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「おはようございます、佐藤くん」
「ああ、おはよう。赤月さん」
いつものように白い変装ようの帽子を被り、綺麗なワンピース姿の彼女が部屋へ迎えにきた。黒縁眼鏡がやっぱり似合っていて可愛い。
「今日、天気いいみたいだよ」
「ですね。もうすでにお日様が眩しいです」
今日は赤月さんと映画を観に行く日である。玄関で靴を履き、外へでると赤月さんの言う通り日差しが強く眩しい。
陽に照らされる彼女の横顔は美しく、どこか神秘的で、天使が迎えにきたかのような錯覚に陥る。
(……冷静に考えて、これってデートみたいなもんだよな)
もちろん、赤月さんはおそらく友達とただ遊びにいくって感じなんだと思う。普段の感じから俺が男として見られてないのは明らかだし、なんなら子供扱いされてるふしもある。
だから、例えデートみたいだって思う瞬間があったとしても変な事をしないように気をつけないとな。まずはしっかり着実に赤月さんの中の俺のイメージを良くすること。
ここで雰囲気やノリに流されて欲望のまま手をつなごうとかすれば、たちまちイメージダウンに繋がってしまうからな。
(……うーむ……)
なんか異様に緊張する。……や、そりゃ緊張もするか。だって好きな人と映画行くんだぞ。しかも相手があの赤月 蘭ともなれば尚更。
「……大丈夫ですか、顔赤いですけど。水筒ありますけど、お水のみますか?」
「や、大丈夫」
「そうですか」
「うん。……あの」
「はい?」
「そのワンピース似合ってるな……胸元のリボン、すげえ可愛い」
「……え、あ」
少し驚いた表情の赤月さん。ちょいちょいとリボンに触れ、彼女は微笑んだ。
「ありがとうございます。佐藤くんも、そのお洋服似合ってますよ」
「あ、そう?……ありがとう」
「買われたのですか」
「うん……まあネット通販だけど」
「カッコいいです」
くうーっ!!お世辞だとは思うが、嬉しい!!
あの日、赤月さんの買い物を手伝おうと後を追った時からずっと自分の服装が気になっていた俺。ネットで色々検索して、見様見真似で揃えてみたのがこれだ。
なかなか着る勇気も機会もなくてずっと置いておいたんだが、今日着ないでいつ着るんだよって思ってひっぱりだした。
あんまり派手すぎない感じの明るめなカジュアルコーデ。水色のチェックのシャツに、下はネイビーのジーンズ。
「帽子が白色でお揃いです」
俺の手に持っている白色のキャップを指差しにこにこしている。
「え、ああ……そうだな」
お揃いだからなんなんだろう。いや、もちろんそこに深い意味はないんだろうけど、無駄にドキッとしちゃったわ。
俺は帽子を被り、マスクをした。今日は街中に行くからな。土曜日だしウチの学校の奴らと出くわす確率も少なくないだろう。気づかれないよう、しっかり気をつけていかないとな。
赤月さんがふわりスカートを翻し、手招きした。
「しゅっぱーつ」
明るい声で天使がそういった。
【重要】
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