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「……あれ、佐藤なんか赤月さんの匂いしね?」


朝、席に座ると怪訝な表情で匂いを嗅いできた田中が小声で聞いてきた。


「え、そう……?」


「ああ、俺は嗅覚には自信あんだよ。おまえの体からは赤月さんの匂いがする」


「あ、もしかしたらボディーソープ変えたからかな……」


「ああ、なるほどーそゆことね?」


……やべー。昨日ずっと赤月さんの家にいたから匂い移ったのか。びっくりしたぁ。


後で赤月さんに使ってるシャンプーとかボディーソープとか、あと香水とかあるなら聞いておこう。危ない危ない。


「……ん?なんか赤月さんの香りした」


今度は隣を通った女子がそういって歩いていった。なんで皆そんなに赤月さんの匂いに敏感なの?


それから、あっという間に時は流れ全ての授業が終わり帰宅。赤月さんはどうやら委員会の仕事があるらしく、帰りが遅いようだ。


(さて、掃除でもするか)


休み時間中にお掃除テクニックを扱うYouTubeのチャンネルをみて謎にあがったテンション。今の俺はやる気が満ち溢れている。


この勢いをつかって赤月さんが帰ってくるまえにある程度まで綺麗にしてやる。


そうして十分後、みごとにやる気燃料が底をつけ始めだるくなる。というか、あのチャンネルほど上手くいかない。簡単そうにみえたのに。


(だが、ここで諦める俺ではない……!)


生まれ変わるんだ。赤月さんに相応しい人間に近づくために。


一生懸命にクイックルダイバーでフローリングを綺麗にする。やれることからやる策戦。なんか時間のかかる細かいところは目につかないし、赤月さん気づかないからいいかなって。


嘘だ。冗談。明日は土曜日なので、そういうのは明日に集中してやろうと思ってる。逃げてないよ。


ちなみに明日は余裕があればここだけじゃなくて、自室も綺麗にしときたいと思っている。漫画やらゲームやらプラモやらでごちゃごちゃになってるし。赤月さんの綺麗な部屋と比べたら王宮とゴミ溜めくらい差のある感じだったからな。あんな部屋赤月さんには見せられない。


や、まあ今ん所みせる予定も無いんですけどね。ほら、もしもの事があるかもしれないじゃないですか。


テーブルの上のスマホが震えた。


ロインが着ていて、差出人は赤月さん。……まあ他に連絡してくる人はいないんだけど。


なになに、今委員会終わったよ……なんの報告だ。けど嬉しい。なんかよくわからんロインだけど無駄に嬉しい。いや、無駄じゃない。嬉しいんだから無駄じゃないなこれは。


ふと気がつくとスタンプがきていた。


『帰ります』と白兎のキャラクターが手を振っている可愛らしいスタンプ。


俺もスタンプを送る。黒猫の『お待ちしております』とバンザイしているスタンプ。


(……この、ロインをやりとりしてるだけで幸せな気持ちになるのはなんなんだろうか)



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