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赤月さんとこのソファーに座り、ゲーセンでとった写真を眺める。彼女は今入浴中で、今ならばニヤケ顔でいても気持ち悪がられずに済む。


彼女が俺の腕に絡みつく写真の他にも色々と撮った。中でも凄く可愛いのは赤月さんのガオーポーズ。ちらりと見える歯。やっぱり犬歯が長いのか、口を開けていると目立つ。八重歯みたいで可愛い。


(この赤月さんの写真、アクスタにできねえかな。部屋に飾っときたいな……キモがられるかな)


ふとテーブルの上に置かれた黒猫さんぬいぐるみに目をやる。こいつの名前は奇遇なことに俺と同じ佐藤くんと言う。名付け親は赤月さんだ。


……実にうらやましい。赤月さんの部屋に帰ってきてから彼女はずっとこの佐藤くんを抱き抱え頬ずりをしていた。同じ佐藤の姓を持つものとしてジェラシーを感じざるを得ないよ俺は。


しかも、「好きですよ、佐藤くん。ぎゅう〜っ」とか「ふふ……可愛いですねぇ、佐藤くん」「よしよし、良いこです。佐藤くん、なでなで」とか言いながら愛でられてて、隣で聞かされてた俺マジで生殺し状態。


ジッと佐藤くんを睨みつけていると扉が開いた。パジャマ姿の湯上がり赤月さん。ほんのり頬が赤い。


「……ただいまです」


「ああ、おかえり」


「佐藤くんもシャワーはこちらで?」


「あ、良いかな」


……ちょっと踏み込んでみたり。色んなところから距離を縮めていく策戦。


赤月さんはにこりと微笑む。


「はい、勿論いいです。ちょっと待っててください、タオルとか用意しますから……」


「あ、そんな慌てなくていいよ」


と、その時赤月さんの手に当たった佐藤くんのぬいぐるみが床に落ちた。彼女に顔面を踏みつけられる佐藤くん。うらやま……じゃねえ!!


「あっ、きゃ……!?」


「あぶね!!」


倒れ込む赤月さん。間一髪俺は彼女の体を抱き寄せる。しかし俺に人一人分の体重を支えることは出来ず、そのままこけた。


(……ってえ……)


みれば赤月さんは俺の上に乗っていた。結構な痛みが腕に走ったが、赤月さんを守れたことと彼女の顔が至近距離にあったことで痛みが意識から外れる。


……ち、近……鼻先が、触れ……。


「……」


「……」


驚き目を見開く。鏡合わせのような互いの表情。息をするのも忘れ、固まる……。


しかし、不意に赤月さんの雰囲気が変化したのを感じた。


なんとなく、甘いような空気感が……。


(……え、あ……ま、待って……それ以上は、)


柔らかな感触。


赤月さんの香りが近づく。


唇の距離がゼロになった。



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