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『佐藤くんはこちらの作品を知ってますか』


赤月さんが帰ったあと、一時間くらいしてロインがきた。メッセージと共に添付されていた、映画の告知URLリンク。


タップしてみると、それは小説原作の恋愛映画だった。


(……あ、これ読んだことある)


原作ではなくコミカライズの方だが、内容は知っている。ストーリー的には高校生の男女がすれ違いながらも気持ちを通じ合わせるテンプレ作品。


だが、他のそれとは明確に違う点は、主人公である男の子が触れた相手の心を読むことができる超能力者だということ。


ヒロインのトラウマをその能力で読んで理解し、癒していく。泣ける名作として有名な作品だ。


この映画はその作品の実写版である。


『知ってる、漫画を読んだことがあるよ』


と返信を打ち込む。するとすぐに、


『そうなのですか!実は、明日この映画が公開されるのです』


とメッセージが返ってきた。早っ。


『映画には興味ありませんか』


矢継ぎ早にもう一つメッセージがくる。夕食の時の流れとこの文面からして、俺を誘いたかったのか。


『漫画面白かったから、興味はあるよ。観に行きたいの?』


『行きたあ』


返信が秒で返ってくるな。……てか誤字ってる。


『行きたいです』


打ち直してきた。


『わかった行こう』


『ありがとうございます!時間ですが午前中がいいですか?お昼?』


時間帯か……俺はとくに希望はない。けど、いつでも良いはおそらく困らせることになる。


『赤月さんがどっちでも良いなら、午前中がいいかな』


『わかりました。では、午前にある11時26分からのを観にいきましょう。予約しておきます』


『おっけー。ありがとう』


ロイン後に俺はスマホで漫画を開いた。明日見る映画の予習である。勉強はまったく予習なんてしないのに、こういう時は念入りにしてしまう。


……しかし、赤月さんてこういうの読むんだな。これライトノベルなんだけど。


イメージ的には文豪が執筆した文庫本とか読んでそうな感じなんだが。や、勝手な想像なんですが。


――約一時間後。


「……う、ぐ……うぅ」


ボロ泣きしてしまった。緻密なストーリー構成により、泣きポイントの火力が強力な重火器レベル。ティッシュが何枚あってもたりないんだが……。


前も読んだことあるんだけど、その時は目頭が熱くなる程度で泣きはしなかった。なのに、あたしなんで号泣してるん……?


なんか前より没入感と感情の入り方が違う気がする。主人公の気持ちがわかりみ過ぎるっていうか。


涙と鼻水をふき、ゴミ箱に捨てる。こんもり山盛りになっている。これは明日にでもまとめておかないと、もうゴミが入らんな。


いやあ、マジでないたわ。これは映画も楽しみ。


(まてよ……?)


俺、大丈夫か?映画の出来はしらないけど、たぶん泣けるんだろ?それが売りみたいなところあるし。


泣きすぎてキモがれないか?


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