのバケツ——あの不気味なブルーのやつで、煙まで出てる。


「アイス食べる?」差し出してくる。


ちょっと迷って、一口もらった。


味は意外と悪くない。ミントチョコレートの変わり種みたいな感じ。ひんやりした感覚が口の中に広がって、食べ終わると口から白い息が出る。


「美味しい。」言った。


ベルゼブブは嬉しそうに笑った。


「さっき、あんたが幽霊たちと話してるの見たよ。」彼が言う。「あんた、幽霊が見えるの?」


「うん。」


「すごいな。」心から感心してる。「俺たち魔族も幽霊の存在は感じ取れるけど、姿は見えないし、声も聞こえないんだ。あんたは初めてだよ、幽霊とちゃんと話せるのは。」


アイスを一口食べる。黙ってる。


「そうそう、さっきあの小さい女の子の人形を取ってあげたの見たよ。」ベルゼブブが話し続ける。「あの幽霊たち、みんなあんたのことが大好きになったみたい。」


「そうなんだ。」


「うん。あの連中、もう三百年も誰とも話せなかったんだ。あんたはあいつらにとって、まるで暗闇に突然現れた光みたいなもんだよ。」


ちょっと驚いた。


突然現れた光?


うつむいて、手の中のアイスを見る。


この見知らぬ世界で。この化け物ばかりの城の中で。私、やっとちょっとした存在意義を見つけたのかもしれない。


ただ幽霊の使い走りをしてるだけ。ただ彼らの愚痴を聞いてるだけ。でも——


少なくとも誰かに必要とされてる。


いや、何かに必要とされてる。


「あの……」


何か言おうとしたその時、激しい揺れが突然襲ってきた。


中庭全体が揺れてる。地面がひび割れる。石のベンチが倒れる。私の手からアイスのバケツが飛んでいった。


「何、これ?!」


ベンチの手すりにつかまって、体を支える。


ベルゼブブの表情が変わった。


「誰か侵入した。」


彼の声から、初めてあののんびりした感じが消えた。


「それも、かなり強い奴だ。」

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