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――ぽとり。


「……?、なんですか、これ」


「え?」


怪我で趣味の掃除がままならない俺は、赤月さんにフォローしてもらいつつ一緒に自室を片付けていた。すると、かけていた制服からひとつの折りたたまれた用紙が床へと落ちた。


「……小テスト、18点……」


ぼそりと赤月さんが呟く。俺はその瞬間、真っ青な顔になる。


「……これ、昨日もどってきた数学の……」


「……まあ、だな」


ジッと答案用紙を眺める赤月さん。あまりの点数の低さにドン引きされるかと思いきや、その表情は思いのほか普通だった。というか、何を考えているんだろう……まじまじとみている。


「ここ、どうしてこう計算されたんですか」


「それは、えと」


二十分後。


「……ああ、そうかなるほど。だからここはこの式をつかって」


「ですです」


「やった!全部綺麗に解けた!!」


「えらいです!」


「ありがとう!」


……って、は!?なんか流れでテストの復習してる!?


掃除を手伝って貰っていたのに、余計なことさせてしまった。赤月さんだって暇じゃないのに。


「……なんか、悪い」


「え、何がですか?」


「いや、変なことに時間つかわせて……掃除の手伝いだったのに」


「いえ、大丈夫ですよ。でも、わかると楽しくありませんか、こういうの」


「たしかに楽しい……答えが導き出されていく過程も、それが合っていると確信した瞬間も」


「テストをみるに、佐藤くんは勉強が嫌いなんだと思いました。でも、こうしてちゃんと解けるようになるとやはり勉強も楽しくなってきますよね」


「まあ、そうなんだろうな。でも、それは赤月さんの理解力があっての話だ……俺には普段の授業はちんぷんかんぷんだから」


「それはそうでしょう。理解力というよりは基礎的なことができてませんから……それを習得している前提での授業は、知らない人にはわかるはずもありません」


「まあ、確かに」


いや、そうなんだよな……今まで全てをおざなりにしてきたツケ。


「けど、すごいよな」


「?、なにがですか」


「そんな基礎のない俺にもこれだけわかりやすく教えて、答えを出させられた。それってすごいよ。なんだろう、赤月さんの言葉は不思議とすんなり入ってくるし……教えるのが上手いんだな、多分」


赤月さんは少し恥ずかしそうで嬉しそうな顔をした。


「……ありがとうございます。一応、そういう事でお金をいただいていますので」


「?、どういうこと?」


「……私、ときどきオンライン家庭教師のバイトをしているんです。姉の紹介で」


……え?オンライン家庭教師……高校生で?


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