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カフェを出て、さっき赤月さんがみていたゲーセンへ移動した。そういう時間帯だからなのか、人がそれほど多くなく、これなら赤月さんも色々みて回れるなとホッとする。……久しぶりのゲーセン、出来のいいフィギュアとかがクレーンゲームに置いてあってビビるな。


(……まあ、その分かなり取りにくいんだろうけど)


ふとみれば赤月さんの目線があるクレーンゲームにいっていることに気がついた。それは巨大なぬいぐるみの入った筐体。みるからに取りにくそうな黒猫のキャラクターが景品として入れられていた。


「あれ、気になるのか?」


「……あ、ええ、まあ」


「やってみるか」


「あんなにおっきい子を取れるのですか?」


「わからん。けど、試しにやってみよう」


「では、私がお金を入れます。佐藤くん頑張ってください」


「いや、それはやめてくれ」


「なぜです」


「人の金というプレッシャーが……」


「なるほど、確かに……ならやめましょう」


「え、やめるの」


「佐藤くんにお金を使わせてまでは……取れる保証も無いですし」


「そうか。まあ、確かに取れる保証はないよな。でも欲しくない?可愛いよ、あの黒猫」


「それは、そうですけど」


「っていうか、俺がやってみたい。いこ」


「……え、あ」


俺は赤月さんの手を引き巨大な黒猫ぬいぐるみの入った筐体までいく。コインの入り口には三百円とかかれていた。財布には六百円……チャンスは二回か。


じーっと中の黒猫を眺める赤月さん。ああは言っていたが、やはり欲しいのだろう。目が輝いてる。……果たして俺は黒猫を獲得してカッコいいところを見せられるのか。


(……ていうか、思ったけど黒猫でいいのか?)


他の筐体にも色々なぬいぐるみがある。中には白の兎が入ったものもみかけた。ほんとにこれでいいの?


「……どうしました?」


「あ、いや。これ黒猫だけど兎のぬいぐるみとかじゃなくていいのかなって。ほら、向こうに白色の兎のやつあるから」


「これが良いです。佐藤くんのスタンプの黒猫さん」


「え?」


「この黒猫さん、佐藤くんがロインでいつも押してくれてるスタンプなので、これがいいです」


「……今気づいた。ホントだ俺が使ってる黒猫さんだ」


「この表情がいいですよね、黒猫さんは」


「表情?」


「やる気のなさそうな感じの」


「確かに言われてみればそんな顔だな」


「誰かにそっくりです」


「俺か?俺のことを言ってるのか?」


「少し前までの佐藤くんこんな顔でしたよ」


「まじか」


ふふ、と笑う赤月さん。まあ確かにあの頃っていややる気もなくだらだら日々を浪費してたからな。


「……んじゃ、そんな俺似の黒猫さんを救出してやりますか」


「はい、頑張ってください!」


コインを三枚投入。巨大アームを操作する。位置は……ここらへんか……?


ボタンを離すと、ゆっくりアームが下がっていく。


頼む、赤月さんにカッコいいところを見せさせてくれ……!



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