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二人向き合ってテーブルに座る。なぜかごく自然に隣に座ろうとした赤月さんにツッコミをいれつつ、持ってきた注文のエビカツサンドとパンケーキをテーブルにおく。……横に来てくれるのは嬉しいけど、流石に狭くて食べにくいからな。赤月さんが。てか、なんで横にこようとしたんだ。
「……ん?てか、エビカツサンドは切り分けられてるからいいけど、これどうやって半分にする?」
俺はパンケーキを指さす。取り皿なんてものもないし、どうするんだこれ。
「半分たべて、残りを渡す感じでしょうか」
「……まあ、そうしかやりようがないか」
密かに胸が高鳴ってしまう。赤月さんの口つき……つまり、これって……関節的なあれですよね。合法ですよね。捕まりませんよね。赤月警察きませんよね。実刑くらいませんよね。
「では、どうぞ」
「……え?」
パンケーキをこちらに差し出す赤月さん。なんでや!
「や、赤月さんが注文したものに、俺がさきに手をつけるのは悪いよ。さき食べて」
「それは、でも……私も悪い気がするので……」
なんか様子がおかしいな。
「全然悪くないよ。赤月さんのだもん」
「けど、嫌ではないですか……私の手がついた、パンケーキなんて」
嫌なわけないでしょう。てか、なに……先に食わせたいの?なんで?
「嫌じゃないから食べて。ほら、のってるアイス溶けちゃうよ」
「あっ」
慌ててスプーンを持つ赤月さん。いただきますして食べ始めたので俺も、同じくいただきますとエビカツサンドを食べ始めた。
……なんか、赤月さん妙に悲しそうな表情してるな。思った感じの味じゃなかったのか。
つーか、あれだな……こう見ると、ほんと最初の頃の印象とは違って色々な顔を見せるようになったな。
もともとはそうなのかもしれないけど、すごく表情が豊かになった。
「あと赤月さんの分な」
エビカツサンドは四つに切り分けられていたので、二つ食べて残りを渡す。
「ありがとうございます……では、こちらも」
赤月さんからもらったパンケーキは、大体半分になるように食べられていた。
「……あの、嫌だったら……私が全部食べますから」
「嫌じゃないってば」
「そ、そうですか」
赤月さんの使っていたナイフとフォークを手に取る。
「……あ、私水筒にお水あります……それ、すすぎましょうか」
「そんなに気にしなくていいよ」
すすぐとかさせねーよ。手を伸ばす赤月さんからナイフとフォークを皿ごと遠ざける。「あうぅ」と情けない声が聞こえたが、俺は構わずパンケーキを食べ始める。
観念したのか、赤月さんも椅子に座り直してエビカツサンドを食べ始める。
パンケーキ美味いな。ホイップクリーム多く使われてて、すげえ甘そうにみえたけど、そんなにくどくない。
「うん、このパンケーキ美味しいよ」
「あ……はい、ええ。こちらのエビカツサンドも、とても美味しいです。衣がさくさくで」
……動揺してるな。口の周りが衣で彩られとる。




