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握りしめる小さな手。


俺は赤月さんの手をひいて人混みに飛び込む。なるべく彼女に負担がいかないよう、スペースをつくるようにして。


だが、あまり急ぎすぎて彼女がこけたりしてもまずい。赤月さんの歩くスピードを考えて、無理のない歩幅で。


「大丈夫か?」


「はい、大丈夫です……!」


大丈夫そうじゃない顔で笑った。もう血が欲しくなってるんじゃなかろうか。いや、俺と同じくこの人混みに気分が悪くなっているのかもしれん。


赤月さんだって、これまで遊びに行くことや街に出てくることが無かったといっていた。こういうのが辛いと感じていてもおかしくはない……。


「そこの階段あがろう」


「はい!」


エレベーターやエスカレーターよりも階段のが人がいなさそう。っていうかエレベーターはあの狭い空間で男に囲まれたら絶対やばい。


そうして一階から映画館のある四階まで上がってきた。少し人が少なく感じる。いや、それでも十分多いんだが……さっきの一階よりはマシと言う意味で。


やっぱり昼時だからだろうな。一階はカフェやレストランの飲食店が多いから。


「……大丈夫?」


こくこくと頷く赤月さん。大丈夫じゃなさそう。顔赤いし。これは血を舐めたくなってるな……。


俺はあたりで人目につかなそうな場所を探す。どこかないか……最悪、映画で暗くなった隙に舐めさせるしか。それか多目的トイレかな。


と、その時、ふと良さげなところが目に入る。トイレが男女ならぶその向こうの通路。突き当たりにはなにもなく、人がだれもいない。


「赤月さん、あっち行こう」


「……あ、はいっ」


連れてきた人のいない場所。しかし来てみてわかったが、わりとトイレに並んでいる人達からこちらが見える。


「あの、佐藤くん……どうしてここに?」


「赤月さん」


「は、はい」


「少し血を舐めとかないか?」


「……へ……こ、ここで……?」


「俺のこのシャツを赤月さんに被せて隠すから」


「……あ、え……あの、それは……でも」


「映画の途中で辛くなったら困るだろ」


「……」


顔が真っ赤だ。これは結構ヤバいな。気まずいのか目を逸らす赤月さん。


「せっかく来たんだ。楽しく映画観たいだろ……舐めてくれないかな」


「……っ……でも、だって……みんな、みてて……」


「ちゃんと隠すから」


ちなみにこういう時には、肩ではなく指を舐めさせる。学校とか少しの時間で吸血衝動をおさめるための応急的な処置。けれど、これをすることによって数時間もつので、仮に症状が出ていなくてもどのみちやっといたほうがいい。


「……わ、私……」


涙目になる赤月さん。いや、そうなるよな。いつもはちゃんと人気のない場所で舐めてるから。指とはいえ落ち着けないし、わりと恥ずかしいんだろう。


けど、これも赤月さんに映画を心から楽しんでもらうためだ。


「赤月さん、お願いだ。……してくれないか?」


握る赤月さんの手に力がはいる。うるうると涙目がぎゅっと閉じられ、わずかに頷く。よし、やった!


俺はシャツを脱ぎ、インナーになる。そして脱いだものを彼女の頭の上から被せ、中に手を入れた。


赤月さんの呼吸がすげえ激しい。どうやら限界だったみたいだ。


「……っ、……は…………ぅぅ」


赤月さんは両手で俺の入れた手を掴み、人差し指に彼女の舌先が触れた。


【重要】

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