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完成した素揚げ野菜カレー。揚げ物は俺で、カレーは赤月さんの合作である。なんか、共同作業っていいよね。夫婦みたいで幸せ。
「さくさくで美味しいです。よい揚げ具合……素晴らしいですね、佐藤くん」
「ありがとうございます、赤月先生。先生のカレーもとても美味しいです」
「えへへ」
えへへ、て!可愛すぎかよ……赤月さんと一緒の時間が増えてから、どんどん好きになっていく。最近ではこうして人懐っこく砕けた部分もみせてくれるようになって、その気持ちはより増していってる。
「そういえば、お部屋のカーテンかえたんですね。前は無地の白いのでしたけど……紺色になってる」
「ああ、うん。前のやつ洗おうかと思ったんだけど、すげえ汚れてるしボロボロだったから。いっそ新しいのにしちゃえと思って買ってきた」
「ソファーの色合いともあっていて綺麗ですね。統一感があるといいますか」
「そう?ありがとう」
ちなみに赤月さんは気がついているかわからないが、他にも色々変えたり増やしたりしている。部屋の掃除を頑張ろうと色々やっていたら、なんかハマって色々やってしまった。家の中が綺麗になったのはいいが、出費がやばい。
けど、我ながら結構成長したと思う。
自室も綺麗にしたし、料理もゆっくりだが作れるようになってきた。赤月さんと出会えたおかげで、少しずつ前よりもマシな人間になれてる気がする。
(……が、しかし)
この間戻ってきた小テストの点数が頭を過る。頑張ってはみたものの、僅か三割の点数しかとれなかった数学と英語。……勉強だけはちょっと難しそうだなというのが今のところの正直な感想。
掃除とか料理はやれば目に見える形で成功がわかる。だからモチベーションにもなって続いたが、勉強はなにがなんだか。努力したとしてもそれが役に立つ保証もないのが、モチベの低下にもなっている。
「そういえば、佐藤くん。明日はなにか予定ありますか」
「明日……?」
明日は土曜日で学校が休み。こないだの土曜日は赤月さんは用事があるといい、朝、昼、晩と食事を作り置きしていってたが……。
「いや、なにもないけど」
「そうですか」
「ああ」
「……」
……そうですか、の後が何もない。赤月さんは麦茶を二口ほど飲んだあと視線を彷徨わせた。
「……なにかあった?明日」
「いえ……まあ、特に」
「赤月さんがそういう言い方する時って、絶対なにかある時だろ。あ……もしかして、舐めたいの?」
「……や、違います」
「違うの?ほんとに?」
「それではないです……」
赤くなる赤月さん。なんだ違うのか。ちなみに血を舐めたい時は赤月さんから言う事になっていたが、三日前くらいに我慢していた事があったので、やっぱり確認するようにした。それで他の男の血を舐められたらたまらんからな。
「それでは無い?ってことは何かあるんじゃん。なに?」
「それは、その……えと」
「言いにくい事なのか?」
「……まあ、少しだけ」
「そっか。まあ、言う気になったら教えてよ。あれならロインでもいいし」
言いにくいのにここでしつこく追求しても余計に言いにくくなるだけだ。気にはなるけど、これ以上はもう聞かないどこう。
「……わかりました。後で、ロインに送ります……気を遣わせてすみません」
「全然大丈夫だよ。さて食器洗っちゃおうか」
「はいっ」
赤月さんはにこりと微笑んだ。




