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一緒の嬉しいと楽しいを……。
「わかった。一緒の趣味を作ってこう」
「はい!」
なんだか照れくさい。赤月さんも多分、そんな風に感じているんだろう。頬が赤く染まっていた。
「……それじゃ、とりあえずあれやって帰ろうか」
「はい、やりたいです」
空いている筐体を探し、入り込む。赤月さんが俺の背負っている袋からぬいぐるみを取り出した。
「この子も一緒に」
「そうだな。せっかくの戦利品だし」
「戦利品であり、佐藤くんは家族なのです」
……無駄にどきどきさせてくるのやめてくれないか。
「大切に想ってくれてて、嬉しいよ」
「……はい、私は佐藤くんのこと、大切に想ってます」
お金を入れ、タッチパネルを操作する。色々と相談しながら設定を決める。そして、シャッター音が鳴った。
出来上がったその写真は、俺の腕に赤月さんが抱きついて頭を寄せていた。にこりと微笑み、幸せそうに。
……好きだ。
(これって、赤月さんはどういう気持ちでこういう行為をしているんだろう)
ふと思った。彼女が俺といる理由……お礼以外の理由はなんだろうと。
やっぱり血をもらう相手だから、好意を寄せて貰えるようにしているとか?
俺は俺を好きになってもらおうとはしているけど、それでも今現在の俺なんかを彼女が好きになるはずない。だったら、そういう可能性の方が高い……のかな。
……いや、まて。
そんな軽薄なやつか?赤月さんってそういう人か?
これまで見てきた彼女はそんな人じゃない。
あの時……他の誰でもなく、俺の血だから舐めたんだ。
利用するために誰かに近づくような人じゃない。
(じゃあ、赤月さんは俺が好きってことに……)
まて、いや……そうはならないか?もしかしたらこれが赤月さんにとっての友達の距離なのかも?スキンシップ的な?
……聞きたい。俺のことどういう風にみてるの?って。
叶うなら、恋人になりたい。
好きって感情が溢れてる。
夜、ご飯を食べた後もずっと横にいて欲しい。
なにかを観てる時も、掃除してる時も、ゲームしてる時も、ずっと赤月さんにいてほしい。
俺は、その全ての気持ちを飲み込んで抑えた。
「……帰ろっか」
「はい」
俺は手渡された写真シールを財布に入れた。
当然のように手を繋ぐ赤月さん。
……でも、もしもそういう、恋愛対象ではないのなら……答えを聞いたらこの関係は壊れる。
なら、ずっとこのまま……手を繋いでいられるのなら、このままの方がいいのかな。
「佐藤くん?」
「……ん?」
「……どこか、具合が悪いのですか?」
「いや、悪くないよ。なにも」
そう、なにも悪くはないのかもしれない。このまま……俺を好きでいてくれれば。友人でも恋人でもどちらでも。




