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翌朝、朝日が瞼を照らし目を開ける。ぼんやりとする視界の端、真横にいた一人の女性のこちらをジッとみる視線に気がつく。


「……おはようございます、佐藤くん」


「あ、ああ……おはよう」


言うまでもなく、その女性とは赤月さんだ。彼女はじっと俺の顔をみて、にこにこと微笑んでいた。


(……ああ、そっか……俺、昨日赤月さんと一緒のベッドで……)


「赤月さん、いつからおきてたの?」


「……だいたい、三十分前ですかね。ずっと佐藤くんの寝顔を鑑賞してました」


「なんと悪趣味な……俺の顔なんかみて何が楽しいんだよ」


「え、楽しいですよ。佐藤くんの寝顔は、あどけなくて可愛いです」


突っ伏した腕に顔を埋め、目を細める赤月さん。いやあなたの方が可愛いですけど……なんて、昨日あれだけ寒いセリフを連発した俺だったが言えなかった。雰囲気と勢いって大事だよな。


「……可愛い」


「はいっ、可愛いです」


ていうか……あれ、なんか赤月さんメンタル回復してる?


「……赤月さん、なんか元気だね」


「はい!」


「なんか、無理してないか?大丈夫?」


「大丈夫ですよ、佐藤くん。いつまでもへこんでなんていられません。昨日あれだけ佐藤くんに甘やかして貰っておいて、まだうじうじしてるとかダメ過ぎますから」


「そ、そう?」


「そうです。うじうじしてても佐藤くんの怪我が治るというわけでもないですし……そんなことをしている暇があるのであれば、佐藤くんの介助を元気いっぱいでする方がいいと思いました」


「おお、偉いな」


「偉い?」


「あれだけへこんでて、この短い時間で立ち直って前を向けるって……偉いなって思って。すごいよ、赤月さん」


「ありがとうございます」


赤月さんがにんまりと微笑む。


「朝ごはん作りますね。ご飯とパンどちらが良いですか?」


「それなら、パンで」


「わかりました!準備できるまで、ゆっくりしててください。あ、それと、何か助けが必要な事があれば遠慮なく言ってくださいね」


「うん、ありがとう」


確かに暗い顔されてるより、ああして笑顔で居てくれたほうが気持ちも楽だしな。……赤月さんて、こうしてみると結構お嫁さん向きな性格だよな。少し内向的な面もあるけど、なれてくると元気いっぱいで明るいし……へこんでもすぐにちゃんと立ち直れるメンタルの強さがある。


子供にとってもいいお母さんになりそうだ。


(……顔洗って、歯磨きするか)


ベッドから立ち上がり洗面所へ。そこには以前成り行きで泊まった時に赤月さんが出してくれた歯ブラシとカップが置いてある。


ふと洗面台の横をみると、俺用の黒色のタオルが用意されていた。


……気が利くな。ほんと、いいお嫁さんになる。



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