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「……良かったですね、佐藤くん」


「ん?」


「いえ、こちらの子の名前です」


そう言って獲得した黒猫さん巨大ぬいぐるみを抱きしめる赤月さん。びっくりなことになんと一回のチャレンジでぬいぐるみをゲットすることができた。


巨大なアームに挟まり、景品出口に落ちた瞬間、俺と赤月さんは大喜びで手を合わせはしゃいでいた。近くに人がいなくて良かったと思うくらい俺と赤月さんはキャーキャー言ってた。ほんとに人がいなくて良かった。


ぎゅうっ……っと、幸せそうな表情で抱きしめられる、佐藤と名付けられた黒猫さん。ほんとに嬉しそうで、これをみるとチャレンジして良かったなと心の底から思う。……けど、名前……佐藤くんかぁ。


「……そんな名前でいいの、その子」


「そんな名前とはなんですか。失礼じゃありませんか、佐藤くんに」


「いや俺は気にしないけど」


「こちらの黒猫さん佐藤くんに失礼だといったのです」


「いや、ややこし!」


くすくす笑う赤月さん。まあ、本人がいいならいいけども。……しかし、うらやましいな佐藤くん。出来ることなら、そこを代わってほしいぜ。


「とりあえずスタッフさんにぬいぐるみを入れる袋貰おうか」


「袋をいただけるんですか」


「ああ、多分な。あっちだな、行こう」


「行きますよ、佐藤くん」


「え……?ああ」


「この黒猫さん佐藤くんに言ったのです」


「いや、ややこし!」


戸惑う俺をよそにすげーご機嫌な笑顔の赤月さん。いやマジで黒猫さんとれてよかった。ガチで嬉しいわ。


愛おしそうにすりすりと頬を擦り付け目を細める赤月さん。でれでれと溺愛される佐藤くんを抱える彼女の手を引き、俺はゲーセンのカウンターを目指した。


それから無事黄色いビニールの袋を貰うことができた。袋には紐がついていてリュックのように背負えるようになっていて、俺がせおうことにした。


「佐藤くんを背負う佐藤くん……ややこしいですね」


「いやあなたがつけた名前ですけど」


「ふっふっふ。またしてもやってやりました」


「だから、なにをだよ」


またしても謎のドヤ顔を浮かべる赤月さん。俺の心もやられまくっとるわけですが、楽しそうで何より。


「さて……赤月さんは他になにかやりたいのあるか?」


「他に」


ふむ、とあごに手を当て思考する赤月さん。


「……もう少し見て回るか」


「はいっ」


ぱあっと明るい表情になる。どうやらまだ遊び足りないらしいな。


それからゲーセン内を見て回った。途中でバスケットボールの玉入れみたいなゲームがあって対決したが、とんでもないスピードでフープにボールを沈めていく赤月さんにボコボコにされ完膚なきまでに負かされた。服的に動きにくいはずなのに、クソ強え……。


そして、彼女は最後にあれがしたいとある筐体を指差した。


……あれって、写真シールの……あれか。



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