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コメディ

トイレットペーパーを握った者が勝者です

作者: しぃ太郎

※主人公はちょっと性格がひねくれていますが、

被害者は主に火力バカ(褒めてます)の幼なじみです。

深刻な悪意はありませんので、ゆるくお楽しみください。

 

 

 私の固有魔法は、かなり特殊だった。いい意味ではない。 悪い意味で。

 

 身近な生活用品を手元に出せる。 それだけだ。

 

「おい、ティッシュ。年中鼻炎で手放せないな」

「はい、どうぞ」


 私は、固有魔法で取り出した。


「お前の固有魔法って本当に地味だな……。俺には役に立つが」

 地味。 確かにそうだけど。 私は満足している。


 ◇◇◇


「リナちゃん。カイくんって結構横暴じゃない?人の魔法を地味呼ばわりとかさ……。それに随分と口が悪いし……」

「うーーん。大型犬みたいだよ?」

「え?」

 

 最近、編入してきた同級生に心配される。

 しかし、私の答えに、別の友人が苦笑いする。


「その例え、まさにって感じだね」


 カイは誤解されやすい。

 やはり、もう一度カイと話をするべきか……。

 そう思いながら、私はその子に微笑み返した。






 体育の授業中。

 いきなり、周囲から声が上がった。

「避けて!」

 目の前に迫るボール。

 当たれば、確実に怪我をする……!


「固有魔法――!」


 とっさに詠唱する。

 その瞬間、私の前によく見慣れた背中が現れた。


「よくわからないけど……ピンチなんだな!?」


 私を庇い、

 カイの高出力の火炎魔法が辺りを焼き尽くした。

 

 周囲は大惨事だった。

 教師陣が校舎から出てくる。


「お前ーー!威力を考えろ!……消火だ!急げ!いつもの通り、カイだーー!」

「ごめん。また呼び出しちゃった」

「いや。リナは悪くないだろ。それに……お前に必需品扱いされるの嫌いじゃない……」


 彼は私から顔を背けて呟いた。


「お前らぁぁ!!この状況でイチャつくなぁ!!消火が先だ!!」 

「「はい!」」

 

 教師に叱られて、二人して背筋を伸ばす。

 水魔法で、消火されていく校庭。

 私も、バケツを持って走り回った。

 

 一応加減している為か、彼の魔法は人的被害が少ない。

 それが救いだ。

 教師の怒声を浴びながら、私の前に立つカイに声をかけた。


「あ〜……。ありがとう」

「いや……。無事でよかった」

 彼は、少し照れくさそうに、鼻の下を擦ったが――。


「「けど、これ、この後叱られるやつだ」」

 私たちは、揃って肩を落とした。


 ◇◇◇

 

 昼食は、いつも私が二人分作っていく。

 今日は、母直伝の玉子焼きと唐揚げが中心だった。

「リナ……邪道だ。これは駄目だ」

「え?」

 「玉子焼きは出汁巻き一択だろ」

 

 それを一口食べたカイは私に弁当箱を突き出す。

 意味がわからなかったが、熱弁しているカイの言葉を聞き流しながら、お弁当を食べた。


 ――うん。普通に美味しい。

 この良さがわからないとは。我が家にケンカを売っている。

 そしてお楽しみはこれからだ。


 ◇◇◇


 実は『生活用品の取り寄せ』は、私が選択した空間から『日用品』を移動させているのだ。

 

 ――だから。


「さっきは悪かった!全面的に俺が悪い!だからトイレットペーパーを戻してくれーー!!」

「じゃあ、反省する?……でも、言葉だけじゃ信じられないな〜」

「甘い卵焼きに文句はつけない!大好物になるから!」

 

 個室の向こうから、切実すぎる叫びが響いた。

 カイの必死な声に、口元を引き締めて告げた。


「よし、許す」


 私は静かに魔法を解除した。


——トイレットペーパーを握った者が勝者である。

 私のケンカの勝率は100%だ。

 そして彼は今日も、私に逆らえない。


 でも、憎めないわんこだから、後でフォローしておこうかな?

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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