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無事、飲み物とポップコーンを購入し館内の席へとたどり着いた。


俺と赤月さんの間にポップコーンを置いて、あとは映画が始まるのを待つだけだ。


(とりあえず、これで一安心か……)


赤月さんはというと、入場特典のミニ小説の表紙を眺めている。無料冊子とは思えないクオリティのイラストが描かれていて、イラストレーターさんの作品に対する愛を感じる。このイラストだけが特典でも来場者増えるんじゃなかろうか。


ふと会場が暗くなり始めた。もう時間か。


とは思ったものの、始まったのは本編ではなく他の映画の予告や映画の鑑賞マナー映像。思い出した、そういやこういうのって本編始まるまでちょっと長いんだよな……。


暇してないかと思い、ちらり赤月さんを横目でみる。するとにまにまとほほ笑んでいた。映画ドロボーがそんなに面白いのか……けど、楽しそうにしている彼女をみるとこちらまで気分があがってくるのを感じる。


一人だとつまらない、暇な時間も彼女となら楽しく過ごせるのだと改めて感じた。


やがて本編が始まり、内容がとても面白かったのもあり体感あっという間に上映が終了してしまった。エンドロールでは有名なアーティストの曲が流れていて、こんなのこの作品には合わないだろ……と思っていた俺を殴りたくなるくらい、歌詞とメロディーが作品にマッチしていて作品の余韻と感動に拍車をかけた。


(……あかん、鼻水と涙が……)


嗚咽を必死に堪え、やがてエンドロールも終わり会場が明るくなる。


「……う、ぅう……」「……ぐすっ、ふ……」


互いの啜り泣く音を聞き顔を見合わせる。俺も赤月さんも涙で酷いことになっていた。赤月さんのお鼻がティッシュで擦りすぎたのか赤い。


「……まさか、原作に加筆されて別の話も観られるとは……ぐすっ」


「そうだな、あれは……ほんと、主人公の親友はいいやつ……」


感想会が始まりかけたころ、会場清掃の係員の方がみえた。そろそろ出ないと迷惑だな。赤月さんもそれを察知したのか、荷物を持って席を立った。


「行きましょう」


「ああ」


それから、シアターを出て適当な休憩スペースへ。残りの飲み物とポップコーンを食べながら映画の話をする。ただし、口に出すと他のお客さんにネタバレしてしまう危険があるので、ロインで。


『俳優さんの演技力も素晴らしかったですね』


『確かに。主人公とヒロインの心が通じ合った時の表情は神がかってたな』


『ですです!思い出しただけで泣けてきます!』


……ぐすっ、と赤月さんの鼻をすする音が聞こえた。


もちろん俺も目頭が熱くなっていた。


何回泣くんや、俺ら……。




【重要】

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