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色々考えた末、俺は赤月さんの隣で眠る事にした。よくよく考えてみれば、別に変なことをするわけでもないしな。ただ、横で寝るだけ……実際、多分眠れないから横になるだけだが。


ベッドに二人寝るのは最初狭そうで大丈夫かと心配したが、寝てみるとそれほど窮屈でもなかった。赤月さんのベッドは意外と大きめで、小さく見えていたのは大量のぬいぐるみのせいだった。


ちなみに黒猫さん佐藤くんは赤月さんの隣に置かれていた。大事にされそうでよかったな、佐藤くん。さっき顔面踏まれてたけども。


背中合わせで眠る俺と赤月さん。さっき変なことするわけでもないから余裕みたいなこと言ったが、実際は変なことするわけでもないけどそれでも緊張して心臓はばくばくになる。


だって女の子と一緒のベッドだぞ。そら、その気じゃないしそんなこと起こらないだろうけど、どきどきしちまうだろ。


背中に触れている赤月さんの温もりが余計に心拍数をあげていく。


(……赤月さんは寝ているのだろうか)


いや、寝息が聞こえない。きっと起きてる。


「……赤月さん……?」


「……はい」


「眠れないのか?」


「……いえ」


これはそうとうだな。俺が何かあった時の為に起きてる可能性もある。気持ちは分かるけど、寝てほしいな……どうやって寝てもらおうか。


「不安なの?」


「……まあ」


「何がそんなに不安なんだ?」


「……」


思えば……何がそんなに不安なんだろう。自分のせいで怪我をさせた、それがこうなった原因であるのは間違いない。けど、なぜこれほどまで側にいようとするんだ?


役に立ちたい……その気持ちは本当だと思う。けど、不安になる理由はなんなんだ?


赤月さんの立場になって考えてみよう。


自分の不注意で俺が彼女に怪我をさせてしまった。怪我で不自由になってる腕……役に立ちたいと俺もそう思うだろう。


あとは……謝る、か?


それが事故だとしても、酷い目にあわせたことは事実だ。精一杯謝る……。


なぜ、謝る?


ふと思考が行き着く。その気持ちは前に俺が覚えたそれに似ていたから、そこにたどり着くとストンと腑に落ちたような感覚になる。


……嫌われたくない、からか。


(……ああ、そうか)


赤月さんは、俺が居なくなるのが怖いのかもしれない。


学校以外の時間はずっとひとりの生活が続いていたんだ。お姉さんも滅多に帰って来ない、体質のせいで外にも遊びにいけない……そんな孤独の中にいて、やっと出来た一緒にいてくれる存在。


一緒にいるだけで、楽しくて嬉しくなる存在。


もしかしたら、それが消えてしまうかもしれないという恐怖か。


これまで俺もずっと一人だったから、その気持ちはよくわかる。もしも赤月さんが怪我を負わせたことで疎遠にでもなってしまったら、俺は寂しくて絶望して泣いて今度こそガチの引きこもりになるだろうし。


(……この考察が当たっているかはわからない。もしかしたら的外れかも)


でも、出来ることがあるならしたい。例え的外れで気持ち悪がられようと、赤月さんの不安を少しでも消せるのなら。


寒いセリフの一つや二つ。


「……赤月さん、大丈夫だよ」


「……大丈夫?」


「俺は居なくならない」


「……」


「ちゃんと、ずっと赤月さんの側にいる。寝てる間にどこかに行ったりしない。だから安心して」


我ながらガチで寒いセリフだと思った。イケメンだとカッコいいんだろうけど、俺が言ったところでしまらないなぁと絶望した。


けど、気持ちは伝わったのか、赤月さんがこちらに体を向けた。


「……少しだけ……手を、繋いでいいですか……」


「手を?」


「……はい。わがまま言ってごめんなさい……けど、手に触れていたいです……すぐに離してもらってもいいので、少しだけ……」


俺は手を繋ぐために仰向けになった。怪我してる手とは反対の手が赤月さんの方にある。


「うん、いいよ」


「……ありがとうございます」



赤月さんの指が俺の指の間に滑り込んだ。


カーテンの隙間から覗く月は、やはり白く綺麗だった。


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