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――数日後。



「……ついに明日から夏休みか」


「ですね、夏休みです」


かりかりとプリントにシャーペンを走らせる赤月さん。


ついに学生の待ちに待った長期間の休み。夏休みが明日から始まる。


夕食を終えた俺と彼女は、俺の部屋でテーブルに向かい合って宿題をしていた。夏休みの宿題。小学生や中学生のときはギリギリまで放置して、最終日に死に物狂いでやっていた夏休みの宿題。


それをまだ夏休みの始まるまえだというのに、俺と赤月さんの二人は手をつけ始めている。


「夏休みの宿題なのに、夏休みじゃない今に手を付けていいのだろうか……」


「夏休み中でないとダメだとは言われてませんし」


「や、まあそうだけど」


もくもくと宿題を終わらせていく赤月さん。まずい、くだらないこと言ってないで俺もはやく進めないと。


「……よし、これでひとまず終わりです。佐藤くん、わからないところありますか」


宿題が目標としていたところまで終わったらしく、赤月さんが俺の隣へとずいずい移動してきた。


「や、まだ」


「そうですか」


ちょこんと女の子座りをして俺の手元のプリントを眺めている。


「……終わったなら先にゲームしてるか?」


「いえ、みてます。ゲームしてたら私のこと呼びづらいと思いますし」


「そんなことは……」


「ありましたよね?」


「……すみません、ありました」


ちょうど二日前くらいに。赤月さんがゲームを楽しんでいるのを邪魔したくなくて、彼女がそれに気づくまで固まってしまっていた。


それから赤月さんは基本的に俺の横に座り、俺の手元をみているか、スマホを触っているか、俺のスマホで漫画を読んでいる。あと、たまに寝てる。


「赤月さん」


「はい、なんでしょう。どこですか」


さらに近づき俺の手元を覗き込んでくる。


「あ、いや宿題の話じゃなくて……」


むっ、とした顔をして睨見つけてくる赤月さん。


「……今日は集中力がなくていけませんねえ」


「ご、ごめん」


「なんですか?」


「や、その……夏休みの予定って何かあるのかなと」


「夏休みの予定?」


「ああ」


「ありませんが。強いて言うなら、家庭教師バイトくらいですかね。まあそれも毎日ではありませんが。なにかありましたか」


「や、せっかくの夏休みだし、何かしないのかなって……どこか遊びに行ったりとか」


「……」


不思議そうな顔をする赤月さん。そりゃその顔になるよな。赤月さんは吸血鬼の欲求があるから、一人で自由に遊びに外へ出たりは出来ない。ましてや人で混雑している夏休み中は特に。……それを知ってるのになんでそんなことを聞いてくるんだろうって顔だよな、それ。


「その、一人でそういう事できないのは勿論知ってる……けど、いまは俺がいるからさ。……だから、どっか行かないか」


「どっか?」


「うん、遊びに行かない?」


「……」


赤月さんは口をわずかに開いて、ぽかんとしている。……なんなんだ、この無言は。割と勇気をだして言っただけに、この反応は怖いんだが。


「どこに行くんですか」


「え……や、具体的なことは赤月さんと決めようと思ってたから、決めてない」


「……そうですか」


「赤月さんどこか行きたい場所ある?」


「ひとつあります」


「お、本当か?どこ?」



「……私、夏まつりに行きたいです」



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