49
赤月さんと手を繋ぎ、売店の前に並ぶ。
幸い俺の前後もカップルのようで、同じ様に手を繋いでいたので目立たずにすんだ。……まあ、俺と赤月さんはカップルではないんだが。
まださっきの熱が抜けないのか、赤月さんの頬は赤いまま。
(少し心配だな……まあ、俺も顔赤いだろうけど)
その時ふと気がつく。あれ、これってもしかして……赤月さんの顔が赤いのって、血が足りなかったとかそういうのじゃないのか?
ひょっとして俺と同じで、シンプルに恥ずかしがってる?
ちらりと赤月さんをみる。すると偶然タイミングが合ったのか、目が合った。
(……あ)
しかしすぐに逸らされた。……やっぱり、これってただ照れてるだけ……?
もしこれが嫌がって目を逸らしたのだとしたら、この状況自体おかしいことになる。向こうから手を繋ぐなんてしないはずだろ。
嫌われてないけど、目を逸らす。これは照れてるだけの可能性が高い。
握ってる赤月さんの手がしっとりとしている。
汗かいてるのか。
「……ポップコーンとか、食べる?」
「……」
一瞬ぽかんとした顔になる赤月さん。可愛い。
「……美味しい、ですからね」
「ああ。買っとくか……ふたつ」
ちらりとポップコーンを持っているお客をみる。あれ小さいサイズだったよな。けっこう多くね?
「……あの、佐藤くん」
「ん?」
「私、ひとつは食べきれません……なので、やっぱりいいです」
赤月さんも同じ人をみていたのか、やめると言い出した。けれど、食べたいというのは本当なはず。問題は量だけだ……であれば。
「じゃあ俺とわけよう」
「……え」
「一つのポップコーンを二人で食べよう」
「そんなの、悪いです」
「悪くないさ。俺も一つは多いなと思ってたところだし」
嘘はついてない。本当にそう思ったし。
「……そうですか」
「ああ。味は何にしようか」
「……味……」
赤月さんの目がカウンターの上にある、商品一覧が並ぶ看板にいく。そこには塩、キャラメル、バターの三種のポップコーンの看板もあり、じっと赤月さんが見つめる。
「……塩?」
塩の方に視線がずっといっているので聞いてみた。
「美味しいですよね、塩。……佐藤くんは何味が好きなんですか?」
「んー、俺はキャラメルがいいかな」
「ではキャラメルにしましょう」
「いや、半々だな」
「……!」
俺は指をさす。ポップコーンの種類が並ぶ看板の端。そこには二種類の味を楽しむ事ができると書いてあった。
「なるほど、半々……ですか」
「塩も食べたいし、キャラメルも食べたい……赤月さんもキャラメル食べてみない?」
甘党っぽそうな赤月さんは気に入ると思うんだが。
「……食べます」
「よし。おっけー」
にんまりと微笑む赤月さん。……少しは恥ずかしいの和らいできたかな。




